自治体DX — 2026.07.28 TUE NO.029 / TSUGINOTE LOCAL

期限は3月に過ぎた。
それでも「間に合わない」は10.9%から29.1%へ増えている

庁舎の執務室で職員が端末に向かい業務システムの画面を確認している場面

要点:住民記録や税など20業務のシステムを国の標準仕様へ統一する期限は、令和7年度末(2026年3月末)でした。デジタル庁が6月30日に公表した数字では、期限に間に合わなかったシステムが1万13件、少なくとも1つの遅れを抱える自治体が1015団体(56.8%)。この「間に合わない見込み」は令和7年7月末の10.9%から、12月末の25.9%、そして29.1%へと更新のたびに増えています。遅れは4つの事由に分類されていて、内訳を開くと分布は均等ではありません。もう一方の指標である運用経費では、国が見積を精査した結果、クラウド利用料に平均約3割の削減余地が確認されています。

締切が過ぎた後に増える数字があります。自治体DXの中核に据えられてきた基幹業務システムの標準化で、いま起きているのがそれです。

対象は住民基本台帳・個人住民税・介護保険など20業務、全国で34,592システム。地方公共団体情報システムの標準化に関する法律にもとづき、原則として令和7年度末までに国の標準仕様へ移行し、ガバメントクラウド上で動かすことが求められてきました。その期限は、4か月前に過ぎています。

デジタル庁が6月30日に公表した集計では、期限に間に合わなかったシステムは1万13件で全体の29.1%。都道府県と市区町村を合わせた1788団体のうち、少なくとも1つ遅れを抱える団体は1015、割合にして56.8%でした。過半です。主な要因として挙げられているのは、システム改修を担うエンジニアの不足です。

「見込み」は更新のたびに増えてきた

この数字を一点だけ見ると、期限を過ぎて集計したら半分以上が未達だった、という話に見えます。ただ、デジタル庁は期限前から四半期ごとに「間に合わない見込み」を公表してきました。並べると、動きの向きが分かります。

令和7年7月末時点の公表では、期限内の移行が困難と見込まれる「特定移行支援システム」は3,770件(10.9%)、これを持つ団体は643(36.0%)。それが令和7年12月末時点では8,956件(25.9%)、935団体(52.3%)に増えます。そして6月30日の公表で1万13件(29.1%)、1015団体。半年強で、システム数は2.7倍になっています。

一方、移行を終えた側の数字も出ています。総務省の標準化PMOツールによる集計で、令和8年1月末時点の移行完了は13,283システム、38.4%。期限の2か月前に、まだ6割が途上にあった計算です。

遅れは4つに分類されている

「間に合わない」はひとまとめの言葉ですが、制度上は事由で分けて集計されています。令和7年7月末時点の内訳が、デジタル庁の公表資料に載っています。

事由システム数該当団体数
1/現行システムがメインフレームで運用されている457
2/現行システムがパッケージではない個別開発19631
3/現行事業者が標準準拠システムを開発せず、代替調達の見込みも立たない18498
4/事業者のリソースひっ迫による開発・移行作業の遅延の影響を受ける等3,345595

合計3,770件のうち、事由4が3,345件。約9割が同じ箱に入っています。団体数で見ても643のうち595です。デジタル庁は増加の理由もそのまま書いています。

主な増加要因は、事由4により移行計画の大幅な見直しを行った事業者の影響を受けた自治体が、順次、特定移行支援システムに該当する見込みとなったため。(デジタル庁「特定移行支援システムの該当見込み(概要)(令和7年7月末時点)」)

ここは読み方に注意が必要な箇所だと思います。1015団体が「間に合わなかった」という表現は事実ですが、その多数は自団体の作業が止まったからではなく、契約している事業者が全国規模で計画を引き直した結果、順番待ちの列に並び直したという構図です。約1700の自治体が20業務を同じ時期に更新するという設計そのものが、リソースの一点集中を招いた面があります。


期限がなくなったわけではない

特定移行支援システムに該当すると、2026年度以降の移行が認められます。ただ、無期限の猶予ではありません。デジタル庁・総務省・制度所管省庁が自治体から把握した状況と移行スケジュールをもとに、標準化基準を定める主務省令で移行完了期限を個別に設定する仕組みで、おおむね5年以内の移行が想定されています。締切が消えたのではなく、団体ごとに引き直された、と読むのが正確でしょう。

混同されやすいものとして「一部機能の経過措置」が別に用意されています。こちらはシステム全体ではなく機能単位の猶予で、標準準拠システムへの移行自体は完了していることが前提。遅くとも令和10年度末までに機能標準化基準へ適合する必要があります。両者は名前が似ていますが、対象範囲も前提も違います。

もう一つの数字は、お金のほうにある

標準化の目的には、運用経費の削減も掲げられてきました。2022年10月に閣議決定された地方公共団体情報システム標準化基本方針が示したのは、移行完了後に平成30年度比で少なくとも3割の削減という目標です。

その進み方について、国は自治体からの相談を受けて見積を精査する支援を行っています。2026年3月3日の国地方デジタル共通基盤連絡協議会ワーキングチームに出された資料が、2月末時点の状況を数字で書いていました。見積精査支援の対象は331自治体。うち完了41、精査中124、そして「精査を受ける意向は示されたが資料が届いていない」が166です。

精査が済んだ分の結果はこうです。ガバメントクラウド利用料について、平均約30%のコスト削減余地が確認された。幅は16%から60%。指摘された観点は、検証環境などを夜間・週末に停止していない、不要データやストレージ容量が残っている、インスタンスのサイズが過剰、長期継続割引を適用していない——といった運用側の項目でした。

同じ資料の検討事項には、こう書かれています。移行後のシステム運用経費が増加するという自治体の意見と、自治体システムのコスト構造の分析を踏まえた財政措置のあり方の検討。目標は3割減で、現場からは増えたという声が上がり、精査すれば3割の余地が出る。三つの数字が同じ方向を向いていないことは、資料自身が認めているわけです。

クラウドは使った分だけ課金される仕組みなので、移行が終わった瞬間から経費が確定するのではなく、運用の仕方で毎月変わります。削減余地が平均3割あるという事実は、裏返せば「移行しただけでは安くならない」という意味でもあります。そして精査を受けた331に対し、対象は1788団体です。

何をもって遅れと呼ぶか

移行を終えた団体の事例には、共通する要素があると各所で整理されています。推進役を明確にする、標準仕様との差異分析で「なくなる機能」を先に確認する、業務主管課を早い段階から巻き込む。いずれも技術ではなく体制の話です。埼玉県美里町は共同利用の枠組みでデジタル庁のガバメントクラウド先行事業に参加し、栃木県真岡市はデジタル戦略課を統括部門に置いて全庁横断のプロジェクトを組みました。早く動いた団体が結果的に選択肢を多く持てた、という説明は納得のいくものです。

ただ、それを一般解にするのは早いと思います。遅れの約9割が事業者側の事由に紐づいているとき、「間に合った団体の何割が体制を整えていたか」という問いは、遅れた1015団体の説明にはなりません。体制づくりは移行後の運用経費を左右する要素として、むしろこれから効いてくる話でしょう。

この5年で最初に検証されるのは、期限に間に合ったかどうかではなく、引き直された期限が守られるか、そして3割削減の目標がどこかの時点で言い直されるかどうかだと見ています。標準化法には施行5年後の見直し規定があります。次に数字が更新されるとき、どの指標が消えて、どの指標が残るのか。そこを見ておきたいところです。

出典:デジタル庁「特定移行支援システムの該当見込み(概要)(令和7年7月末時点)」(2025年9月30日公表・全34,592システム/3,770件10.9%/643団体/事由別内訳)、デジタル庁「特定移行支援システムの該当見込み(概要)(令和7年12月末時点)」(2026年2月27日公表・8,956件25.9%/1,788団体中935団体52.3%)およびジチタイワークスWEB「【2026年3月】自治体システム標準化の移行期限と進捗状況」(2026年3月5日・令和8年1月末時点の移行完了13,283システム38.4%=総務省標準化PMOツール、特定移行支援システムと一部機能の経過措置の比較、美里町・真岡市の事例)、日経クロステック「自治体システム標準化、SE不足で1万システム超が期限に間に合わず」および中日新聞「システム標準化56%間に合わず 全国1015自治体で移行に遅れ」(いずれもデジタル庁2026年6月30日公表の1万13システム29.1%/1015自治体56.8%を報じたもの)、内閣官房「自治体情報システムの標準化・ガバメントクラウド移行後の運用経費に係る総合的な対策の取組状況について」第10回国地方デジタル共通基盤連絡協議会WT資料1(2026年3月3日・見積精査支援331自治体/平均約30%・16〜60%の削減余地/検討事項)、デジタル庁「標準化対象事務と標準仕様策定」、e-Gov「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」。数値はいずれも公表時点のもので、四半期ごとに更新されます。
EDITOR'S NOTE — メグル:期限のある政策は、期限が過ぎた瞬間にニュースになり、その後の数字が追われなくなりがちです。今回の29.1%は締切の後に出た数字で、しかも増えていました。数字が増えたこと自体より、増え方の内訳が一つの事由に寄っていた点が引っかかっています。全国一律の期限を置くと、律速になるのは自治体ではなく供給側になる。次の5年でも同じ構図が繰り返されるのか、そこは追い続けます。