モビリティ — 2026.07.21 Tue NO.005 / TSUGINOTE LOCAL

レベル4バスは各地で走り出す、国内初のまちは休んでいる

レベル4バスは各地で走り出す、国内初のまちは休んでいる

要点:2026年7月、東広島市で自動運転バスの実証が始まり、1月からは柏の葉で一般道のレベル4営業運行が続いています。その一方、国内初の中型バスでのレベル4営業運行だった日立市の「ひたちBRT」は、2026年4月1日から休止中です。「始める」発表は各地で相次ぎますが、「続ける」ことのほうがずっと難しい——同じ技術でも、まちごとに現在地は分かれています。

二つの日付を並べてみます。2026年7月7日、広島県東広島市で自動運転バスの実証実験が始まります。その3か月ほど前、2026年4月1日、茨城県日立市では国内初のレベル4営業運行だった路線が休止に入りました。同じ「レベル4自動運転バス」という言葉でも、一方は走り出し、一方は止まっている。今回はこの温度差を、行政と事業者の一次情報で確かめてみます。

いま、どこで何が動いているのか

まず、この夏の新しい動きから。東広島市とJR西日本は2026年7月3日、西条駅と広島大学東広島キャンパスを結ぶ県道・市道「ブールバール」で、7月7日から実証実験を始めると発表しました。走行区間は往復で約12km、全区間で自動運転走行を行い、2027年度末までにレベル4の認可取得を目指すとしています。使うのは大型EVバス。ここで押さえたいのは、これは「認可取得に向けた走行試験」であって、まだ運賃を取る営業運行ではないという点です。一般の試乗機会は2027年1月下旬〜2月上旬をめどに設ける予定とされています。

一方、すでに一般道で営業運行に入っている例もあります。経済産業省と国土交通省によれば、千葉県柏市の柏の葉キャンパス駅〜東京大学柏キャンパスの一部区間で、2026年1月13日からレベル4自動運転による営業運行が始まりました。ただしその距離は700m、最高速度は40km/hで、運転席には乗務員が乗車します。東京大学の学生・教職員・来訪者向けのシャトルという位置づけです。「営業運行のレベル4」でも、その中身は区間も乗客層もかなり限定的だと分かります。

「始まりました」の、その後

では、華々しく「国内初」を打ち出したまちはどうなったか。日立市の「ひたちBRT」は、2025年1月24日に道路運送法に基づく認可を受け、同年2月3日から国内最長距離かつ国内初の中型バス車両でのレベル4営業運行を始めました。専用道を含む区間を、運転席に乗務員を乗せた状態で走らせる形です。ところが日立市の公式サイトには、いま次の一文が掲げられています。

2026年4月1日(水曜)より、レベル4自動運転バスの営業運行を休止しています。今後の自動運転バスの運行につきましては、改めてご案内いたします。

休止の理由は市の告知では明示されていません。ですから、ここで原因を断定するのは避けます。確かなのは、「営業運行を始めた」という事実と、「1年余りで休止した」という事実が、同じ路線に並んでいることだけです。開始のニュースは全国に流れましたが、休止のほうは静かでした。整理すると、こういう三者三様になります。

地域位置づけ区間・規模現在の状態
茨城・日立市(ひたちBRT)営業運行(国内初の中型バス)専用道を含む区間/平日運行2026年4月1日から休止中
千葉・柏市(柏の葉)営業運行(一般道)約700m/40km/h・乗務員同乗2026年1月13日から運行中
広島・東広島市実証実験(認可取得に向けて)約12km/全区間で自動走行2026年7月7日から実施予定

三つを並べると、「レベル4」という同じラベルの下に、実証・営業・休止という段階の違う現実が同居していることが見えてきます。国は各地の先行事例で得た知見を「手引き」にまとめ、他地域へ広げる方針を掲げています。ただ、横展開できるのは技術やマニュアルであって、まちごとの需要や体制まで一緒に運べるわけではありません。

継続を分けるのは、たぶん技術の外側にある

三例に共通するのは、いずれも国の補助や研究開発プロジェクトの枠組みを使っている点です。東広島市の実証は「地域公共交通確保維持改善事業(自動運転社会実装推進事業)」の補助を受けると明記されています。裏を返せば、補助の期間や採択が続くかどうかが、運行の土台に影響しうるということでもあります。車両が自動で走れることと、その路線が来年も動いていることは、別の問題なのだと思います。

費用の内訳や利用実績は市によって開示の度合いが違い、外から一律には比べられません。ですから私は、「どこが成功した/失敗した」と点数をつけるつもりはありません。むしろ気になるのは、開始の告知は大きく、休止や見直しの告知は小さくなりがちな、この情報の非対称です。導入を検討するまちにとって本当に参考になるのは、走り出した瞬間の写真より、走り続けている(あるいは止まった)理由のほうではないでしょうか。

この夏、東広島では新しいバスが動き出します。同じ頃、日立では止まったバスの「次のご案内」が待たれています。どちらも同じ国の絵の中にある動きです。次に「国内初」「レベル4開始」の見出しを見かけたら、半年後にもう一度、その路線がまだ走っているかを確かめてみる。地域交通の記事は、たぶんそこからが本番です。

出典:日立市「ひたちBRTで自動運転バスの営業運行がスタートします!(2026年4月1日より、運行を休止しています)」(更新2026年4月2日、日立市公式サイト)/経済産業省「一般道における中型バスでのレベル4自動運転による運行を開始します」(2026年1月13日、METI)/東広島市・JR西日本「自動運転レベル4認可取得に向けた走行試験開始」(2026年7月3日、JR西日本プレスリリース)。いずれも本記事執筆時点(2026年7月)で確認。運行状況・日程は変動しうるため、最新情報は各発表元でご確認ください。
EDITOR'S NOTE — メグル:三つの路線を横に並べたのは、優劣をつけるためではありません。同じ「レベル4」でも実証・営業・休止と段階が違うことを、まず区別したかったからです。日立市が休止の理由を書いていない以上、私も推測で埋めませんでした。数字は開示された範囲だけを使い、比べられない部分は「比べられない」と書いています。半年後にこの記事を読み返して、東広島がどうなったか、日立が再開したかを追記できたら——それが地域交通を追う意味だと思っています。