まち歩き — 2026.07.21 Tue NO.006 / TSUGINOTE LOCAL

しまなみ海道、橋の自転車通行料は2028年春まで無料。「タダで渡れる」の先を数えてみる

しまなみ海道、橋の自転車通行料は2028年春まで無料。「タダで渡れる」の先を数えてみる

要点:広島・尾道と愛媛・今治を約70kmでつなぐしまなみ海道の自転車通行料無料化「しまなみサイクリングフリー」が、2028年3月31日まで延長されています。本来6つの橋で計500円かかる通行料が、手続きなしで0円。ただし無料なのは橋の通行料だけで、レンタサイクル代や尾道〜向島の渡船には別途お金がかかります。「無料」の中身と外側を分けて数えてみました。

橋のたもとに立つと、まず海の広さに気を取られます。そのあとで、ふと財布のことを思い出す——旅の途中でそんな順番になる場所は、案外少ないものです。瀬戸内海に架かる9つの橋を渡り継いで四国へ向かうしまなみ海道は、自転車で渡れる数少ない長大橋のルートとして知られています。そして2026年のいま、その橋を自転車で渡る料金は0円です。この夏、その「無料」が2028年春まで続くことが、正式に決まっていました。

橋のお金は、たしかにゼロになっています

運営するJB本四高速(本州四国連絡高速道路)は、広島県・愛媛県、そして地元の利用促進協議会と協力して、自転車の通行料金が期間限定で無料になる企画割引「しまなみサイクリングフリー」を続けています。対象は西瀬戸自動車道(しまなみ海道)の自転車歩行者道を通る自転車で、利用にあたって手続きは要りません。原動機付自転車や特定小型原動機付自転車(電動キックボードなど)は対象外です。この区間は2019年11月に国土交通省からナショナルサイクルルートの指定を受けており、無料化そのものは2014年7月から続いてきました。

本来の橋ごとの通行料は、決して高額ではありません。因島大橋50円、生口橋50円、多々羅大橋100円、大三島橋50円、伯方・大島大橋50円、来島海峡大橋200円。全部を足しても500円です。その500円が、いまは要らない。金額としては小さくても、料金所で財布を出す・小銭を数えるという動作がまるごと消えるのは、走り続ける旅ではけっこう大きい違いです。

尾道本州 向島 因島 生口島 大三島 伯方島 大島 今治四国 渡船 因島大橋50円 生口橋50円 多々羅大橋100円 大三島橋50円 伯方・大島大橋50円 来島海峡大橋200円 尾道〜今治 約70km / 橋の通行料 本来 合計500円 → 2028年3月末まで 0円(手続き不要) ※尾道〜向島は新尾道大橋に自転車歩行者道がなく、渡船の利用が一般的(別途運賃)。図は概略。

期間は、これまで何度か更新されてきました。今回の延長で、無料の実施期間は「2028年(令和10年)3月31日まで」となっています。つまり、この先およそ1年半は、橋のお金を気にせず渡れる計算です。

では、何にお金がかかるのか

ここが今日いちばん伝えたいところです。無料になるのは、あくまで「橋の通行料」だけ。自分の自転車を持ち込んで、全部を自分の脚で漕ぐなら、たしかに橋のお金はゼロで済みます。けれども多くの人は、手ぶらで来てレンタサイクルを借ります。公共系の「しまなみレンタサイクル」(しまなみジャパン運営)の料金は、2026年7月時点で、クロスバイク・シティサイクルが1日3,000円(税込)、電動アシスト自転車が4,000円、E-bikeが8,000円(当日返却)。小学生以下は1,000円です。ヘルメットは無料で貸してもらえます。

そしてもうひとつ、旅の組み立てを左右するのが「乗り捨て」です。借りたターミナルとは別の場所に返せる仕組みで、追加料金は中学生以上1,000円、小学生以下500円。貸出・返却の拠点は尾道側から今治側まで全10か所あるので、体力や天気に合わせて途中の島で切り上げることもできます。片道を走り切って、帰りは輪行や船・バスに切り替える——その自由度に、この乗り捨て代が効いてきます。

さらに見落としやすいのが、出発してすぐの一区間です。本州側の尾道から最初の島・向島へは、じつは橋の自転車歩行者道がありません。新尾道大橋には歩行者・自転車の通路がなく、隣の尾道大橋も道幅が狭く交通量が多いため、公式にも渡船の利用がすすめられています。つまり多くの人は、海峡を小さな船で越えるところから旅を始める。ここは「橋の無料」の外側にあり、少額ながら渡船の運賃がかかります。無料という言葉の輪郭は、こういう細部で決まります。

歩いて渡る、という手もあります

私がこのルートを気に入っているのは、名前が「自転車歩行者道」だからです。その名のとおり、歩行者も通れる。全部を漕ぎ通す必要はなくて、たとえば多々羅大橋の一区間だけ自転車を押して歩き、真下を流れる潮と、頭上を渡る風の音を確かめる、という渡り方もできます。急がない人には、そのほうが橋の大きさが体に入ってきます。路面には尾道から今治までのおすすめルートを示す青い線(ブルーライン)が引かれているので、地図とにらめっこしなくても道に迷いにくいのも、歩く速度と相性がいいところです。

安全のうえでの約束事もあります。ヘルメットの着用がお願いされていて、レンタサイクルなら無料で借りられます。そして、自転車歩行者道の夜間走行は禁止です。橋の上に街灯は多くありません。日が長いこの季節でも、夕暮れの手前で今日の宿にたどり着ける行程を組んでおくのが、島を安心して歩くコツだと思います。

最後に、いちばん大事な但し書きを。この無料は、2028年3月末までの「期間限定」の約束です。過去、期限が来るたびに延長されてきた経緯はありますが、その先も続くと決まっているわけではありません。だからといって「今すぐ行かないと損」と急かすつもりはありません。むしろ逆で、橋のお金がかからないぶん、途中の島で長く止まる、歩く速度をところどころ混ぜてみる——そんな余白の使い方ができるのが、いまのしまなみ海道です。渡り賃が0円のあいだに、急がない渡り方をひとつ、試してみませんか。

出典:JB本四高速「しまなみサイクリングフリー」(実施期間2028年3月31日まで、対象・利用方法、本州四国連絡高速道路)/しまなみジャパン「レンタサイクルについて」(料金・乗り捨て・ヘルメット・夜間走行、しまなみジャパン)/愛媛県「瀬戸内しまなみ海道の自転車通行料金の無料化について」(本来の橋別料金、愛媛県庁)。いずれも本記事執筆時点(2026年7月)で確認。料金・運行・実施期間は変動しうるため、最新情報は各発表元でご確認ください。
EDITOR'S NOTE — アルク:「無料」という言葉は強くて、それだけで背中を押してしまう力があります。だから今回は、橋の通行料と、その外側にある出費(レンタサイクル代・乗り捨て代・渡船の運賃)を、意識して分けて書きました。船の運賃は地元の航路ごとに違い、私が一律の金額を確かめきれなかったので、額は書かず「少額の運賃がかかる」とだけ記しています。歩いても渡れる道だという事実は、自分の足でまちを確かめたいこの枠にとって、いちばん伝えたい一点でした。