移住・関係人口 — 2026.07.27 MON NO.026 / TSUGINOTE LOCAL

4月1日に終わった移住支援金と、
7月末になっても始まらない移住支援金

自治体の窓口で住民と職員が制度の資料を囲む場面

要点:東京圏などから地方へ移る人に配られる「移住支援金」は、国の地方創生移住支援事業として全国で共通の枠組みを持ちます。世帯なら100万円以内、18歳未満の子を帯同すれば1人につき最大100万円の加算。ところが2026年7月末のいま、長野県上田市は令和8年度分の受付をすでに終え、同じ長野県の安曇野市は受付を停止中で子ども加算は30万円、広島県は取扱い自体が決まっていません。同じ制度の同じ年度で、この差が出ています。動かないのは、転入から1年以内という申請期限だけです。

移住支援金を調べようとすると、たいていは「いくらもらえるか」の一覧に行き着きます。ただ、いま自治体の公式ページを何枚か開いてみると、金額より先に目に入るのは別の情報です。ページの見出しそのものに、括弧書きで状況が書き込まれている。

【令和8年度の受付を終了しました】(上田市)。【受付停止中】(安曇野市)。「現在受付を開始しておりません」(広島県)。いずれも2026年度、つまり令和8年度の移住支援金についての記述です。

同じ制度、割れている窓口

三つの窓口を並べます。数字と日付は、各自治体・県が公表しているページの記載によります。

窓口令和8年度の状況子ども加算
長野県上田市予算額に達したため受付終了(2026年4月1日現在)18歳未満1人につき100万円
長野県安曇野市受付停止中。新要綱・様式の庁内審査に時間を要し、6月中の掲載が困難に(2026年6月23日掲載)18歳未満1人につき30万円
広島県(県内17市町)国の年度当初予算の交付決定前のため受付未開始。制度の取扱いが決まる時期は未定(2026年4月1日掲載)令和7年度の内容として1人につき100万円

上田市のページには、令和8年度の申請予約が4月1日午前8時30分から始まる旨が3月13日時点で告知されていました。その予約開始日と同じ4月1日付で、予算額に達したため受付を終了した、と記されています。申請には事前の電話予約が必要で、予約可能期間はお電話いただいた日から2週間以内。「お問い合わせいただいた時点で予算額に達している場合、申請を受け付けられないことがございます」という但し書きも添えられています。

額を決めているのは、国ではない

ここで制度の骨格を確認しておきます。移住支援金は内閣府(地方創生)が枠組みを示す「地方創生移住支援事業」で、実施主体は都道府県と市町村です。内閣府のページにはこう書かれています。世帯の場合は100万円以内、単身の場合は60万円以内で「都道府県が設定する額」。18歳未満の世帯員を帯同する場合は1人につき「最大」100万円を加算。

「以内」と「最大」。この二語が効いてきます。100万円は上限であって、全国どこでも100万円が出るという意味ではありません。実施期間も支給額も地方公共団体により異なる、と内閣府自身が明記しています。

安曇野市の令和8年度の要綱は、その裁量が下方向に使われた例です。単身60万円、18歳以上2人以上の世帯100万円までは同じですが、子ども加算は「令和8年4月1日時点で18歳未満の子ども1人につき30万円」。同じ長野県内でも、上田市の要件表には18歳未満の世帯員1人につき100万円加算と書かれています。市境を一つまたぐだけで、子ども2人の世帯なら140万円の差が生まれる計算です。

交付要件を満たしていても、予算が終了次第、申請受付を終了する場合があります。(安曇野市「令和8年度の申請ご案内」注意事項より)

要件を満たすかどうかと、受け取れるかどうかは別の問いだ、ということです。この一文は多くの自治体のページに、ほぼ同じ言い回しで置かれています。


2026年度に何が起きたのか

今年に限っては、遅れの発端がページに残されています。上田市が3月25日時点で掲載した文面です。国の令和8年度当初予算について、会計年度の開始前(通常は3月末日)までに成立しない見込みとなっている。したがって補助金は当初予算の成立後に執行される予定であり、申請受付開始日および予約可能期間が変更となる可能性がある——。

広島県が「国の年度当初予算の交付決定前であるため」受付を開始していないと書くのも、同じ流れの上にあります。国費が動かなければ、県と市町の共同事業である移住支援金は動かせない。年度が替わっても、窓口はすぐには開かないわけです。

もっとも、遅れの理由は国の予算だけではありません。安曇野市が6月23日に掲載した文面は、率直にこう書いています。6月中の様式等の掲載を目指していたが、今月中の掲載が難しい状況になった。庁内での新要綱(様式含む)の審査に時間をいただいている——。制度の中身が変われば要綱と様式を作り直す必要があり、その事務にも時間がかかります。額の見直しと窓口の停止は、無関係ではないのだろうと思います。

動かないのは、申請の期限だけ

ここが移住する側にとっていちばん実務的な論点です。窓口が開くのは遅れても、申請できる期間そのものは延びません。

移住支援金の申請は「転入後1年以内」が全国共通の条件です。加えて、自治体は年度内の事務処理スケジュールから独自の締切を置いています。上田市の令和8年度申請期限は令和9年1月29日。安曇野市も申請締切日を令和9年1月29日としたうえで、「事務処理のスケジュール上、1月29日〜3月末の申請受付はできません」と明記しています。

つまり、4月に転入した人にとっての実質的な申請可能期間は、翌年1月末までの約10か月です。そのうち4月から6月までが受付停止だったとすれば、残りは7か月ほど。その間に就業証明書や戸籍の附票(本籍地でしか取れません)を集め、要件を満たした状態で窓口に行く必要があります。上田市は「窓口申請時点で支給要件を満たしていることが必要」とし、予約していても要件が発生していなければ受理できない可能性があり、その場合は確保していた予算枠が取り消されて次の待機者へ移ることがある、とまで書いています。

制度の空白は、行政側では「掲載が遅れている」という事務の話です。申請する側では、期限つきの持ち時間が削られていく話になります。

移住を決める前に確かめる4点

以上を踏まえて、移住先の候補が決まっている人が転入前に確認しておきたい点を四つに絞りました。いずれも自治体のページか電話で確かめられます。

  1. 今年度の受付状況。「受付終了」「受付停止中」「開始前」のどれか。予算枠に達していないか。
  2. 加算額と基準日。子ども加算が1人いくらか。何年度の転入者に、どの時点の年齢で適用されるのか(安曇野市は令和8年4月1日時点で18歳未満)。
  3. 締切と受付できない期間。申請期限の日付と、年度末に受け付けない期間があるか。
  4. 要件の発生タイミング。転入日・就業開始日と、窓口へ行く日の前後関係。事前予約が要るか。

とくに二つ目は、転入の時期を数日ずらすだけで結果が変わる項目です。安曇野市の場合、令和8年3月31日までの転入と4月1日以降の転入では、申請要件も様式も別ページに分かれています。


移住支援金は、地方へ移る人の背中を押すための制度です。ただ、押す力の強さは国が決めた100万円ではなく、その年の予算成立の時期と、都道府県が設定した額と、市町村の事務の進み具合で決まっている。今年の窓口の並びは、それを分かりやすく見せてしまいました。

安曇野市の様式が公開されたとき、また上田市が来年度の受付をどう構えるとき。停止と終了のあいだで待たされた人が、実際に受け取れたのかどうか。そこまで追わないと、この制度が機能しているとは言えないのだと思います。移住支援金の仕組みは、金額の一覧を眺めているだけでは見えません。

出典:内閣府・地方創生「移住支援金」chisou.go.jp/上田市「【令和8年度の受付を終了しました】三大都市圏から移住をお考えの方へ!移住支援金のご案内」(2026年4月1日更新)city.ueda.nagano.jp/安曇野市「【受付停止中】【令和8年4月1日以降の転入者】移住支援金のご案内」(2026年6月23日更新)city.azumino.nagano.jp/広島県「【東京圏から移住をお考えの皆様へ】令和8年度移住支援金制度について」(2026年4月1日掲載)pref.hiroshima.lg.jp。受付状況・金額・締切は各自治体が随時更新するため、申請前に必ず移住先の窓口へ直接確認されたい。本記事は2026年7月27日時点の各ページの記載に基づく。
EDITOR'S NOTE — メグル:最初は「子ども加算が100万円から30万円に減った」という一点だけを書くつもりでした。ところが自治体のページを開くたびに、金額の前に括弧書きの状況説明が出てくる。受付終了、受付停止中、開始前。減額の話より、そもそも窓口が開いていないという事実のほうが重いのではないかと途中で考えを変えました。安曇野市の「お待たせしており大変申し訳ございません」という一行を、私は責める気になれません。ただ、待たされているあいだも申請期限は近づいてくる。その非対称だけは、書き残しておくべきだと思いました。