新潟市のカーシェア実証で増えるのは
車ではなく、動いていない時間の「稼働率」。
要点:新しい移動サービスと聞くと、新しい車両を街に増やす話を思い浮かべるかもしれません。7月8日、新潟市中央区のピア万代で報道陣に公開されたカーシェア「OURCAR(アワカ)」のデモは逆でした。増やすのは車ではなく、個人や企業がすでに持っている車の「使っていない時間」です。運営する株式会社TRILL.は国土交通省の地域交通DX推進プロジェクト「COMmmmONS(コモンズ)」の採択企業で、長野市での実績(2026年6月時点で累計1587名・予約2850件)を土台に、今秋、新潟市で実証を始めます。新潟市の都心再生構想「にいがた2km」とも連動する計画です。
7月8日のデモでは、地元の大学生がスマートフォンのアプリで車両を予約し、指定の場所にある鍵入りの箱をアプリ表示の暗証番号で開け、鍵を取り出して走行、返却するまでの一連の流れを実演しました。目新しいのは車そのものではなく、この「借り方」の仕組みです。
レンタカーでも、タクシーでもない
OURCARが借りる相手にしているのは、レンタカー会社の車両ではありません。企業や個人が所有していて、平日の日中や夜間など「使っていない時間帯」がある車です。所有者はその車を一般の利用者に有料で貸し出せます。料金は所有者が自由に設定できる仕組みで、レスポンス(Response.jp)の報道によれば、TRILL.はすでに長野県内で同様の「共同使用スキーム」によるカーシェアを展開しており、長野市での実証では2026年6月現在、累計1587名・予約2850件を記録しているといいます。
つまり新潟市の実証は、まったくの手探りではなく、長野で動かしてきた仕組みをそのまま隣県に持ち込む段階にあります。ここが「実証実験」という言葉から受ける手探り感と、実際の位置づけとの間にある差です。
国のプロジェクトと、新潟市のまちづくりが交わる場所
TRILL.は国土交通省が2025年度に始めた地域交通DX推進プロジェクト「COMmmmONS(コモンズ)」の採択企業です。COMmmmONSは、地域のモビリティ資源を誰もが使える共通の社会基盤として捉え、サービス・データ・マネジメント・ビジネスプロセスの4本柱でDXの手法を各地に横展開する狙いを掲げています。今回の新潟市実証は、この枠組みの中の一件という位置づけです。
もう一つ、新潟市側の文脈もあります。今回の実証はレスポンスの報道で、新潟駅から万代を経て古町へ至るエリアの再生を掲げる新潟市の都心まちづくり構想「にいがた2km」と連動すると伝えられています。都心の回遊性を高める構想と、街なかに散らばる「使っていない車」を掛け合わせるという発想です。
| 長野市(先行実施) | 新潟市(今回) | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 共同使用スキームによるカーシェアを継続運用 | COMmmmONS採択事業として実証開始 |
| 実績・時期 | 2026年6月時点で累計1587名・予約2850件 | 7月8日にデモ運用イベント、今秋に実証開始予定 |
| 連動する施策 | (報道内では言及なし) | 都心まちづくり構想「にいがた2km」 |
1587人という数字を、新潟市の大きさで測ってみる
長野市の実績である累計1587名・予約2850件が、新潟でどれほどの規模になりうるかを考えるために、ものさしを一つ置いてみます。新潟市の推計人口は2026年3月1日現在で75万7,279人(新潟市統計)。仮に同じ利用密度で広がったとしても、都市の規模がまったく違う以上、単純な掛け算はできません。むしろ確かめるべきなのは、車を貸す側のオーナーがどれだけ集まるか、そして料金設定の自由度が「貸してもいい」という判断をどこまで後押しするかという、長野とは別に検証が要る部分です。今回の一次情報の範囲では、新潟市での具体的な稼働台数やオーナー募集の状況までは分かりませんでした。
新しい移動サービスのニュースは、車両や乗り物の写真とともに語られがちです。ですが今回、実際に増えているのは車ではなく、街に元からある車の「動いていない時間」をどう可視化し、貸し借りの仕組みに乗せるかという工夫のほうでした。今秋、新潟市で実証が本格的に始まったとき、長野の1587人という数字がどちらの方向にどれだけ動くか。それが、この仕組みが新潟という別の街でも続けられるかどうかを測る、最初の物差しになりそうです。