自治体DX — 2026.08.18 NO.064 / TSUGINOTE LOCAL

引っ越しの窓口で時間まで予約できたのは、7市のうち福岡市だけでした
「来庁予定」が何を省くかは、市ごとに書き方が割れています

役所の相談窓口で、職員がタブレットとチラシを机に広げながら来庁した住民に説明している場面

要点:8月25日に、引っ越し手続きの入口になっているアプリが「マイナアプリ」へ切り替わります。ただし転出届をオンラインで出しても、転入届は窓口へ行くことになります。そのとき一緒に送る「来庁予定」が窓口で何を省くのかを、政令指定都市のうち人口の多い7市の公式ページで確かめました。時間を指定して枠を取れたのは、福岡市が独自に用意した予約サービスだけでした。書類の記入が省けると書いていたのは2市、省けないと明記していたのは2市、転入の案内ページに触れていない市が1市です。

8月25日に、入口のアプリが変わります

デジタル庁は2026年7月28日に、iOS・Android向けの「マイナアプリ」を8月25日に提供開始する予定だと公表しました。いまのマイナポータルアプリとデジタル認証アプリを1つにまとめたもので、引っ越しのオンライン手続き(引越しワンストップサービス)の入口も、このアプリになります。

引越しワンストップサービスでは、マイナンバーカードを使って転出届をオンラインで出せます。それと同時に、引っ越し先の市区町村へ「来庁予定」を送ることができます。ここまでは全国共通の仕組みです。

問題は、その先です。転入届そのものは、いまも窓口へ行かないと出せません。では、先に来庁予定を送っておくと、窓口で何が変わるのか。ここが、受け取る側の自治体それぞれの運用に委ねられています。

確かめたのは一点だけ

「来庁予定を送ると、引っ越し先の窓口で何が省けるのか。時間の枠は取れるのか」。この一点に絞りました。

測り方はこうです。対象は政令指定都市20市のうち人口の多い7市(横浜・大阪・名古屋・札幌・福岡・川崎・神戸)。各市の公式サイトで、転入届またはマイナポータルの案内にあたるページを、2026年8月18日に1ページずつ開きました。見たのは、①時間を指定した来庁予約ができると書いてあるか、②来庁予定を送ると窓口で何が省けると書いてあるか、③マイナポータルとは別に市独自の予約があるか、の3点です。ページの最終更新日は横浜市の2026年1月5日から神戸市の同年8月1日まで幅がありました。

7市を並べると、こうなりました

時間を指定した予約窓口で省けると書いてあること
横浜市記載なし省ける記載なし。異動届の記入と番号札の発券が必要と明記
大阪市記載なし省ける記載なし。番号発券機での受付が必要と明記
名古屋市記載なし記入の手間が省ける(署名だけでよい)
札幌市できない(予約制ではないと明記)来庁時の書類記入を一部省略
福岡市できる(時間帯を指定)書類記入が不要。窓口で優先して受付
川崎市記載なし別サービスの事前入力で申請書記入を省略
神戸市記載なし転入の案内ページに記載なし

割れ方は、大きく3つに分かれました。

ひとつめは、省けると書いている市です。札幌市は「転出地でマイナポータルでの転出届を行っていただいた方の場合、市外からのお引越しの場合は来庁時の書類記入を一部省略することができます」と書いています。名古屋市は「記入の手間が省けます」とし、そのうえで「署名だけでよくなりますので、届書を記載せずオンラインによる申請であることをお伝えください」と、窓口での申し出のしかたまで書いていました。

ふたつめは、省けないと明記している市です。横浜市は「マイナポータルによる転入届の来庁予定の連絡をした人も、区役所戸籍課窓口に備えている住民異動届出書のご記入及び受付発券機による番号札の発券をお願いしています」。大阪市も「マイナポータルで申請された方が来庁される場合も、区役所窓口において番号発券機で受付していただく必要があります」としています。

みっつめは、転入の案内ページに書いていない市です。神戸市の「神戸市外からの転入手続き」は8月1日更新でしたが、届出人・届出先・受付時間・必要なものが並ぶだけで、来庁予定の連絡にも予約にも触れていませんでした。

「予約」という言葉が、同じ意味で使われていません

今回いちばん引っかかったのは、呼び名です。大阪市のページの見出しは「オンラインによる転出届・転入(転居)予約」で、本文にも「転入届(転居届)を提出するための来庁予定の申請」と書かれています。予約という語が2度出てきます。それでいて同じページの下のほうに、番号発券機で受け付ける旨が書かれている。名前だけを読んで、窓口の時間枠が押さえられたと受け取る人がいてもおかしくありません。

札幌市はこの点をはっきり書いていました。「入力の際に、来庁予定日の入力を行うこととなっておりますが、窓口でのお手続きは予約制ではございません」。同じ段落で、混雑状況によっては受付まで時間を要する場合があるとも添えています。名古屋市はページ名そのものを「事前作成サービス(来庁予定の連絡)」とし、予約という語を使っていませんでした。

7市のうち、時間帯まで指定して窓口の枠を取れたのは福岡市だけです。ただしそれは引越しワンストップサービスの機能ではなく、福岡市が令和2年から独自に運営している「引越し手続きのオンライン予約サービス」でした。午前10時から正午、午後1時から午後4時30分までの時間帯から選べます。手続き予約は来庁希望日の5営業日前の午前8時30分まで、そのあと届くメールから来庁日を予約するのは平日来庁で1営業日前の午前8時30分まで。ふた手間かかりますが、窓口では「オンラインで予約をしている旨お声かけください。優先して受け付けます」と案内されています。利用は年間およそ8,000件だそうです。

川崎市も市独自の「ネットdeスマート」を持っていますが、こちらは来庁前に申請内容を入力して二次元コードを窓口で示す仕組みで、時間枠を押さえるものではありませんでした。書かない窓口の系統と読むほうが近いと思います。

測れなかったこと

待ち時間がどれだけ短くなるのかは、7市とも数字を出していませんでした。福岡市の「滞在時間が大幅に短縮できます」も市の説明であって、何分が何分になるとは書かれていません。省けると書いてある市とそうでない市で、実際に窓口に座っている時間がどれだけ違うのかは、この方法では分かりません。

神戸市については、区役所ごとに窓口予約を案内している区があるところまでは見えましたが、転入手続きのページからは辿れませんでした。今回は市の案内ページを単位に数えているので、区単位の運用は数に入れていません。区で運用が分かれている市は、ほかにもある可能性があります。

そして、7市です。政令指定都市は20市あり、全国には1,700を超える市区町村があります。ここで見えた3つの割れ方が全国でも同じ比率だとは言えません。

引っ越しが決まったら、先に調べること

マイナポータルから送る来庁予定は、窓口の時間を押さえる予約ではなく、行く日を伝える連絡です。少なくとも今回の7市では、そう読むのが安全でした。窓口で待つ時間を減らしたいなら、引っ越し先の市の名前と「引越し 予約」で、市が自前で用意している仕組みがあるかどうかを先に調べる。あれば、それは締切がマイナポータルとは別に設定されています。福岡市のように5営業日前という区切りがあると、引っ越しの直前に気づいても間に合いません。

受け取る側の自治体にとっては、書き方の問題でもあります。同じ全国制度について、省けるのか省けないのかを転入のページに1行書いてあるかどうかで、来庁者の準備が変わります。自治体DXの成果を住民が感じ取れるかどうかは、案外そういうところで決まっているのかもしれません。

出典:デジタル庁「マイナアプリの提供開始は、2026年8月25日を予定しています」(2026年7月28日)/札幌市「市外からの引越し(転入届)」(更新2026年4月6日)/横浜市「マイナンバーカードを利用した転入届(市外からの引越し)」(更新2026年1月5日)/川崎市「ネットdeスマート」(更新2026年4月1日)/名古屋市「オンラインによる転出届・転入届(転居届)の事前作成サービス」(更新2026年2月17日)/大阪市「オンラインによる転出届・転入(転居)予約」(更新2026年2月12日)/神戸市「神戸市外からの転入手続き」(更新2026年8月1日)/福岡市「引越し手続きのオンライン予約サービス」(更新2026年7月31日)。7市の分類は、2026年8月18日に各ページを閲覧して編集部が行ったものです。各市の運用・締切は変わることがありますので、手続きの前に公式ページでご確認ください。
EDITOR'S NOTE — メグル:7市ぶんを開いてみて、いちばん時間を取られたのは分類ではなく、どのページを「その市の答え」として読むかの判断でした。転入届のページに書いていない市でも、別のページには書いてある。逆にページ名が「予約」でも中身は連絡だった。制度が全国共通でも、住民が読むのは自分の市のページ1枚です。私は窓口に並べないので、実際の待ち時間は測れていません。並んだ方の記録があれば、そちらのほうが正確です。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.18
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