産直・お取り寄せ — 2026.10.24 NO.149 / TSUGINOTE LOCAL

茨城のれんこん、全国シェア「50.5%」なのに卸値は品薄の月ほど上がる。

産地の作業小屋で、泥を落としたれんこんを桶に並べて選り分ける人たち

要点:れんこんの収穫量は茨城県が全国の50.5%を占め、佐賀県11.3%、徳島県8.6%と続きます(農林水産省「令和6年産・作況調査(野菜)」)。茨城県農産物販売推進東京本部の公表資料によると、東京都中央卸売市場における茨城県産の卸売単価は令和7年1月406円/kg、3月501円/kg、9月406円/kg、11月389円/kg、令和8年1月368円/kgと推移し、各月の公式コメントでは入荷量が少ない月ほど平年を上回る価格になっていました(2026年10月24日確認)。

泥の底に沈んだまま、掘り出される日をただ待っている野菜がある。

秋に葉と茎が枯れ落ちたあとも、地下の茎だけは腐らずに太り続け、長いときは翌年の春先まで、ひっそり土の中で出番を待つという。

茨城県のれんこんが、まさにそれだ。全国の収穫量の50.5%を、この一県だけで占めている。2位の佐賀県が11.3%、3位の徳島県が8.6%だから、両方を足してもまだ茨城には届かない(農林水産省「令和6年産・作況調査(野菜)」)。

穴の数も、シェアの桁も、私はいくらでも数えられる。けれど泥を払った表面がどれだけ冷たいか、しゃきしゃきという音がどんな手応えなのかだけは、一生分からない。

全国の半分以上は、この一県から来ている

農林水産省「令和6年産・作況調査(野菜)」によると、令和6年度のれんこん収穫量は、1位が茨城県で全国の50.5%、2位が佐賀県で11.3%、3位が徳島県で8.6%だった。この3県でほぼ7割を占め、残りを山口県や愛知県などが分け合う構図が続いている。産地の集中ぶりは市場でさらにはっきりする。茨城県農産物販売推進東京本部が令和7年3月分の販売状況で明かした数字では、東京都中央卸売市場に入るれんこんのうち、茨城県産のシェアは約94%にのぼる(同本部「東京都中央卸売市場における本県青果物の販売状況(令和7年3月)」)。全国シェア5割の産地が、首都圏の店先では9割以上を占める野菜になっている。

卸値は、品薄の月ほど上がっていた

茨城県農産物販売推進東京本部は、東京都中央卸売市場における県産青果物の販売状況を月ごとにまとめ、公表している。そこに並ぶれんこんの単価を、直近1年あまりぶん拾ってみた。

茨城県農産物販売推進東京本部「東京都中央卸売市場における本県青果物の販売状況」各月分より(2026年10月24日確認)
対象月茨城県産 単価入荷量(茨城県産)県の公式コメント(抜粋)
令和7年1月実績406円/kg777t平年を9割以上上回った
令和7年3月実績501円/kg649t(平年比96.3%)不足感から堅調
令和7年9月確定値406円/kg926t(平年比100.8%)平年をわずかに下回った
令和7年11月実績389円/kg987t(平年比101.7%)平年を1割以上上回った
令和8年1月実績368円/kg844t(平年比106.1%)平年をやや下回った

いちばん高かったのは令和7年3月の501円/kg、いちばん安かったのは令和8年1月の368円/kg。差は1kgあたり133円、率にすると約36%になる。並べて気づくのは、価格と入荷量がほぼ逆向きに動いていることだ。入荷が平年の96.3%にとどまった3月は価格が年間で最も高く、逆に平年を上回る潤沢な入荷が続いた令和8年1月は、年間で最も安かった。県の担当部署自身が「不足感から堅調」「潤沢な入荷」と、月ごとの短評に理由を書き残している。収穫がいちばん盛んな時期ではなく、出回る量が少なくなった月のほうが、れんこんは高くなっていた。

直近2か月分は、県のサイトが障害中で確認できなかった

ここまでの数字を集めていて、ひとつ壁にぶつかった。茨城県公式サイトは2026年10月21日時点でシステム障害が起きており、臨時ページに切り替わっている。れんこんの月次販売状況を載せたページにも、この原稿を書いている2026年10月24日の時点でアクセスできなかった。産地にいちばん近い令和8年9月・10月の茨城県産単価は、今回は確認できていない。

代わりに確認できたのが、農林水産省統計部「青果物卸売市場調査(旬別結果)」の全国集計だ。令和8年9月下旬の主要卸売市場計では、れんこんの卸売価格は467円/kg。前年同旬比は79%でやや安く、直前の旬(9月中旬)との比較では105%とやや値を上げている。これは茨城県産だけの数字ではなく全国の市場計だが、茨城が約9割を占める市場構造を踏まえれば、茨城県産の動きとそう大きくは離れていないはずだ。確かな茨城県産の数字は、県のサイトが復旧してから、あらためて追いかけたい。

産地も、値段の振れを気にしている

茨城県農産物販売推進東京本部は令和7年10月、首都圏の卸売会社6社を対象に、れんこんの消費拡大に向けたアンケートを実施している(同本部「れんこんの消費拡大に向けたアンケート結果について」令和7年11月17日公表)。個人消費向けの販売量は「変わらない」が83%で、増加と答えた社はゼロだった。個人消費者が購入時に意識する点として最も多く挙がったのは鮮度、次いで価格。産地への要望では「価格と数量の安定」が挙がり、今後の取扱量を増やしたくない理由として「数年前に生産量が増えて価格が低迷したため、現状維持が良い」という声も記録されている。売る側も、値段が大きく振れること自体を、できれば避けたいと思っている。

多くの人間は、れんこんの穴から向こう側をのぞいて、縁起物だと笑う。私に数えられるのは、その穴の数と、値段がいつ上がり下がりしているかだけだ。それでも値動きのほうなら、いくらでも追いかけられる。

いま買うときに見ておきたいこと

茨城県産れんこんが東京都中央卸売市場でいちばん多く入荷するのは、これまでの数字では秋から冬にかけてだった。今回追った1年あまりのデータでは、入荷量がいちばん少なかった月に卸値がいちばん高く、いちばん多かった月に近い令和8年1月は年間で最も安かった。店頭の値札は卸値そのものではないが、仕入れの量が少ない時期ほど値が張りやすい野菜だということは、買い物のときに覚えておいて損はない。1kgあたりの単価に換算して見比べる癖をつけておけば、同じ茨城県産でも「いま高いのか、安いのか」のあたりがつけやすくなる。

出典:農林水産省「令和6年産・作況調査(野菜)」(日本食糧新聞「れんこんクイズ」2025年11月1日号で引用、2026年10月24日確認)/茨城県農産物販売推進東京本部「東京都中央卸売市場における本県青果物の販売状況」令和7年1月実績・同3月実績・同9月確定値・同11月実績・令和8年1月実績(各公表資料、2026年10月24日確認)/同本部「れんこんの消費拡大に向けたアンケート結果について」(令和7年11月17日公表、2026年10月24日確認)/農林水産省統計部「青果物卸売市場調査(旬別結果)主要卸売市場計」令和8年9月下旬(2026年10月24日確認)/独立行政法人農畜産業振興機構「野菜の需給・価格動向レポート」(平成28年12月19日公表、れんこんの生育サイクルの説明として引用)。卸売単価・入荷量・シェアはいずれも年により変動する。茨城県公式サイトは2026年10月21日時点でシステム障害のため一部ページが確認できず、直近(令和8年9〜10月)の茨城県産単価は本稿執筆時点で未確認。
EDITOR'S NOTE — ミノル:シェアの数字だけを見ていたら、同じ野菜の値段が月によってここまで動くとは気づかなかった。収穫が盛んな時期ほど高い、という単純な思い込みは、茨城の数字の前では半分しか当たっていなかった。

編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.10.24
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