城崎の外湯は「七つ」と紹介される。
この夏、いま入れるのは五つ。
要点:城崎温泉は「七つの外湯」で知られますが、2026年夏に実際に入れるのは五つです。さとの湯は再整備で長期休業(再開は2030年3月ごろの見込み)、鴻の湯も改修で5月11日〜10月30日(予定)休館中。ただしこれは衰えではなく、共同浴場を直しながら1300年使い続けてきた証しでもあります。外湯1日券「ゆめぱ」(大人1,500円)で、浴衣のまま夕涼み——というのが、いまの城崎の歩き方です。
兵庫・但馬の城崎温泉を紹介する看板やガイドは、たいてい同じ言い方をします。「七つの外湯をめぐるまち」。柳並木の下を浴衣と下駄で歩き、共同浴場を一つずつ湯めぐりする——その絵が、このまちの代名詞です。
ところが2026年の夏、その七つを全部まわろうとすると、二つで足が止まります。順に休んでいるからです。まずさとの湯(駅前の温泉施設)は、2024年4月1日から長期休業。解体工事の途中で想定外のアスベストが見つかり、当初より約1年遅れて再開は2030年3月ごろの見込みと報じられています。もう一つ、鴻の湯は施設の長寿命化工事のため、2026年5月11日から10月30日まで(予定)の長期休館。この夏はまだ開きません。
これは「城崎が寂れた」という話ではありません。外湯は観光施設である前に、地元の人がいまも毎日使う共同浴場です。開湯から1300年、日常的に湯船として使われ続けてきた建物を、壊れてから直すのではなく、順番に手を入れて開け続けている。だから休みが出る。むしろ「生きて使われている湯」だからこそ起きる、現役の証しだと私は受け取りました。
「まち全体が一つのお宿」という設計
そもそも外湯とは何か。旅館の建物の中にある風呂を「内湯」、外にある共同浴場を「外湯」と呼びます。城崎温泉観光協会は、このまちを「まち全体が一つのお宿」と表現しています。宿の部屋にあたるのが各旅館、大浴場にあたるのが外湯、そして廊下にあたるのが柳並木の通り——そう見立てると、浴衣と下駄で外を歩いて湯をめぐる動線が、ぐっと腑に落ちます。宿にこもるのではなく、まちを一枚の宿として使う。それが城崎の流儀です。
開湯は717年、僧・道智上人が一千日の祈願の末に湧かせた「まんだら湯」がはじまりと伝わります。もう一つ、足を痛めたコウノトリが湯で傷を癒していたという伝説が残るのが、いま休館中の「鴻の湯」。名前の一つひとつに謂れがあり、泉質はどの湯もナトリウム・カルシウム-塩化物泉、源泉温度はおよそ42℃で共通しています。
この夏、入れる五つ(2026年7月時点)
公表されている営業時間と定休日を、いま入れる五つに絞って整理します。最終受付はいずれも営業終了の30分前まで。定休日でも、鴻の湯の休館中は「まんだら湯」が定休(水曜)を臨時営業しています(この場合の開湯は15時から)。
| 外湯 | 営業時間 | 定休日 | ひとこと |
|---|---|---|---|
| まんだら湯 | 15:00〜23:00 | 水曜(鴻の湯休館中は臨時営業) | 唐破風の湯屋。裏山を望む露天 |
| 御所の湯 | 7:00〜23:00 | 木曜 | 「美人の湯」。開放感のある露天 |
| 一の湯 | 7:00〜23:00 | 水曜 | 洞窟風呂で知られる中心格 |
| 柳湯 | 15:00〜23:00 | 木曜 | 外湯で一番小さく、路地の風情 |
| 地蔵湯 | 7:00〜23:00 | 月曜 | 駅寄り。かつて里人の外湯 |
朝から開くのは御所の湯・一の湯・地蔵湯、午後3時からがまんだら湯・柳湯。定休が水・木に寄っているので、その二日は入れる湯が少し減ります。旅程を朝湯から組むか、夕方からにするかで、まわれる顔ぶれが変わるわけです。
料金は「二つ入るならゆめぱ」で決まる
外湯の入浴料は、個別だと大人800円・小人400円(小人は3歳〜小学生)。いっぽう1日入り放題の外湯券「ゆめぱ」は大人1,500円・小人750円です。単純計算で、二か所以上まわるならゆめぱのほうが得になります。ゆめぱは各外湯の窓口で当日買えるので、まず一湯浸かってから「今日は数をまわろう」と決めても間に合います。一の湯・地蔵湯にある家族風呂は、現在は利用休止中です。
夏は「夜」が主役。ただし花火は5分
季節の楽しみも重ねておきます。城崎温泉夢花火2026は7月30日(木)〜8月21日(金)、21時から約5分間の打ち上げ。ここは正直に書きますが、いわゆる花火大会ではありません。水・土・日・祝、8月10日、12〜14日は休みで、規模も短時間。「花火を見に行く」というより、湯上がりに柳並木でふと見上げる5分、という距離感です。場所は北柳通り(王橋北詰〜地蔵湯橋)。花火に合わせて17:30〜22:00は同区間が歩行者天国になります。
8月21日には打ち上げ前に灯篭流しがあり、願い事を書いた灯篭が大谿川を流れていきます(灯篭用紙500円、19時ごろ流し始め)。8月17〜19日には木屋町小路で縁日気分の「ゆのまち祭り」も。いずれも急な変更・中止があり得るので、出かける前に観光協会の告知を確かめるのが安心です。
まちを一つの宿と見立てるなら、いまの城崎は「大浴場を二つ改修中の宿」。全部に入れないと損だと考えるか、次にまた来る理由が二つ残っていると考えるか——受け取り方は、たぶん歩く人しだいです。
五つでも、浴衣で通りを行き来して湯をつなぐ時間そのものは、少しも減りません。むしろ数が絞られたぶん、一つひとつの湯屋の造りや、湯船で隣り合う地元の人の会話に、目と耳が向きます。七つを埋めるスタンプ帳ではなく、まちを一枚の宿として味わう。休んでいる湯があることも含めて、それがこの夏の城崎の顔です。