幸水梨は、農家の手取りだと1kgおよそ350円。通販の店先に並ぶと、3〜4倍になっていた。
要点:長野県安曇野市のJAあづみで、梨の早生種「幸水」の出荷が最盛期を迎えた。27人の生産者が2.6ヘクタールで栽培し、出荷量は5,000ケース(1ケース10kg)・販売金額1,750万円の見込みで、卸値に直すとおよそ1kg350円にあたる。産地直送の通販サイトでは同じ幸水梨がおよそ1kg1,200円台から1,600円台で並ぶ。朝収穫した梨を翌日には関東へ届ける「シャキッと便」の仕組みとあわせて、価格差の中身を計算した。
選果場の作業台に、青みを帯びた実がひとつ置かれている。
指先が表面をなぞり、傷や当たりがないかを確かめていく。
長野県安曇野市、JAあづみの梨部会が並べたこの実は、早生種「幸水」。8月16日、地元・三郷の小倉選果所で今シーズン最初の選果が行われた。
2026年産の幸水は、生産者27人が2.6ヘクタールで栽培している。日焼け果は少なく、カメムシや黒星病の発生も限定的で、平年より大玉傾向、食味も良好だという。出荷数量は5,000ケース(1ケース10キロ)、販売金額の見込みは1,750万円。出荷は8月下旬にピークを迎え、9月上旬まで続く見通しだ。
朝穫って、次の日には関東の食卓へ
初日に選果された220ケース(2.2トン)は、関東の生協へ「シャキッと便」として出荷された。21日からは大阪や県内向けの出荷も始まっている。
「シャキッと便」は、JAあづみが2008年から関東の生協・ユーコープ事業連合と続けている、鮮度を売りにした企画だ。生産者が早朝に収穫した梨をその日のうちに選果・出荷し、翌日には関東の組合員のもとへ届ける。収穫の時刻を早め、配送の時間を詰め、温度管理を整える——鮮度を保つための工夫を積み重ねて、いまの仕組みができている。2026年でおよそ18年になる。梨部会長の上條恭正さんは「玉肥大が良好で糖度も高く仕上がった。新鮮な梨を多くの人にぜひ味わって欲しい」と話している。
出荷組合の数字から、卸値を逆算してみる
ここまでの数字を並べると、出荷1キロあたりの単価が見えてくる。1,750万円を50,000キロ(5,000ケース×10キロ)で割ると、350円。これがJAあづみの幸水が、出荷段階でどれくらいの値で動いているかの目安になる(この割り算は本記事による)。
この数字が幸水だけの偏った値でないかも確かめておきたい。JAあづみの梨部会全体(幸水を含む全品種)の2026年産の計画は、出荷数量3万6,380ケース(363.8トン)、販売金額目標1億2,800万円。1キロあたりに直すとおよそ352円で、幸水単体の350円とほぼ重なる。梨全体として、卸値の水準はこのあたりに落ち着いているとみてよさそうだ。
通販の店先に並ぶと
同じ幸水梨が、通販サイトではどのくらいの値になっているのか。JAグループの通販サイト「JAタウン」を確かめると、JAみなみ信州(長野県上伊那郡、JAあづみとは別の地域・別のJA)が扱う「幸水【太鼓判】約5kg(12〜16玉)」が5,980円(税込)で、8月18日から9月2日ごろの発送予定となっていた(2026年9月1日確認)。光センサーで糖度13度以上を選んだ、等級の高い品だ。1キロに直すとおよそ1,196円になる。
楽天市場で「梨 幸水 5kg」を検索すると、複数の産地・生産者による出品が並んでいた(2026年9月1日確認)。1キロあたりの単価はおおむね1,100円台から1,600円台に分かれており、品種や等級、送料の有無によって幅がある。
350円と、1,200円前後から1,600円前後。単純に割ると3倍台半ばから4倍台半ばの開きになる。ただし、これは同じ荷口・同じ等級を比べた数字ではない。出荷組合の卸値は市場や生協向けの平均であり、通販サイトの価格は選果・梱包・個別発送のコストを含んだ、消費者の手元まで届ける値だ。等級や産地が違えば、この差も当然変わる。単純に「何倍も抜かれている」と読むための数字ではない。
確かめきれなかったこともある。産直通販サイト「食べチョク」にも幸水の出品はあるはずだが、今回の検索では具体的な価格を拾うことができず、比較の材料には加えていない。
安曇野の幸水は9月上旬まで、産地や品種を広げれば、通販ではもうしばらく選べる時期が続く。今回の計算から持ち帰れるのはひとつ。同じ幸水でも、生産者や産地の直販ルートを選ぶほど、間に立つ手数が減り、店頭よりいくらか抑えた値で買えることが多い、という一手だ。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.09.01
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