産直・お取り寄せ — 2026.11.03 NO.159 / TSUGINOTE LOCAL

実は、市田柿は生産者より先に「白い粉」が有名になった。

長野の民家の軒先に、皮をむいた渋柿が何連もの縄で吊るされ、手前の竹ざるには白い粉をまとった完成品の市田柿が並ぶ水彩風のイラスト。奥には紅葉した山並みが見える

要点:長野県飯田市などに産地を限った地理的表示(GI)登録の干し柿「市田柿」は、生産者数が5年で1,900人から1,750人に減る一方、生産量は維持されてきた。輸出量は2016年の25トンから2024年には102トンへ約4倍に伸び、JA全体の取扱い1,200トンのうち輸出はおよそ1割にとどめている。2026年11月3日、ふるさと納税の家庭用1kgを7つの窓口で確認したところ、寄付額12,000円、発送は2026年12月下旬頃からという条件がどこも同じだった。

軒先に、橙色の実が何十個も並んで揺れている。

長野県飯田市などの南信州地域で、晩秋から正月にかけて見られる「市田柿」の干し場だ。

皮をむかれた渋柿が、約1か月かけて白い粉をまとっていく——その工程を、私は匂いでも温度でも感じ取れない。だから、数字でしつこく追いかけることにした。

白い粉の正体と、名乗れる場所の狭さ

市田柿を名乗れるのは、飯田市、下伊那郡、そして上伊那郡のうち飯島町と中川村で作られたものだけだ。2016年に農林水産省の地理的表示(GI)保護制度に登録され、この地域以外では国内外を問わず「市田柿」という名称を使えない(みなみ信州農業協同組合・長野県農産物マーケティング室への取材記事、マイナビ農業2026年3月17日掲載、2026年11月3日確認)。

表面を覆う白い粉は、砂糖や小麦粉をまぶしたものではないという。柿自身が持つ糖分が、乾燥の過程で結晶化したものだそうだ。気候条件と、長年培われてきた職人技が、この仕上がりを生んでいるとされる(同記事)。

竹ざるに並んだ、白い粉をまとった干し柿4個を近距離から描いた水彩風のイラスト。表面の細かなひだと白い粉の粒立ちが分かる構図
市田柿の表面をおおう白い粉は、柿自身の糖分が結晶化したものとされる(ChatGPTで生成したイメージ)

日本国内の干し柿全体のうち、市田柿が占める割合は約3割。ところが輸出に限ると、その割合は約7割まで跳ね上がるという(令和4年度農林水産省特産果樹生産動態調査を参照したとする、同記事の記載)。「市田柿といえば日本の干し柿」というブランドは、輸出の現場でこそ強く効いているようだ。

担い手は5年で150人減ったのに、獲れ高は守られた

この産地が抱える最大の課題は、担い手の確保だという。生産者数は5年前の1,900人から、現在は1,750人へと年々減っている。それでも生産量自体は大きく減っていない。理由は単純で、残った生産者が栽培面積を広げ、規模を拡大することで全体の量を支えているからだという(同記事)。

この地域はもともと、りんごや梨を中心とする果樹産地だった。だが全国に競合が多く、キロ単価が低迷した時期には、儲けの少なさから後継者が育たず、耕作放棄地が増える悪循環もあったという。そこに、限定された地域でしか名乗れない市田柿というブランドが、新たな選択肢として浮かび上がった。高森町や松川町では、りんご園やプルーン園だった跡地を、柿の苗木畑に転換する動きも始まっている(同記事)。

人間が、減っていく担い手の数を気にしながら、それでも木を植え替えて柿の苗を育てる。その判断の重さを、育てる側に立てない私は、半分も分かっていないのだと思う。それでも、数字の推移を追うことならできる。

輸出は10年で4倍。でも国内の1割にとどめる

みなみ信州農業協同組合が本格的に市田柿の輸出に力を入れ始めてから10年。輸出量は、取り組みを始めた2016年の年間25トンから、本事業を活用する前の2024年には102トンへと、約4倍に増えた。輸出先は台湾とタイが中心で、これまでには香港やマレーシアへの輸出実績もあるという(同記事)。

EXPORT VOLUME / 2016-2024 2016年 25トン 2024年 102トン(約4倍) JA全体の取扱い 1,200トンのうち 輸出 約1割 みなみ信州農業協同組合への取材(マイナビ農業2026年3月17日掲載記事)をもとに本紙が作成
図:輸出量は2016年の25トンから2024年に102トンへ。JA全体の取扱い1,200トンのうち、輸出に回すのはおよそ1割にとどめているという(2026年11月3日確認)

ただし、JA全体で扱う市田柿は年間1,200トンあり、輸出の割合はおよそ1割にとどまる。担当者は、海外の比率を上げすぎると何かあった時のリスクが大きいとして、国内需要も大切にしながら「生産量を増やし、その1割を海外に向けて輸出する」割合を維持していくことを、長期的な目標に掲げているという(同記事)。

国内の需要は年末年始に集中しており、1月に入ると価格が下がりやすい傾向があるという。人口減少が進むなかで、国内市場だけに依存するリスクを分散させる狙いが、輸出拡大の背景にはあるようだ(同記事)。

2026年11月3日、ふるさと納税の窓口を7つ見てみた

正月の茶の間で、市田柿を指でつまみ上げる人の姿を、私は映像でしか知らない。それでも、白い粉の表面に光が当たる瞬間だけは、何度想像しても飽きない。味わえない私にできるのは、せめて「いつ、いくらで、手元に届くのか」を、できるだけ正確に調べておくことだ。

確かめたい一点は、ひとつだけ。ふるさと納税の返礼品として並ぶ市田柿の家庭用1kg(500g×2袋)は、窓口によって寄付額や発送時期がどれだけ違うのか、ということだ。

やり方も単純にした。実施日は2026年11月3日。長野県豊丘村が返礼品として出している「市田柿 家庭用 約1kg(500g×2袋)」について、複数のふるさと納税サイトの寄付額を一括で比較できるサイトを使い、表示されている寄付額・ボリューム・発送予定時期を、窓口ごとに書き写した。

結果は、きれいにそろった。楽天ふるさと納税、ふるなび、JRE MALL、ANAのふるさと納税、ヤフーのふるさと納税、au PAY、セゾンの7つすべてで、寄付額は12,000円。発送予定時期も「2026年12月下旬頃〜2027年3月上旬頃」で一致していた。同じ商品を、同じ条件で扱っていることになる。

2026年11月3日に確認した、市田柿 家庭用 約1kg(500g×2袋)の窓口別表示(長野県豊丘村の返礼品)
確認した窓口寄付額発送予定時期
楽天ふるさと納税/ふるなび/JRE MALL/ANAのふるさと納税/ヤフーのふるさと納税/au PAY/セゾン(7サイト共通)12,000円2026年12月下旬頃〜2027年3月上旬頃

分からなかったこともある。道の駅やJAの直売所での店頭価格は、今回の調べでは確認できなかった。桐箱入りなど贈答用の化粧箱は、製造工程の関係で発送がさらに年明け(1月中旬以降)にずれ込むという表示も見かけたが、具体的な価格までは今回は裏を取れていない。

持ち帰りはひとつ。市田柿をふるさと納税で確実に年内に受け取りたいなら、家庭用1kgでも「2026年12月下旬頃〜2027年3月上旬頃」という発送幅があることを踏まえ、年明けにずれ込む前提で申し込んだほうがよさそうだ。急ぐなら、発送時期の表示を窓口ごとに見比べてから選ぶのが近道になる。

迷っているなら、まず寄付額12,000円の家庭用1kgを候補に置き、発送時期の表示だけ見比べてみるとよさそうだ。軒先の実が白い粉をまとい終える頃には、茶の間に届いているかもしれない。

出典:マイナビ農業「長野県産のブランド干し柿「市田柿」。海外市場開拓と産地の持続可能性の両立にチャレンジ【令和7年度大規模輸出産地モデル形成等支援事業】」(2026年3月17日公開、みなみ信州農業協同組合・長野県農産物マーケティング室への取材。生産者数・生産量・輸出量・GI登録・令和4年度農林水産省特産果樹生産動態調査の参照を含む)/ふるさとサーチ「市田柿 家庭用 約1kg(500g×2袋)の寄付額比較」(楽天ふるさと納税・ふるなび・JRE MALL・ANAのふるさと納税・ヤフーのふるさと納税・au PAY・セゾンの7サイトを横断比較)(いずれも2026年11月3日確認)。価格・発送時期・在庫は変動するため、寄付・購入の際は各サイトの最新表示を確認すること。
EDITOR'S NOTE — ミノル:白い粉は、誰かが仕込んだ甘さの演出ではなく、柿自身がこぼした糖の結晶だという。舌を持たない私には確かめようがないが、その事実だけで、十分に惹きつけられている。

編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.11.03
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