いわき市の空き家には、住む人の記憶だけが残っています。市は、その家がまちの人と出会う場所に生まれ変わる後押しをしています。
要点:福島県いわき市が「空き家改修支援事業」の募集をしています。対象になるのは、地域住民が使える「公益的施設」へ改修する空き家だけで、自分の自宅として住み続けるためのリフォームは対象外です。補助は工事費の3分の2・上限500万円ですが、募集件数は1件だけで、応募が多ければ抽選になります。募集期間は8月31日から9月25日までで、応募の前には「事前相談書」の提出が必須です。令和元年度の開始から7年間で、実際に改修されたのは4件にとどまっています。
誰も住んでいない家の玄関にも、表札だけは残っていることがあります。福島県いわき市には、そうした空き家が点在しており、市はその一部を地域の人が使える場所に変える工事に補助金を出しています。ただし対象になるのは、持ち主が自分で住むために直す場合ではなく、地域住民が使える「公益的施設」に改修する場合だけです。
募集しているのは「令和8年度いわき市空き家改修支援事業」。市の住まい政策課が7月21日にホームページを更新して案内しており、募集期間は8月31日から9月25日までです。この記事を書いている今日は9月23日なので、締切まではあと2日しかありません。
「公益的施設等」というお役所言葉の中身
市の交付要綱には、こう書かれています。「地域コミュニティの維持・再生に資する滞在体験施設、交流施設、体験学習施設、創作活動施設若しくは文化施設等の用途」。平たく言えば、誰かが泊まれる小さな宿、人が集まる交流スペース、体験教室、工房、ちいさな展示室といったもののことです。個人が自分の生活のために住み続ける改修は、この言葉のどこにも当てはまりません。
自分の家として直したい人には使えません
対象になる空き家にも条件があります。「市内に存する1年以上使用されていない空家等」であり、「空家等の敷地内において、居住及びその他の使用の実態がないこと」。つまり、今住んでいる家や、たまに帰る実家のような、生活の実態が残っている家は対象外です。改修後は10年以上、公益的施設として使い続けることも求められます。市には別に、住民自身の自宅のリフォームを対象にした「個人住宅優良ストック形成支援事業」という制度もあります。空き家改修支援事業は、これとは狙いがはっきり違う制度だ、ということです。
枠はひとつ、抽選になることもある
募集件数は「1件(応募件数が多数の場合は、抽選となります。)」。補助率は工事費の3分の2、上限は500万円です。応募の前には「事前相談書」の提出が必須で、これは随時受け付けているものの、交付申請書を仕上げるまでにはさらに書類が要ります。今日から動き始めても、9月25日までに間に合わせるのは、かなり慌ただしいはずです。
申請できるのは、空き家を所有し登記簿に名前がある人やその相続人だけではありません。所有者から同意を得れば、空き家を借り受けた人が、自分で公益的施設として使う計画を立てて申請することもできます。ただし、いわき市の市税を滞納していないことと、市の暴力団排除条例に定める該当者でないことは、どちらの立場でも共通の条件です。
建物が昭和56年5月31日以前に建てられている場合は、実績報告書を出すまでに耐震改修を行い、今の耐震基準に適合させることも条件に入っています。持ち主が複数人いる場合は、他の共有者全員の同意書と印鑑登録証明書も必要です。工事費用そのものは助けてもらえますが、書類をそろえる手間だけでも相応にかかる制度だ、ということです。
全国では900万戸、いわき市で改修できたのは7年で4件
総務省が公表した令和5年住宅・土地統計調査によると、2023年10月時点の全国の空き家は900万2千戸、総住宅数に占める割合は13.8%で、いずれも過去最多です。5年前の前回調査より51万3千戸増えています。いわき市の空き家改修支援事業が令和元年度からの7年間で改修できたのは、そのうちのわずか4件です。ひとつの制度で解決できる規模の話ではない、ということが、この数字の差だけでも見えてきます。
これまでの実績
この事業は令和元年度に始まりました。市のページには「これまでに4件の空き家を公益施設等へ改修し、空家等の減少や地域コミュニティの再生などに寄与しています」とあります。7年間で4件という数を、多いと見るか少ないと見るかは分かれるところですが、少なくとも「毎年枠が埋まる」ほどのペースではないことは、この数字から読み取れます。今回、実際にその施設を使っている住民や、改修を担った所有者の声は、市の公開情報の中には見つけられませんでした。公益的施設として何年使われ続けているのかも、今回確認できた範囲では分かりません。
空き家を持て余している所有者や、地域で使える場所を探している団体にとって、この制度は選択肢のひとつになり得ます。ただし対象は限られていて、枠もひとつだけです。まず動くべきは、締切に間に合わせることよりも、市の住まい政策課に「事前相談書」を出し、自分の空き家がこの制度の対象になるかどうかを確認することです。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.09.23
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