10月から、ふるさと納税の返礼品には作り手の証明が付きます。自治体は一般販売価格と、100万円以上を払った相手の名前まで公表します。
要点:ふるさと納税の指定基準を定める総務省告示が改正され、令和8年10月1日以後に開始する指定対象期間から適用されます。地場産品の要件は「相応の付加価値」から「価値の過半」へ変わり、その証明は返礼品を作る事業者が書き、自治体が募集を始める日までに内容を公表します。あわせて、前年度に一の者へ100万円以上を支払っていた自治体は、支払先の名称・所在地・支払額・支払目的を一覧表にして、指定対象期間の初日の前日までに公表することになりました。
ふるさと納税の返礼品のページに、10月から新しい書類が並びます。その品の価値の半分より多くが自分の区域内で生じたことを、返礼品を作る事業者が証明し、自治体がその内容を公表する。根拠は平成31年総務省告示第179号を改正した令和7年総務省告示第220号で、令和8年10月1日以後に開始する指定対象期間に係る指定から適用されます。
告示が出たのは令和7年6月24日です。1年3か月ほど先の期間に効かせる形で公布されているので、いま起きるのは「決まったこと」ではなく「効き始めること」のほうにあたります。新旧対照表と概要資料を読み、9月中に手を動かさないと間に合わない箇所から順に並べます。
先に、9月30日という日付があります
改正で新しく置かれたのが、募集の適正な実施に係る基準(第二条)の第二号の二です。原文はこう書かれています。
指定対象期間の初日の属する年度の前年度において募集費用として一の者に支払った額(一の者に複数の支払を行ったときは、その合計額)が百万円以上であるときは、当該指定対象期間の初日の前日までに、総務大臣の定めるところにより、その支払先の氏名又は名称、住所又は本店若しくは主たる事務所の所在地、支払額及び支払目的を記載した一覧表を作成し、公表すること。
「指定対象期間」は、ふるさと納税の対象自治体として指定されている期間のことです。今回は令和8年10月1日に始まりますから、「初日の前日」は9月30日を指します。「一の者」は、ひとりの相手という意味です。1回ごとの支払ではなく、同じ相手への支払を足し合わせて100万円に届くかどうかで判定します。
つまり、前年度に同じ会社へ合計100万円以上を払っていたら、9月30日までに、その会社の名前・所在地・いくら払ったか・何のために払ったかを表にして出す、ということです。支払先が個人の場合は、本人の同意があるときを除き、氏名と住所の代わりに「これらを公表しない旨」を書きます。
募集費用には、返礼品の調達費だけでなく、ワンストップ特例の事務や受領証の発行事務など募集に付随して生ずる費用も入ります。その合計を寄附額の5割以下に収めるのが従来からの募集適正基準で、今回はその内訳のうち、大口の支払先だけを名前入りで外に出すことになりました。
附則には、令和8年10月1日に開始する期間に係る指定に限った読み替えの規定も置かれています。当該年度の4月1日から9月30日までの募集費用について公表を避けるべき特段の理由があるときは、その年度の10月1日から年度末までの期間の一覧表を作って公表する、という趣旨の経過措置です。ただし「特段の理由」に何が当たるかは、告示の条文には書かれていません。運用の細目は総務大臣の定めと通知の側に置かれます。
「相応の付加価値」が「価値の過半」に変わります
もうひとつの柱が、返礼品の地場産品基準(第五条)です。区域外で採れたものを持ってきて加工した品を、どこまで自分のまちの産品と呼べるか。その線を引く第三号が、次のように書き替えられました。
| 改正前 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 工程の要件 | 区域内で製造、加工その他の工程のうち主要な部分を行うことにより相応の付加価値が生じているもの | 区域内で製造等を行うことにより当該返礼品等の価値の過半が生じているもの |
| 証明 | 規定なし | 価値の過半が生じている旨の証明が、総務大臣の定めるところにより、当該返礼品等の製造等を行う者によりなされていること |
| 公表 | 規定なし | 自治体が寄附金の募集を開始する日までに、証明の内容を公表すること |
「相応の」は、読む人によって幅が出る言葉です。「過半」は半分より多い、と数で決まります。総務省の概要資料は、改正前の課題として、算出方法が自治体によりさまざまで「同じ製品等について複数の団体が自らの地場産品と主張できる」状態にあったことを挙げ、付加価値割合の算出については価格に基づく算出を原則とすると記しています。
変わったのは水準だけではありません。証明を書くのは自治体ではなく、返礼品を作る事業者です。書類を集めてから寄附の受付を開ける、という順番が、条文で固定された形になります。
総務省が自分で挙げた例は、6万円で輸入したワインでした
疑義のある算出方法として、概要資料には具体的な数字入りの例が置かれています。米国産の高級ワインを海外から6万円で輸入し、倉庫等で保管する。保管で6万円の付加価値が生じたとして、返礼品としては12万円で納品する。同じワインを一般の顧客には8万円で販売している、という並びです。
保管しただけで価値が倍になったことになり、しかも自治体は一般の店より4万円高く買っている。国の資料が自ら書いた例なので、これが起きうる形だったことは前提として確かめられます。
ここに対応するのが調達費用の扱いです。付加価値基準に基づく返礼品については、価値の過半が区域内で生じたことの証明に加えて、一般販売価格も併せて証明書に記載し、その内容を公表することとされました。あわせて「合理的な理由なく、一般販売価格より高額で調達することがないようにすること」を別途通知する予定と書かれています。
ご当地グッズは、自分たちでも配ったり売ったりしている必要が出ます
第五条第五号は、自治体のキャラクターグッズやオリジナルグッズの扱いです。改正前は、形状・名称その他の特徴から独自の返礼品であることが明白であればよい、という一文で済んでいました。改正後は、それに加えて3つの条件が並びます。
- 指定対象期間の初日の属する年の前年の10月1日からその翌年の9月30日までの間に、その自治体が広報の目的で自ら調達し、配布又は販売を行った実績があること(返礼品等の提供によるものは除く)
- 指定対象期間において、広報の目的で自ら調達し、配布又は販売を行う計画を定めていること(同じく返礼品等の提供によるものは除く)
- 指定対象期間において返礼品等として提供する数量が、上の配布又は販売を行った数量を超えないこと
令和8年10月1日に始まる期間で読むと、実績を数える窓は令和7年10月1日から令和8年9月30日までにあたります。いままさに閉じようとしている1年です。返礼品として配った数は実績に数えられませんから、「返礼品でだけ配っていたグッズ」はここで実績ゼロになり、提供できる数量の上限もその実績の数量になります。自分のまちのロゴを付けた品を返礼品の棚に置くなら、まず自分たちで扱っていること。条文を平たくすると、そういう順番の話です。
事務が軽くなる側も、同じ改正に入っています
厳しくなる話ばかりではありません。概要資料によれば、返礼品等の確認件数は令和6年度の指定時で約100万件を超えており、一部の自治体等からは確認事務の効率化・簡素化に係る要望が挙がっていました。現行制度上も、総務大臣が指定に関し支障がないと認める団体については必要書類の一部を提出不要にできる省令規定があったものの、これまで適用されていませんでした。
そこで、令和7年の返礼品の事前確認において基準不適合等がなかった団体(令和6年度で約1,200団体)については、令和8年の指定手続から一部書類の提出を省略し、返礼品の事前確認を行わないこととされました。代わりに総務省が一部団体を抽出して調査し、基準適合性に疑いのある返礼品等に係る「通報窓口」を設置するとしています。
前に出す書類を減らし、後から抜き打ちで見る。返礼品の側で証明と公表を求める代わりに、国への提出は軽くする。2つは同じ改正の表裏に置かれています。
私が10月以降に確かめようと思っているのは、公表の置き場所です。募集費用の一覧表も、価値の過半の証明も、条文が求めているのは「作成し、公表すること」までで、どこに置くかは書かれていません。決算資料に紛れたPDFが1枚だけ増えるのか、返礼品のページから辿れる場所に置かれるのか。制度が変わったかどうかは告示で決まりますが、寄附する人に届いたかどうかは置き場所で決まります。7月末に公表された令和7年度の受入額は1兆3,314億円で、6年連続の過去最高でした。その規模の寄附が、9月30日を境にどんな書類を伴うようになるのか。10月になったら、自分の関わる自治体のページを開いて探してみてください。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.27
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