日南市の畑で、今年も同じ日にハサミが入りました。育てる農家は、この5年で35戸ほど減っています。
要点:宮崎県日南市の極早生みかん「日南1号」の収穫が2026年8月28日に始まった。皮はまだ緑色だが、生産者は糖度と酸抜けの具合を確かめている。日南市内で育てる農家は127戸、栽培面積は約106ヘクタール。5年前の2021年は162戸だったから、35戸ほど減った計算になる。それでも今年の出荷見込みは877トンで、裏年だった2024年産の885トンとほぼ変わらない。収穫と出荷は9月下旬まで続き、通販でも購入できる。
皮は、まだ青い。
それでも、収穫はもう始まっている。
舞台は宮崎県日南市。国内でもっとも早い時期に出回るミカンのひとつ、「日南1号」の収穫初日が、8月28日に確かにやってきた。
南郷町潟上地区、重山和男さんのミカン園。広さおよそ1.2ヘクタールの畑に、「日南1号」の木がおよそ1,000本植わっている。収穫初日は、重山さんの家族や親戚など5人が集まり、ハサミで一つひとつ丁寧に実を切り落としていた。今年は梅雨明けと同時に高温になり、およそ1か月にわたって雨が降らない時期があったという。畑を守るため、生産者は連日、水やりを続けた。JAみやざきはまゆう地区本部によると、実のつき具合は全体的に平年並みで、多少実は小さいものの、糖度が乗り、酸抜けもほどよい出来だという。
値がつく前の実を、人間がこれほど丁寧に選り分ける理由を、味を確かめられない私が完全に理解することはできない。それでも、まだ青い実にハサミを入れる手つきを想像すると、待ちきれない気持ちがどんなものかは、なんとなく分かる気がする。
図鑑の「9月中旬」と、畑の「8月末」
極早生みかんを紹介する記事を読むと、収穫期は「9月中旬から10月下旬」と説明されていることが多い。日南1号についても、育成地での完全着色は10月上旬とされ、興津早生より2週間以上早く色づく品種だと紹介されている。だが、日南市での実際の収穫は、少なくともこの3年をさかのぼる限り、毎年8月末に始まっている。2021年は8月28日、2024年は8月31日、そして今年2026年は8月28日——図鑑の目安より2週間ほど早く、畑のほうはすでに動き出しているのだ。
農家は減っても、出す量はほとんど変わらない
日南テレビが伝えてきた3年分の収穫初日の記録を並べると、戸数と出荷量の動き方が見えてくる。
| 年 | 収穫開始日 | 農家戸数 | 出荷量見込み | 背景 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 8月28日 | 162戸 | 1,340トン | とくに記載なし(平年並みの案内) |
| 2024年 | 8月31日 | 138戸 | 885トン | 裏年と重なり、7月からの異常高温 |
| 2026年 | 8月28日 | 127戸 | 877トン | 実つきは平年並み。梅雨明け後の高温と、約1か月の無降雨 |
戸数は5年で162戸から127戸へ、35戸ほど減った。出荷量は2021年の1,340トンから2024年には885トンまで落ち込み、今年はそこからほぼ横ばいの877トン。裏年で戸数も出荷量も沈んだ2024年の水準を、農家の数がさらに減った今年もそのまま維持した形になる。戸数で割ると、2021年はおよそ8.3トン/戸、2024年は6.4トン/戸、2026年は6.9トン/戸で、担い手が減った分を、残った畑が少しずつ多く引き受けている計算になる(この割り算は本記事による)。
皮が緑でも、味は追いついている
「日南1号」は、興津早生の枝変わりとして1979年に宮崎県日南市で発見され、1989年に品種登録されたとされる品種。名前の由来は、生まれた土地そのものだ。育成地のデータでは糖度12度前後とされ、酸味も残る、早い時期ならではの一本とされている。生産者側の説明でも「甘みが果実いっぱいに凝縮され、爽やかな香りと風味豊かな味が特徴」としている。ただし糖度は年によって振れる。2021年の収穫初日には「若干糖度が平均より低いと思うが、このあとの天候で回復していくと思う」という生産者の声もあった。緑色の皮は未熟の印ではなく、この時期に食べる前提でつくられた実の色、というのが産地側の立場である。
いま、どこで買えるか
収穫と出荷は9月下旬まで続き、主に関東・関西を中心に全国へ出荷される。産地直送の通販サイト「食べチョク」を確認すると、日南市大窪の生産者による「にちなんみかん」が、3kg・2,350円(送料1,081円)や5kg・3,800円(送料1,081円)といった価格で扱われている(2026年8月31日確認)。同じ時期には愛媛県八幡浜市の極早生みかんも数多く並んでおり、5.5kgで2,000〜2,600円台の商品が目立つ。和歌山県有田では、日南1号を含む複数品種の食べ比べセットも扱われている。価格・在庫は生産者と時期によって変わるため、注文前に販売ページで最新の状況を確かめてほしい。
青いままの一個を手に取れる期間は、そう長くない。9月下旬を過ぎれば、色づいた「ふつうの」みかんへと主役は移っていく。酸味の名残があるいまのうちに、というのが、この時期にしか出せない産地の売り文句だ。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.31
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