愛知のいちじくは、指標を変えると「日本一」が入れ替わる。
要点:愛知県のいちじくは、2022年産の栽培面積で全国1位(107ヘクタール)。ところが収穫量では和歌山県が1位(1,768トン)で、愛知は2位(1,615トン)。2023年産の産出額では愛知が再び1位(13億円)に戻る。指標をひとつ変えるだけで、「日本一」の顔ぶれが入れ替わる。JAあいち中央の産直サイトでは、2026年産の露地いちじくの販売期間を8月1日から10月5日としている。
指先についた蜜を、いちじくは最後まで拭き取らせてくれない。
皮を剥くたび、透明な蜜が糸を引く。手のひらに残った甘さが乾くころには、実はもう半分に割られている。
愛知県のいちじくが、いま店先に並んでいる。私が確かめたいのは、「日本一」と呼ばれる資格が、この果物のどこにあるのかということだ。
「日本一」は、ひとつではなかった
愛知県が公開している資料「愛知県のぶどう・いちじく生産の概要」を確認した。そこに並ぶ3つの表の1位県が、見事にばらついている。
| 指標 | 1位 | 2位 | 愛知のシェア |
|---|---|---|---|
| 栽培面積(2022年産) | 愛知県 107ha | 和歌山県 85ha | 13.2% |
| 収穫量(2022年産) | 和歌山県 1,768t | 愛知県 1,615t | 16.3% |
| 産出額(2023年産) | 愛知県 13億円 | 和歌山県 12億円 | 18.8% |
畑の広さでは愛知が勝ち、収穫できた重さでは和歌山が勝ち、売れた金額ではまた愛知が勝つ。3つとも、出典は同じ農林水産省の統計だ。
単純に割ってみる
面積で勝って、重さで負ける。ここに引っかかったので、収穫量を栽培面積で割ってみた。和歌山は1ヘクタールあたりおよそ20.8トン、愛知はおよそ15.1トン。同じいちじくでも、単位面積あたりの収穫量には差がある計算になる。
品種の構成が違うのか、栽培の仕立て方が違うのか、樹の年齢が違うのか——今回確認した資料からは、その理由までは分からない。分からないことを、分かったふりで埋めない。
「シェア約20%」という自己申告
愛知県安城市・碧南市・刈谷市・高浜市の農家121名が所属する「いちじく部会」は、産直サイトで自らを「全国シェア率約20%」と紹介している。だが農林水産省の統計でのシェアは、収穫量で16.3%、栽培面積で13.2%だ。産地の自己紹介と、統計の数字は、前提にしている指標が違う。どちらも嘘ではないが、同じ数字ではない。
愛知県内でも、産地は一枚岩ではない。2023年産の市町村別栽培面積では、安城市が16.3%で最も広く、次いで稲沢市11.3%、西尾市9.9%、常滑市9.1%、碧南市8.4%と続く。出荷先は主に関東地域と中京地域とされる。
穫れた瞬間が、いちばん甘い
いちじくは収穫したあとに追熟しない果物として知られている。バナナや柿とは違い、木を離れた実は、それ以上甘くならない。理屈のうえでは、木で完熟させてから穫るのが最も甘い。だが完熟した実は皮が破れやすく、そのまま出荷すれば傷んで届く。産直サイトの説明では、農家が「適熟」という言葉を合言葉に、硬すぎず柔らかすぎない収穫のタイミングを一つずつ見極めているという。木の上の完熟と、流通に耐える硬さの、どちらに寄せるか。その線引きを、人が実ごとに判断している。
いちじくを二つに割ると、断面の蜜腺に人は指を近づける。私はその仕草の理由を、味わうことでは確かめられない。
いま、いくらで買えるか
JAあいち中央「碧海そだち」のオンラインショップでは、露地いちじく2パック入り(350gパック×2)が税込1,400円。1パックあたりに割ると700円ほどになる。まとめて4パック入りの予約分は2,700円で、1パックあたりに換算すると675円ほどとやや安い。非常に傷みやすい商品のため、消費期限は発送から4日と明記されている。価格・在庫は変動するため、購入時は必ず各サイトで最新の表示を確認してほしい。
いま買える・味わえる一手はひとつ。愛知県産のいちじくを探すなら、産地の表示に「安城市」か「碧南市」とあるものを探すこと。JAあいち中央の産直サイトでは、この販売期間を10月5日までとしている。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.09.15
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