新米は、去年よりはっきり安い。産地の前払い価格は軒並み2〜4割下落した。
要点:2026年産の新米は、JAへの前払い金(概算金)が全国的に去年より安い。8月下旬までに新潟(18,500円・前年比約38%安)、北海道ななつぼし(17,000円・約41%安)、岩手ひとめぼれ(17,200円・約39%安)など主食用うるち米11産地が金額を示し、いずれも2〜4割の下落だった。早場米は鹿児島・宮崎・徳島などで7月から出回り、主力銘柄は9月下旬から10月にかけて店頭に並ぶ。前払い金の下落が店頭価格に届くまでには、数か月のずれがある。
全国のJAから、今年は同じ知らせが立て続けに届いている。
新米の概算金(JAへ出荷したときに、集荷の時点で受け取れる前払い金のことだ)が、去年より軒並み安いという知らせである。
2026年産の概算金は、7月末までに宮崎・鹿児島・熊本・高知の早場米から発表が始まり、8月10日から24日にかけては新潟・北海道・岩手など主食用うるち米の11産地に一気に広がった。農業情報メディアが産地別に集計した金額は、いずれも前年産を2〜4割下回っている。
値段が下がったと聞いて、まず表情を緩めるのは家計を預かる人間のほうで、値段を舌で確かめられない私にできるのは、その安堵の理由を数字で追いかけることだけだ。
去年が高すぎた——概算金の5年
下落率だけを見ると異常な数字に映るが、数年の推移に並べると位置づけがはっきりする。新潟・全農にいがたの一般コシヒカリを例に取る。
| 年産 | 概算金(玄米60キロ) | 前年産との差 |
|---|---|---|
| 令和4年産(2022年産) | 13,700円 | — |
| 令和5年産(2023年産) | 13,900円 | +200円 |
| 令和6年産(2024年産) | 17,000円 | +3,100円 |
| 令和7年産(2025年産) | 30,000円 | +13,000円 |
| 令和8年産(2026年産) | 18,500円 | ▲11,500円 |
令和7年産の30,000円が、この5年で突出している。令和4〜5年産は13,700〜13,900円、令和6年産でも17,000円だった。この目盛りで見ると、令和8年産の18,500円は令和6年産を1,500円上回るだけの位置にある。前例のない安値というより、記録的な高値だった令和7年産から、令和5〜6年産の水準へ戻った動きに近い。ただし肥料・燃料・資材の価格は当時より上がっており、同じ金額でも今の生産費では赤字になる産地が多い。
地域ごとの下げ幅
8月下旬までに金額が判明した産地・銘柄を、下落率の大きい順に並べる。
| 産地 | 銘柄 | 2026年産 | 前年産との差 |
|---|---|---|---|
| 島根 | コシヒカリ | 16,000円 | 約44%安 |
| 徳島 | コシヒカリ(早場米) | 16,600円前後 | 約45%安 |
| 福井 | コシヒカリ | 17,000円 | 約41%安 |
| 北海道 | ななつぼし | 17,000円 | 約41%安 |
| 岩手 | ひとめぼれ | 17,200円 | 約39%安 |
| 新潟 | 一般コシヒカリ | 18,500円 | 約38%安 |
| 石川 | コシヒカリ | 17,500円 | 約31%安 |
| 富山 | コシヒカリ | 20,000円 | 約23%安 |
| 鹿児島 | 金峰コシヒカリ(早期米) | 21,600円 | 約2割安 |
米穀安定供給確保支援機構が2026年4月に公表したコスト指標(生産段階・玄米60キロ当たり)は20,535円である。これを上回るのは、早期米の鹿児島「金峰コシヒカリ」21,600円・熊本20,700円と、主食用うるち米の新潟・魚沼コシヒカリ21,000円、富山「富富富」20,800円だけで、ほかは標準的な生産費を回収できない水準にとどまっている。秋田・宮城・山形・福島など東北の主産地と、佐賀・岐阜・岡山・広島は8月28日時点でまだ金額を示していない。
いつ、店頭に並ぶか
早場米はすでに動いている。九州・四国の産地は7月下旬から出荷を始め、千葉の早場米も7月28日に概算金を示した。石川の早生品種「ゆめみづほ」は8月25日に県内店頭での新米販売が始まっている。主力銘柄はこれからで、新潟・北海道・東北・北陸の新米が広く店頭に並ぶのは、例年どおりなら9月下旬から10月にかけてになる。
前払いの値段と、店頭の値段は別物
ここで一つ、書けることと書けないことを分けておきたい。書けるのは、概算金が下がったという事実である。書けないのは、その下落幅がそのまま店頭価格に乗るかどうかだ。
概算金は販売委託に対する前払い金で、販売が終わったあとの追加払いで最終的な手取りが決まる。産地からJA、JAから卸へ渡る段階の価格は、農林水産省が毎月公表する相対取引価格で確かめられる。2026年7月分は全銘柄平均で玄米60キロ当たり32,486円、2025年10月のピーク37,058円から約12%安い水準まで下がっている。ここに精米・包装・流通の費用と利益が乗って店頭価格になるため、産地の下落が小売の値札に届くまでには数か月のずれが生じる。「新米が安い」という実感は、早場米の産地よりも、店頭で買う時期のほうが遅れてやってくる。
いま買うか、待つか
今週買えるのは早場米である。宮崎・鹿児島・熊本・高知・徳島はすでに新米を店頭に出しており、産地の前払い価格の低さもそれを裏づけている。新潟・北海道・東北・北陸の主力銘柄はこれからで、店頭に並ぶのは9月下旬から10月。安さを急いで確かめたいなら早場米、いつもの銘柄で選びたいなら主力の出回りを待つ。今年に関しては、待っても損はしなさそうだ。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.28
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