地方創生 — 2026.09.01 NO.090 / TSUGINOTE LOCAL

自治体の空き家対策、知っている人は6割。動いたのはその半分にも届きません

自治体の相談窓口で、職員が空き家所有者の話を聞きながら資料を確認している様子のイラスト

要点:空き家を持つ人へのアンケート(株式会社カチタス「第6回 空き家所有者に関する全国動向調査」・2026年7月3日公表)によると、自治体の空き家対策を「知っている」人は56.2%に達した一方、実際に「利用したことがある」人は23.6%にとどまりました。動けない理由は年代・対話・地域という3つの壁に分かれ、自治体の窓口は「相談のしやすさ」への満足度は高い一方、「解決につながったか」は35.4%と低め。入り口は評価されても出口が課題という実態が見えます。調査は空き家の買取再生を手がける民間企業によるもので、その立場も含めて読む必要があります。

「まだ困っていないから」——空き家を持つ人の4割近くが、対策を後回しにする理由をそう答えています。持ってはいるが、動いてはいない。この宙ぶらりんの状態が、日本中の空き家所有者にどれだけ広がっているのかを、自治体の空き家対策と絡めて確かめた調査があります。中古住宅の買取再生を手がける株式会社カチタス(群馬県桐生市、東証プライム上場)が2026年7月3日に公表した「第6回 空き家所有者に関する全国動向調査」です。全国の空き家所有者1,000人を対象に、2026年6月11日にインターネット調査で実施されました。

この調査を読むときに、まず押さえておきたいことがあります。実施主体のカチタスは空き家の買取を本業とする企業で、調査結果には「売却」という選択肢への関心の高さも反映されています。行政発表の数字をそのまま受け取らないのと同じ態度で、民間企業の調査結果も、誰が何のために聞いたかを差し引いて読む必要があります。そのうえで、自治体の窓口が実際にどう使われているかを示すデータとして、内容を確かめていきます。

知ってはいるが、動いてはいない

調査ではまず、空き家問題への意識そのものが着実に高まっていることが分かります。相続登記義務化の認知は70.0%、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)の認知は58.0%、家族との対話率は72.5%で、いずれも2021年の調査開始以来の最高値を更新しました。2021年と比べると、相続登記義務化の認知は約3倍、空家特措法の認知は約1.5倍、対話率は約2.2倍に伸びています。

ところが、「今後3年以内に取る対策がまだわからない」と答えた人は25.5%、4人に1人にのぼります。空き家対策を重要だと考えている人は7割を超えるのに、実際に取り組む優先度が高いと答えた人は5割まで下がり、意識と行動のあいだに約2割のギャップが生まれています。優先度を上げない理由の最多は「まだ困っていない・緊急性を感じない」で39.7%でした。知ってはいる。重要だとも思っている。それでも動かない——この宙ぶらりんが、調査全体を貫く出発点です。

動けない理由は、3つの壁に分かれる

調査は、この「わかってはいるが動けない」構造を、年代・対話・地域という3つの角度から切り分けています。行政文書ふうに整理すると、次のようになります。

データが示すこと動くきっかけ
年代の壁60代以上は対策の未検討層が全年代で最多。理由の1位は「緊急性を感じない」(51.1%)管理や税金・維持費の負担、老朽化のリスクを実感すること
対話の壁家族と対話した人は未検討19.0%にとどまるが、対話していない人は42.5%が未検討固定資産税の通知(21.2%)や相続の発生(27.2%)
地域の壁都市部は「金銭的な理由」、郊外・過疎地は「自分・家族が使うかも」が対策を止める理由の上位過疎地では「活用するメリットを知った」(14.3%)が動くきっかけの1位

言い換えると、60代以上の所有者は「使う」とも「手放す」とも決めきれずに止まっており、対話をしていない人は「動くきっかけすらイメージできていない」状態にあります。対話をしない理由の1位は「まだ先のことなので、話すタイミングではない」(30.2%)で、逆に対話が始まったきっかけの上位は「相続をしたので」「固定資産税納税通知を受け取って」「維持管理や税の負担が重くて」でした。つまり対話は、当事者が何らかの負担やリスクを実際に感じるまで、自分からは始まらないということです。

自治体の窓口は、入り口は評価、出口は課題

ここまでは所有者側の意識の話でしたが、調査はもう一段掘り下げて、自治体の空き家対策そのものへの認知と利用も聞いています。自治体の空き家対策について「内容までよく知っている」は26.8%、「概要は知っている」が29.4%で、認知計は56.2%と半数を超えました。ただし内容まで正確に把握している層は3割に届かず、制度の存在は届いていても、詳細までは伝わっていない状態です。認知の経路は「自治体のホームページ」(36.0%)、「固定資産税などの通知」(31.6%)、「自治体の広報誌」(30.1%)の順で、いずれも自治体発信の情報が上位を占めています。

利用の実態はどうでしょうか。「利用したことがある」は23.6%、「利用はないが検討したことはある」が36.3%で、合わせて約6割が制度に関心を持つ層です。一方「利用も検討もない」は33.9%で、潜在的な需要はまだ十分に掘り起こされていません。利用実績のある制度は「空き家バンクへの登録・利用」(48.7%)、「相談窓口の利用」(46.6%)、「事業者との連携サービス・企業の紹介」(45.3%)が拮抗し、出口につながる制度から順に使われている傾向がうかがえます。

満足度の内訳を見ると、この制度の性格がはっきりします。「相談のしやすさ」(満足計40.9%)や「紹介された事業者・専門家の質」(満足計41.1%)への評価は比較的高い一方、「解決につながったか」は満足計35.4%と最も低い水準にとどまりました。相談はできても、解決には至っていない人が一定数いるということです。制度の入り口——相談窓口そのもの——は機能していても、出口——売却や活用という結果——までをつなぐ部分に、まだ改善の余地があると言えそうです。


カチタスは今回の結果を受けて、「心理的なハードル、情報・手続きの壁、そして金銭的・実務的な負担が複合的に絡み合い、『わかってはいるが動けない』構造を生み出している」とコメントしています。自治体の制度への潜在的な関心が6割に達している点は、行動を後押しできる余地がまだ残っているという読み方もできます。ただし、この調査を発表したカチタス自身が空き家の買取会社であり、「売却」という選択肢が調査全体を通じて中心に置かれている点は割り引いて読む必要があります。自治体にとっての本当の問いは、相談窓口を作ること自体ではなく、そこから先——所有者が実際に動き、解決まで届く設計を、限られた人員でどう組み立てるかにあるようです。

出典:株式会社カチタス「【第6回 空き家所有者に関する全国動向調査(2026年)】空き家対策の意識は高まるも、具体的な行動は依然進まず」(PR TIMES・2026年7月3日公表)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000079457.html(2026年9月1日確認)
EDITOR'S NOTE — メグル:迷ったのは、この調査をどこまで自治体の話として扱っていいかでした。実施主体は行政ではなく買取再生の会社なので、数字の並べ方には「売却」を後押ししたい意図がにじみます。そのぶん、自治体の窓口に関する部分(認知経路・利用実績・満足度)は本文で丁寧に引きつつ、誰が調べた数字かは冒頭とおわりの両方に書きました。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.09.01
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