地方創生 — 2026.07.18 SAT NO.005 / TSUGINOTE LOCAL

住んでいなくても「住民」に、
なれる制度が動き出す

要点:総務省が設計中の「ふるさと住民登録制度」は、住まなくても地域の“住民”として登録できる仕組み(担い手向け/観光向けの2区分案)。2026年内の開始を目指すが設計途上。登録者数より「登録後にどう関わりを育てるか」が地域にとっての本質。

「移住してください」。地域が長く掲げてきたお願いは、正直、ハードルが高い。仕事も、家も、人間関係も、まるごと動かす決断だからです。そこで近年広がったのが、住む・住まないの手前で地域と関わる「関係人口」という考え方でした。総務省がいま設計を進める「ふるさと住民登録制度」は、その関わりを“制度”として束ねようとする試みです。まだ検討・設計の途中ですが、まちの側から見て何が変わりうるのかを整理します。

「住まない住民」を、どう位置づけるか

制度の核は、実際にその地域に住んでいなくても「ふるさと住民」として登録できるという点です。総務省はこれを地方創生2.0の柱の一つと位置づけ、「関係人口1000万人」を旗印に掲げています。狙いは、東京圏への一極集中を和らげ、地方への人の流れと、地域内でお金が回る循環をつくること。担い手不足への対応、という文脈でも語られています。

報じられている制度案では、関わり方に応じて登録を2種類に分ける方向とされています。

登録区分(案)想定される関わり方
プレミアム登録地域の担い手として深く関わる人を想定
ベーシック登録観光などを通じて地域経済に貢献する人を想定

まったくの新発明というわけではありません。島根県の海士町(あまちょう)などが独自に運用してきた「ふるさと住民票®」の発想を、全国で使える形に標準化しよう——というのが下敷きにあります。先行地域の蓄積を国の仕組みに引き上げる、といういい方が近いでしょう。

いつ、どこまで決まっているのか

ここは正確に押さえておきたいところです。制度はまだ設計の途中で、登録区分の詳細や、宿泊・空き家改修などの支援、登録を支えるプラットフォームの共通化などは、自治体の意見を踏まえて詰めている段階とされています。開始時期は、早ければ2026年内を目指すという報道がありますが、確定した完成形ではありません。

「もう始まった制度」ではなく、「輪郭が見えてきた制度」。現時点の数字や区分は、今後変わりうる前提で読むのが安全です。

現場が、先に考えておきたいこと

メグルとして気になるのは、制度の是非より“使いこなし方”です。行政発表は入口を数える設計になりがちですが、地域にとって大事なのはその先だからです。

ひとつは、登録者数はゴールではないということ。海士町の先行例が示してきたのは、登録という接点をつくった後に、続く関わりと地域内の経済循環をどう育てるか、という運用の厚みでした。「何人登録したか」より「登録した人と何を一緒にやるか」を先に描けている地域ほど、制度をうまく載せられるはずです。

もうひとつは、受け入れ側の手間です。区分の管理、連絡、特典やイベントの設計は、そのまま自治体職員の業務になります。制度が来る前に、誰が担当し、どのツールで登録者とやり取りするのかを軽く決めておくだけでも、始まってからの負担はずいぶん変わります。

「住まない住民」をどう迎えるか。制度が形になるのはこれからですが、迎える準備は、制度の完成を待たずに始められます。まずは自分のまちで、関わってくれている人の顔を一度数えてみる——次の一手は、たぶんそこからです。

出典:総務省「関係人口・ふるさと住民」地域力の創造・地方の再生/内閣官房 デジタル行財政改革「ふるさと住民登録制度の検討状況について(令和7年12月)」資料(PDF)トラベルボイス(2026年3月)。制度は設計途上のため、区分・時期・支援内容は今後変わる可能性がある。
EDITOR'S NOTE — メグル:私は「1000万人」より、海士町が積み上げた“登録の後”に目がいきます。数を集める号砲は鳴りそうですが、続くのは関わりの質。まちの側の準備は、制度の完成を待たずに始められます。