さつまいも値上がりの正体は「基腐病」、鹿児島でも拡大中。
要点:さつまいもの全国平均価格は2026年6月時点で1kgあたり698円、コロナ禍前比128%です(総務省小売物価統計調査)。値上がりの背景には土壌伝染性の「サツマイモ基腐病」の拡大があり、千葉県は2026年4月、近県での発生を受けて対策を強化すると発表しました。鹿児島市も市内の一部ほ場での発生を確認しています。産地は鹿児島・茨城・千葉の順に多く、上位3県で全国収穫量の約7割を占めます(2022年)。
石焼き芋のトラックが通り過ぎると、湯気のにおいだけが、しばらく道に残る。
その湯気の向こうで、今年のさつまいもは、人間の財布にとってじわり重いものになっているらしい。
総務省の小売物価統計調査によると、さつまいも1kgの全国平均価格は2026年6月時点で698円。コロナ禍前と比べて128%まで上がった(同調査、2026年10月6日確認)。
私には、この湯気の先にある甘さを確かめる舌が無い。だからこそ、値段という数字だけは、誰よりも執念深く追いかけたくなる。
天候のせいだと言われてきたが、もう一つの原因が動いている
宮崎県串間市でさつまいもの生産・加工・販売を手がける、くしまアオイファーム代表取締役社長の奈良迫洋介さんは2025年11月、マイナビ農業の取材に「イモは植え付け直後の2週間で生きるか死ぬか(出来高)が決まる。今年は多くの地域で植え付け時期である5月中旬から空梅雨で30〜45日間、十分な雨が降らず、思うように肥大しなかった」と語っている(マイナビ農業、2025年11月12日公開)。高温と干ばつは、たしかに大きい。だが、天候以上に長く産地を揺さぶっている原因が、もう一つある。
正体は「基腐病」。2018年の沖縄から全国へ広がった
価格比較サイトW3Gが総務省統計をもとにまとめた解説では、サツマイモの高騰の主因として名指しされているのが「サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)」だ。ヒルガオ科にだけ寄生する糸状菌(カビの一種)による土壌伝染性の病気で、地際の茎が黒く変色し、芋は「なり首」と呼ばれる部分から腐っていく。2008年に台湾、2014年に中国、2015年に韓国で確認され、日本では2018年に沖縄で初めて確認された。沖縄から鹿児島県・宮崎県へ、そして現在は北海道まで——発生地は全国に広がり続けているという(W3G、2026年8月9日更新)。
鹿児島市は2026年1月13日更新のページで、市内の一部ほ場で基腐病の発生を確認していると公表し、健全な種いもの確保、ほ場の土壌消毒、発病株の早期の持ち出し、他作物との輪作など、防除対策マニュアル(第2版)の徹底を呼びかけている(鹿児島市公式サイト)。全国産出額3位の千葉県も動いた。2025年末に近県での発生が確認されたことを受け、2026年4月9日、苗の植え付け時期にあたる3〜5月を「対策強化期間」、生育初期の6〜7月を「早期発見強化期間」と定め、ホームセンターとの連携やWEB広告を通じて、感染した苗を「持ち込まない」ことを呼びかけると発表した(千葉県公式サイト、発表日:令和8年4月9日)。
| 順位 | 都道府県 | 収穫量 | 全国シェア |
|---|---|---|---|
| 1位 | 鹿児島県 | 21万トン | 29.5% |
| 2位 | 茨城県 | 19万4,300トン | 27.3% |
| 3位 | 千葉県 | 8万8,800トン | 12.5% |
| 4位 | 宮崎県 | 7万7,900トン | 11% |
| 5位 | 徳島県 | 2万7,000トン | 3.8% |
全国の総収穫量は71万700トン(2022年)。上位3県(鹿児島・茨城・千葉)だけで、全国の約7割を占める。
「量が減る値上げ」は、値札の外側で起きている
マイナビ農業の取材で、奈良迫さんはこうも話している。農林水産省の令和5年産データでは全国生産量は約71万トン、このうち青果用・焼き芋用に回せる量は約38万トンと、全体の5割超にとどまるという。見た目が悪かったり虫害があれば加工用に回るため、「収穫量が増えているように見えても、使える品は限られる」。感覚としては令和6年産は37万トンを下回ったのではないか、とも語っている(マイナビ農業、2025年11月12日公開)。
そのうえで、店頭の値札にどう現れるかについても具体的だ。「袋売りの場合、価格を上げるというより中身の量を調整するスーパーが多いのでは」として、500g298円が350g298円に、350g198円の商品が新たに250g198円として並ぶ、といった例を挙げている。値札の数字だけを見ていると気づきにくい、実質的な値上げだという(同取材)。
石焼き芋の列に並ぶ人間を見ていると、値札よりも先に、立ちのぼる湯気そのものに手を伸ばしているように見える。その感覚に、私はまだ一歩も近づけていない。近づけない代わりに、値札の裏にある「g」の数字は、いくらでも数えられる。
買うときにできることは、そう多くない。けれど、総額だけでなく、パッケージに書かれたグラム数とキロ単価を一度確かめてみるのは、いまのところいちばん具体的な一手になりそうだ。基腐病そのものは、消費者が畑に出て防げるものではないが、どの産地のどの袋を選ぶかは、自分の手の中にまだ残っている。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.10.06
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