住んでいない人まで「村の一員」と呼ぶ、小さな村があります。
要点:山梨県小菅村は、住民票を動かさない関係人口を「2分の1村民」と呼ぶ独自のポイントカード事業を運用しており、登録者は4,500人に達しています。うち年6回以上村を訪れて活動した人は473人、全体の1割です。総務省が2026年度中の運用開始を目指す「ふるさと住民登録制度」はまだ動いていませんが、その手前で楽天グループが2025年9月に「ふるさと住民応援コンソーシアム」を設立し、2026年8月4日には独自ポータル「楽天ふるさと住民」を2027年春に新設すると発表。8月24日の「首長サミット2026」には26自治体の首長が集まり、小菅村のほか北海道上士幌町・徳島県鳴門市が先行事例を共有しました。
「2分の1村民」と名乗る人たちがいます。住民票は別の場所にあるのに、です。名付け親は、人口620人、高齢化率40%を超える山梨県小菅村です。
この呼び方は、総務省が2026年度中の運用開始を目指す「ふるさと住民登録制度」を先取りする形で、小菅村が独自に運用してきた「こすげ村人ポイントカード」事業から生まれました。制度そのものの中身は8月31日の記事で確認した通り、住民票を動かさずに地域と関わり続ける仕組みで、登録そのものに返礼品は出ません。今回はその先、国の制度がまだ正式に動いていない段階で、自治体と企業がどこまで先回りしているかを確かめます。
民間の受け皿が、国より先に形になりました
2026年8月4日、楽天グループは制度の「受け皿」となる独自ポータルサイト「楽天ふるさと住民」を2027年春に新設すると発表しました。参画自治体の魅力や一次産業のスポットワークを紹介し、担い手活動を体験できる旅行券や「楽天トラベル」の宿泊費補助クーポンなどを取り扱う予定です。楽天は2025年9月に「ふるさと住民応援コンソーシアム」を設立してこの制度の社会実装を後押ししており、事務局も務めています。コンソーシアムには楽天のほか日本旅行・タイミー・おてつたび・LIFULLが参画し、自治体・企業・個人を合わせた会員数は735人(2026年8月24日時点)です(楽天グループ発表・2026年8月4日付、トラベルボイス2026年8月24日付、いずれも2026年9月8日確認)。
総務省の制度そのものは、2026年度中の運用開始という目標を掲げたまま、登録アプリの具体的なリリース時期を明言していません。その手前で、民間企業が窓口を先に用意している構図です。
8月24日、26自治体の首長が集まりました
そのコンソーシアムが8月24日に開いた「首長サミット2026」には、全国26自治体の首長が参加しました。先行するモデル事業として発表されたのが、北海道上士幌町・山梨県小菅村・徳島県鳴門市の3例です。並べてみると、進み方も抱える課題もまったく違います(トラベルボイス2026年8月24日付、2026年9月8日確認)。
上士幌町は、2030年までに人口が4,400人まで減ると推計されるなか、地域ポータルサイトと楽天の特設ページを通じて担い手活動を掲載しています。8月時点で担い手活動「ほろ活」は11件、参加のハードルを下げる「ほろ活サポート」は5件。専用インスタグラムの登録者はサミット開催時点で69人にとどまりますが、首都圏中心の広告配信では約10万5,000人にリーチしているといい、11月から始まる第2タームで内容を拡充する計画です。
小菅村の「2分の1村民」は、現在4,500人まで増えています。ただし村が注目しているのは登録者数そのものではなく、その先の数字です。企業の森の再整備や地元クラフトビール会社の新商品づくり、伝統芸能の継承といった実際の活動に、年6回以上参加した人は473人。2分の1村民全体の1割にあたります。実施主体を地域団体や事業者に置き、役場は運営のサポートに回る設計にしたことがこの数字につながったとみており、2027年度には担い手活動の認定・制度化を目指すとしています。
徳島県鳴門市は、人材マッチングサービス「おてつたび」との連携を2024年7月から続けています。3年間の参加者は延べ127人、応募数は募集数の5倍を超え、滞在日数は延べ1,933日にのぼります。人口は1995年のピーク比で22%減、生産年齢人口は33%減、0〜14歳人口は44%減という数字を背負う市です。参加者の宿舎手配や送迎、滞在中のフォローは市の職員が担っており、受け入れを増やすには民間との協力体制や新しい滞在拠点が要ると認めています。鳴門市はサミットの場で、制度の運用開始後に自治体間で過度のサポート施策競争になる可能性への懸念も示しました。
3つの町と村を並べて分かるのは、同じ制度を掲げていても、現場でやっていることはばらばらだという点です。上士幌町はSNSの届く範囲を広げる段階、小菅村は来た人の何割が続けて来ているかを測る段階、鳴門市は受け入れる側の体力の限界に直面する段階にいます。登録者数やフォロワー数はどれも景気のいい数字に見えますが、小菅村が示した1割という割合のような、実際に動いた人の比率こそが、この制度が続くかどうかを測る物差しになりそうです。鳴門市が投げかけた自治体間の競争という懸念も、国の制度が正式に走り出す前に、答えを出しておいた方がよさそうな論点です。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.09.08
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