地方創生 — 2026.08.11 NO.054 / TSUGINOTE LOCAL

4号随契を使った自治体は1,788のうち30団体。8月4日の通知が外した手続きは、3つのうち1つです

まちの通りで、タブレットを手にした自治体の担当者が前掛けをした地元の事業者たちと話しながら歩いている場面

要点:総務省と経済産業省が2026年8月4日、自治体がスタートアップから随意契約で買うときの手続きについて通知を出しました。同時に公表された調査によると、この4号随契を使った実績が「ある」と答えたのは全1,788団体のうち30団体、契約は191件です。市区町村では1,721のうち11団体。制度は2004年からあります。通知で省けるようになったのは、並んだ3つの手続きのうち真ん中の1つです。

まず、通知そのものを見ておきます。総務省自治行政局行政課が2026年8月4日に発出した「地方自治法第167条の2第1項第4号に基づく随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について(通知)」は、経済産業省との連名です。同日、経済産業省も同じ内容を発表しています。

言っていることは短いです。経済産業省が運営するJ-Startupプログラムに選ばれている企業の新商品・新役務については、自治体が4号随契で買うときに、二人以上の学識経験者から意見を聴く手続きは要らない。J-Startupの選定そのものが二人以上の学識経験者の意見を聴いて行われており、4号随契の認定手続きと同等の効果が得られる、という理由づけです。

手続きは3つ並んでいて、外れたのは真ん中

自治体の契約は一般競争入札が原則です。地方自治法施行令第167条の2第1項に並ぶ号のどれかに当てはまる場合だけ、随意契約にできます。その第4号が、新商品の生産や新役務の提供によって新たな事業分野の開拓を図る者として自治体の認定を受けた相手との随意契約を認めるものです。平成16年の政省令改正で入りました。

4号随契でスタートアップの新商品等を買うとき、自治体がやることは3つです。事業者から新たな事業分野の開拓の実施に関する計画を提出させる。二人以上の学識経験者の意見を聴く。そのうえで調達に向けた認定を行う。今回の通知が外したのは、この真ん中の1つです。1つめの計画の提出と、3つめの認定は残ります。

なお、意見聴取が省ける道はこれが初めてではありません。すでに他の自治体で実施計画の認定が行われている新商品等については、学識経験者の意見聴取は不要とされています。今回は、その「他の自治体で認定済み」と同じ扱いをJ-Startup採択企業にも認める、という整理です。

2年3か月半で、30団体

通知と同時に、総務省は各自治体の4号随契の実績を調べた結果を公表しました。対象は全都道府県・市区町村の1,788団体、期間は令和5年4月1日から令和7年7月18日までです。2年3か月半ぶんになります。

区分対象実績あり実績なし
都道府県4710(21%)37(79%)
指定都市209(45%)11(55%)
市区町村(指定都市を除く)1,72111(1%)1,710(99%)
1,78830(2%)1,758(98%)

「ある」と答えた30団体の契約は合計191件。内訳は物品の買い入れまたは借り入れが133件(70%)、役務の提供を受ける契約が58件(30%)です。そのうち創業10年未満の中小企業・小規模事業者からの調達、つまりスタートアップからの調達は80件(42%)でした。残りの111件は、それ以外の事業者からの調達になります。

指定都市の45%と市区町村の1%の差は大きいですが、これを「小さい自治体は関心がない」と読むのは早いと思います。4号随契を使うには、その新商品等を認定する手続きを自団体で回す必要があります。そこに人を割けるかどうかが先に来ます。


事例集を、担当部署の名前で読む

公表資料には調達事例が31件載っています。スタートアップからの80件のうち「他の自治体の行政課題の解決に広く資する」として横展開を希望した20件と、それ以外の111件のうち同様の11件です。各事例には調達担当部署の名前と電話番号が入っています。

この部署名を並べると、傾向が見えます。神奈川県横浜市は6件すべてが経済局ものづくり支援課、神奈川県相模原市は3件すべてが環境経済局経済部産業支援・雇用対策課、千葉県千葉市は3件すべてが産業支援課、茨城県は5件すべてが産業戦略部技術革新課、福島県郡山市は2件が産業創出課です。産業振興の担当課が、地元や県内の企業の製品を買って使っている形になります。

一方で、事業を所管する課が自分の課題のために使った例もあります。福岡県福岡市の水滴ライトは地域防災課、人流・交通量調査パッケージは住宅都市みどり局都市計画部交通計画課。高知県の防災トイレは学校安全対策課と地域福祉政策課。東京都八丈町の小児科・産婦人科オンライン相談は福祉健康課保健係。茨城県つくば市の無線LANアクセスポイントはこども・保健部こども育成課です。八丈町の例は、小児科医や産婦人科医の不足で相談の機会が減ることが見込まれたため、という背景が書かれていました。

掲載された31件だけの話なので、これを全体の傾向と決めることはできません。ただ、同じ制度が「地元企業の販路を広げる道具」としても「人がいない現場を埋める道具」としても使われていることは、この31件からは読めます。どちらの入口から入るかで、動く課が変わります。

入口は、意見聴取だったのか

事例の書きぶりで気になったところがあります。相模原市の3件は、いずれも調達の背景として「市内中小企業の優れた新製品・新サービスを認定する『相模原市トライアル発注認定制度』に認定されたことを知り、制度を活用して調達」と書かれています。宮崎県のネームプレートも「県では、トライアル購入事業者認定制度を実施しており、本制度を活用して調達することにより」とあります。

つまり実務の順番は、学識経験者を探すところから始まっていません。自団体にトライアル発注や認定の仕組みがあり、そこに載った製品を担当課が知る、という順です。仕組みが無い自治体は、認定のための会議体を一から立てることになります。今回の通知が外したのは、その会議体で意見を聴く相手を探す手間の一部です。効かないとは言いませんが、1,721のうち1,710が「実績なし」と答えている状況を、これだけで説明できるとは考えにくいところです。

日本成長戦略(令和8年7月21日閣議決定)には、各自治体の4号随契の調達実態を毎年度定期的に調査し、活用を促すための助言等で支援するとともに、優れた調達事例を他の自治体へ横展開する、と書かれています。今回の調査と事例集は、その1回目にあたります。

1件の増減が見える大きさ

もう一つ書いておきます。総務省は8月4日に公表した調査資料について、翌8月5日に記載の誤りを修正しました。契約実績の総数が190件から191件へ、役務の提供を受ける契約が57件から58件へ、スタートアップからの調達が79件から80件へ。割合の表記(70%、30%、42%)は変わっていません。

1件の差です。ただ、全国で191件しかない制度では、1件が全体の0.5%にあたります。数え直しがすぐ公表されたのは、資料の使い方としては正しい対応だと思います。同時に、この規模の数字を根拠に「活用が広がっている」と語るには、まだ何年か必要だということでもあります。

来年の調査で確かめたいのは、30という数が増えるかどうかより、30に並ぶ団体名が入れ替わるかどうかです。同じ10の都道府県と9の指定都市が毎年並ぶなら、それは制度が定着したのではなく、仕組みを持っている団体だけが使い続けているということになります。再現できる制度なら、名前は入れ替わるはずです。

出典:総務省「地方公共団体におけるスタートアップからの調達の拡大に関する技術的な助言(通知)の発出」令和8年8月4日(soumu.go.jp)/総務省自治行政局行政課「地方自治法施行令第167条の2第1項第4号に基づく随意契約実績に関する調査」令和8年8月(soumu.go.jp)/同調査の訂正(令和8年8月5日、soumu.go.jp)/経済産業省「地方公共団体によるスタートアップ調達の強化に向けて、『4号随契』の積極的な活用について地方公共団体へ通知を発出しました」2026年8月4日(meti.go.jp)。事例の調達担当部署ごとの件数は、公表された事例集31件を本紙が集計したもの。いずれも2026年8月11日確認。
EDITOR'S NOTE — メグル:通知は1文で読める短さですが、この手の資料は同時に出る調査のほうに現場が写っています。今回は事例集に調達担当部署の名前と電話番号が載っていたので、そこを縦に並べてみました。横浜市が6件とも同じ課、茨城県が5件とも同じ課。使える団体には使える人がいる、という当たり前が数字で出ています。1,710の「実績なし」に足りないものが手続きの数なのかどうかは、来年の調査でもう一度見ます。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.11
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