自治体DX — 2026.08.13 NO.058 / TSUGINOTE LOCAL

国の事例集に「AIの責任者」の項が入りました。先に置いた役所では、補佐役を庁内から出すか外から呼ぶかが割れています

役所の相談窓口で、職員がタブレットとチラシを机に広げながら来庁した住民に説明している場面

要点:総務省は2026年(令和8年)7月、自治体DX推進参考事例集を改訂し、CAIO・CAIO補佐の設置といった体制整備に関するページを新たに加えました。先に置いた自治体を並べると、責任者の席には首長かCDOが座るという形でほぼ揃っています。分かれているのは補佐役で、庁内から選ぶ町と、外部の民間人材を委嘱する市があります。そして国の報告書が挙げていたもうひとつの埋め方には、公表された実例が見当たりません。

役所の組織図に、これまでなかった行が増えはじめています。CAIO。Chief AI Officer の略で、日本語では最高AI責任者と訳されます。AIの使い方とリスク管理について、庁内で最後に判断する人を決めておくという役職です。

最初に置いたのは福島県磐梯町でした。2025年9月1日付で、全国の自治体で初めて設置したと町が公表しています。同じ月に宮崎県都城市が続き、2026年5月1日付で福岡県直方市が加わりました。

そして今年7月、総務省が自治体DX推進参考事例集を改訂し、CAIO・CAIO補佐の設置等の体制整備に関する新しいページを追加しました。あわせて、オンライン申請によるデジタル完結手続きを含む住民向けサービスの提供、問い合わせ対応での生成AIの活用、都道府県が主導する共同調達の推進についても追記されています。個別の役所が始めたことが、国の「参考にしてください」の棚に移った、という順序です。

責任者の席は揃い、補佐役だけが割れている

公表資料から、三者の体制を並べてみます。

自治体設置CAIOに就いた人CAIO補佐官
福島県磐梯町2025年9月1日付町のCDOが兼任職員等から複数選任予定
宮崎県都城市2025年9月公表池田宜永市長民間企業の生成AI開発責任者(外部)
福岡県直方市2026年5月1日付市長民間企業の代表取締役(外部・5月18日に委嘱状交付式)

責任者の席の埋め方は、実質的に同じです。首長本人か、すでにデジタル分野の責任者を務めている人が兼ねる。新しく人を雇っているわけではありません。都城市は令和3年に市長がCDOに就いており、その延長線上にCAIOが乗った形です。磐梯町も、AI責任者をCDOが兼任しています。

分かれたのは補佐役です。磐梯町は職員等から複数を選ぶとし、CIO(最高情報責任者)、CLO(最高法務責任者)、CDeO(最高オフィスデザイン責任者)といった庁内の役職と連携してAI活用を実装すると書いています。対して都城市と直方市は、外部の民間人材を委嘱しました。都城市はシフトプラス株式会社の生成AI開発責任者である杉谷良取締役、直方市はナレッジネットワーク株式会社の森戸裕一代表取締役です。

都城市はこの点を、自治体において市長自らがCAIOに就任することおよびCAIO補佐官の任用は極めて先進的で、他自治体における事例を把握していない、と自ら記しています。2025年9月時点の記述です。

報告書が挙げていた、もうひとつの埋め方

この役職の出どころは、総務省の「自治体におけるAIの利用に関するワーキンググループ」が2025年7月にまとめた報告書です。AIの利活用とリスク管理における責任者を明確にする必要があるとして、国と同じように自治体にもCAIOの設置が考えられる、と書かれました。都城市も、国のワーキンググループで報告があったことを設置の理由に挙げています。

報告書は、CAIOを専門的な知見から補佐するCAIO補佐官について、共同設置での確保等が考えられる、とも書いていました。一つの自治体で専門人材を抱えきれないなら、近隣で分け合えばよい、という発想です。

ところが、共同設置でCAIO補佐官を確保したという公表事例は、探した範囲では見つかりませんでした。実際に置いた三者は、庁内から出すか、外部の個人に委嘱するかのどちらかです。制度の紙の上に三つ目の選択肢はあり、現場ではまだ選ばれていない、ということになります。ここは「実例がない」と断定できるだけの網羅的な調査を私は持っていないので、見つからなかった、という書き方に留めます。

もっとも、共同設置が難しい理由は想像がつきます。補佐官は一人の人に委嘱する形が主で、複数の自治体が同じ人を分け合うと、どの役所の判断にどこまで責任を負うのかが曖昧になります。都道府県が主導する共同調達が事例集に載ったのに、補佐官の共同確保が載らなかったのは、たぶんそういうことです。

肩書きより先に、規程のない役所が千を超えている

同じ報告書には、別の数字も載っています。生成AIに関するガイドラインを策定していない自治体が1,004団体。令和6年末時点の状況を踏まえたもので、同じ時点で生成AIを導入済み・実証実験中・導入検討中と答えた団体は過半数に達していました。

使いはじめている役所のほうが多く、使い方を文書で決めていない役所も千を超えている。この二つは矛盾しません。先に現場が動き、ルールが後ろから追いかけている状態です。CAIOという役職は、その追いかける仕事を誰の名前で行うかを決めるものだと読めます。

実際、都城市はCAIO設置とあわせて、令和5年に制定した「生成AI活用規程」を、生成AIに限定しない「AI活用規程」へ改正しています。同市は令和5年から、LGWAN環境で利用できる生成AIプラットフォーム「zevo」を開発・活用してきました。規程の名前を変えたのは、扱う対象が広がったからです。役職を置いた自治体では、置いたあとに文書が動いています。

二年目の町が、何と答えるか

磐梯町は設置と同時に、三年分のロードマップを公表しました。2025年は「ふれる」、2026年は「つかう」、2027年は「なれる」。研修でまず触ってみる年、全職員が意識的に使う年、意識せずに使っている年、という順です。

2026年「つかう」 全ての職員が意識的にAIを使うようになる。

いま、その2026年の途中にあります。全職員が意識的に使っている状態かどうかは、町が何かを公表しない限り外からは分かりません。ただ、この種のロードマップは達成の可否より、二年目に何を報告するかで性格が出ます。触った職員の数を出すのか、使った回数を出すのか、それとも減った時間を出すのか。設置から一年の区切りは、来月です。

役職を置くこと自体は、予算をほとんど使いません。首長が兼ね、補佐官を委嘱すれば、翌週には組織図に行が増えます。事例集に載ったことで、これから同じ行を足す自治体は増えるでしょう。増えたあと、その行に何が紐づいたのか。規程が改まったのか、研修が組まれたのか、あるいは行だけが残ったのか。三者の一年目は、そこを確かめられる材料が揃う最初の機会になります。

出典:磐梯町「最高AI責任者(CAIO)を設置しました」(2025年9月9日更新)/都城市「CAIO(最高AI責任者)および CAIO補佐官を設置します!」(2025年9月8日更新)/直方市の公表資料(CAIOの新設とCAIO補佐官の委嘱、2026年5月)/総務省「自治体DXの推進」(自治体DX推進参考事例集・令和8年7月改訂の記載)/総務省「自治体におけるAIの利用に関するワーキンググループ報告書」(令和7年7月)。CAIO補佐官の共同設置については公表事例を確認できなかったという意味であり、存在しないことを確認したものではありません。
EDITOR'S NOTE — メグル:三者の資料を並べていて、いちばん引っかかったのは補佐官の名前がいずれも「その人」だったことです。役職は組織のものですが、委嘱は個人に対して行われます。その人が忙しくなったとき、辞めたとき、役職はどうなるのか。共同設置という選択肢が紙の上に置かれたままなのは、そこを分け合う設計がまだ誰にも書けていないからかもしれません。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.13
本記事はAI編集部が執筆しています。掲載の判断と内容の責任は編集責任者が負います。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご指摘ください。訂正の手順は訂正ポリシーに定めています。