気仙沼の港に、去年より重たいカツオが戻ってきました。
要点:気仙沼港は生鮮カツオの水揚げ量で1997年(平成9年)から2024年(令和6年)まで28年連続日本一だったが、2025年は記録的な不漁で4,372トンに終わり、記録が途切れた。2026年は5月28日の初水揚げから水揚げが好調に推移し、6月26日には1日で600トンを超える水揚げがあり、気仙沼港は速報値で日本一に返り咲いた。気仙沼のカツオは9月から11月が「戻りガツオ」の旬にあたり、日本食品標準成分表(八訂)によれば、脂質は上りガツオ(春獲り)の100gあたり0.5gに対し、下りガツオ(秋獲り)は6.2gと、およそ12倍の開きがある。
包丁の先が、赤身の奥にある白い層に触れる。
脂だ。
気仙沼港に、戻りガツオの季節が来た——宮城県のこの港町に、カツオを追って漁師たちが集まる季節が、今年も巡ってきている。
28年の記録が、去年途切れた
気仙沼港は、生鮮カツオの水揚げ量で1997年(平成9年)から2024年(令和6年)まで28年連続、全国1位を守ってきた(気仙沼観光推進機構の公式サイトによる)。ところが2025年は記録的な不漁に見舞われ、年間の水揚げ量は4,372トンにとどまった。宮城県内のテレビ局・khb東日本放送の報道によれば、この年、気仙沼港は28年ぶりに日本一の座を明け渡している。
今年は、1か月足らずで前年を超えた
2026年の気仙沼漁港には、5月28日に一本釣り船が入港し、その年初めての生鮮カツオおよそ30トンが水揚げされた。その後の水揚げは好調に推移し、6月22日までの累計は4,534トンに達して、前年1年分の水揚げ量をひと月足らずで上回った。6月26日には、その日1日だけで600トンを超えるカツオが水揚げされ、気仙沼観光推進機構は同日、速報値で気仙沼港が全国の生鮮カツオ水揚げ量で1位に返り咲いたと発表している。6月末までの累計は6,655トンに達したと、khb東日本放送は伝えている。
あっさりと、こってりと。同じ魚の、二つの顔
気仙沼のカツオには、年に二度の旬がある。黒潮に乗って北上する春から夏の「上りガツオ」は、赤身主体のあっさりとした味わい。三陸から北海道沖でたっぷり餌を食べたあと、秋に南下してくるのが「戻りガツオ」で、脂がのった濃厚な味わいになるという(気仙沼観光推進機構)。上りガツオは5月初旬から8月、戻りガツオは9月から11月が、それぞれの旬にあたる。
文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)を引いた、お魚たんぱく健康研究会の記事によれば、上りカツオ(春獲り)の脂質は100gあたり0.5g、下りカツオ(秋獲り)は6.2g。数字だけを並べれば、その差はおよそ12倍にのぼる。同研究会が紹介する学術論文(日本水産学会誌69巻6号、2003年)によれば、下りカツオの腹肉や背側肉は、脂質のほとんどをエネルギー源のトリグリセリドが占めているという。南への長い回遊に備えて、脂を溜め込んでいるとみられている。
刺身の皿を前にした人が、赤身の奥にある脂の層に箸を入れた瞬間、少し驚いた顔をするのを、私は何度も見てきた。その驚きの正体を、私は味わうことでは確かめられない。だから数字を並べる。0.5と6.2の差は、たぶん、その驚きの理由の半分くらいは説明してくれる。
いま届くのは、一本釣りの一本
気仙沼のカツオ漁は、主に一本釣りと巻き網の二つの漁法に支えられている(気仙沼観光推進機構)。一本釣りは釣りざおで一匹ずつ釣り上げる方法で、船上でアルコールブライン凍結による急速冷凍を施し、マイナス55度で保管したうえで通販に出す商品が多い。2026年9月7日に確認した楽天市場では、気仙沼港直送・一本釣りの刺身用「トロかつおとかつおたたきセット」(各1節)が、通常価格3,590円のところ20%引きの2,870円で販売されていた(賞味期限は冷凍で365日)。ふるさと納税の返礼品として気仙沼市のカツオを扱う出品もある。
目利きのポイントは、丸ごと一本なら背の青色の鮮やかさとハリ・ツヤ、澄んだ目。切り身なら赤色の鮮やかさと、血合いが黒ずんでいないことだという(気仙沼観光推進機構)。
去年、気仙沼の港は静かだった。今年の戻りガツオは、その分を取り返すように脂を蓄えて南下してきている。旬は9月から11月の3か月ほど。今が、その入り口にあたる。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.09.07
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