ふるさと納税「指定取消」、さかのぼれる期間が2年から5年に。
要点:2026年10月1日、ふるさと納税の指定基準が改正されました。自治体の違反をさかのぼって指定取消の理由にできる期間は、これまでの最大2年から最大5年に延びています。あわせて、自治体が自由に使える寄付金の下限が52.5%と法律で定められ、使い道の公表も義務になりました。この下限は2029年度には60%まで段階的に引き上げられる予定です。令和6年度の全国実績では、自治体の取り分はすでに53.6%でした。
去年までなら「2年前のことだから」で済んだかもしれない話が、今日からは済まなくなりました。総務省は2026年10月1日、ふるさと納税の「指定取消」をめぐる基準を改正しました。自治体の返礼品が基準に違反していないかをさかのぼって調べられる期間が、これまでの最大2年前から、最大5年前まで広がっています。
ふるさと納税は、寄付額から2,000円を引いた分が住民税と所得税から軽減される仕組みで、対象になる地方団体は総務大臣が毎年指定しています。この指定を受けられるかどうかの基準が、10月1日から一部変わりました。
「2年」と「5年」は、別のことを指している
総務省の資料にある条文案を、そのまま引いてみます。「都道府県等が指定対象期間の初日前四年以内(略)において前各号に掲げる基準のうち適合すべきこととされていたものに適合していなかつた事実がないこと」。言い換えると、「指定を受けようとする時点から過去4年の間、基準違反が無かったこと」が指定の条件になる、という意味です。指定対象期間は1年ごとに区切られているため、違反があったかどうかを確かめられる期間は、実質的に最大5年前まで広がる計算になります。
ここで混同しやすいのが、同じ改正の中にもう一つ別の変更が含まれている点です。「指定取消期間」そのものの長さ(取り消された後、どれだけの期間ふるさと納税の対象から外れるか)は、従来の一律2年間から、2026年4月1日付ですでに「3年以内」へと見直し済みでした。今回10月1日に変わったのは、取消の長さではなく、「どこまで遡って違反を調べるか」という遡及の範囲です。二つの数字が同じ改正の中に並んでいるため、自治体の担当者でも取り違えやすいところだと思います。
自治体の「取り分」にも、法律で下限ができた
今回の改正にはもう一つ、自治体の財布に直接関わる変更があります。地方税法の改正案は、寄付金の使い道についてこう定めています。「都道府県等が指定対象期間において受領する第一号寄附金の額の合計額から(中略)第一号寄附金の募集に要する費用の額として総務大臣が定めるところにより算定した額を控除して得た額(略「寄附金活用可能額」という。)が、当該指定対象期間において受領する第一号寄附金の額の合計額の百分の六十に相当する金額以上であること」。かみ砕くと、「寄付金総額から、返礼品の調達費やポータルサイトへの手数料などの募集費用を引いた残り(寄附金活用可能額)が、寄付金総額の60%以上であること」を、将来的な到達点として定めたという内容です。
いきなり60%を求めるわけではなく、段階を踏みます。総務省の資料によると、令和8年(2026年)の指定からは52.5%以上、令和9年は55.0%以上、令和10年は57.5%以上、令和11年(2029年)以降は60.0%以上と、4年かけて引き上げる計画です。あわせて、寄附金活用可能額を何に使ったかの公表も義務になりました。地方団体は決算を議会に認定してもらった後、遅滞なく自分のウェブサイトに掲載することが求められています。
ここで誤解しやすいのが、52.5%という数字の位置づけです。これは自治体の取り分の「新しい目標」ではなく、「下回ってはいけない下限」です。総務省が公表した令和6年度の受入実績(1兆2,728億円)を見ると、返礼品の調達費が25.2%、送付・広報・決済の費用が8.0%、事務費等が13.2%で、残る地方団体財源はすでに53.6%でした。つまり全国平均で見れば、初年度の下限である52.5%は、すでにクリアしている水準だということになります。下限が引かれたことで即座に自治体の取り分が増えるわけではなく、これまで平均を下回っていた自治体に合わせてもらう、という性格の改正だと読むほうが正確です。
「2年」で区切られていた時代の取消し事例
遡及期間がなぜ延びたのかを考えるには、これまでの指定取消し事例を見るのが早道です。総務省の資料によれば、令和元年6月の指定制度施行以降、指定を取り消された地方団体は9団体あります。直近では令和7年9月30日付で、みやき町(募集費用の割合が最大59.8%)、雲仙市(同56.4%)、山都町(同56.1%)の3団体が、いずれも募集費用の割合の超過を理由に取消しを受けました。これらはいずれも返礼割合3割以下基準や地場産品基準には違反がなく、「かけた費用の割合」だけが基準を超えていたケースです。さかのぼれる期間が2年のままだったなら、もっと以前の年度の超過は、取消しの理由として使えなかったことになります。
総務省が公表した令和7年度の地方財政審議会の意見には、こう記されています。「ふるさと納税については、今後とも、全国の地方団体や納税者等の理解を得つつ、制度の趣旨に即して適正に運用されるべきであり、必要に応じて関係者に対する意見聴取や実態把握を行いながら、制度のあり方や各基準の見直し等について不断に検討することが重要である」。遡及期間を延ばしたのも、取り分の下限を法律に書き込んだのも、この「不断の見直し」の一つという位置づけです。ただし、寄附金活用可能額の具体的な算定方法と、公表のやり方の詳細については、総務省が「追って告示にて示す予定」としており、2026年10月2日時点ではまだ確認できていません。この改正が実際にどこまで効くかは、使途公表が実際にどれだけ具体的な形で、どの自治体のサイトに出てくるか次第というところが大きく、現時点では見極めが必要です。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.10.02
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