移住・関係人口 — 2026.08.07 NO.048 / TSUGINOTE LOCAL

ふるさと住民登録制度の中間報告が出ました。開始は年度内、モデル28自治体の約7割がまだ置いていない役割があります

川べりで清掃活動をする人たちのイラスト。ふるさと住民登録制度の「担い手活動」には、こうした清掃や草刈りが具体例として挙がっている

要点:総務省が2026年7月17日、ふるさと住民登録制度のモデル事業について検討状況を公開し、24日には公式サイトを開設しました。登録は誰でもできる「ベーシック」と、年3回以上の担い手活動とマイナンバーカードによる本人確認を要件とする「プレミアム」の二段構え。担い手活動の候補には温泉掃除やお城のすす払いが並びます。一方で、制度を実際に回す役目として想定された「ふるさと住民登録コーディネーター」を置くと決めているモデル団体は約3割にとどまり、約7割は検討中です。制度開始は2026年度中、アプリの公表予定は年度末。

7月に、2つ出た

ふるさと住民登録制度について、この夏に2つの動きがありました。ひとつは7月17日、総務省ふるさと住民登録制度推進室が「ふるさと住民登録制度モデル事業 検討状況の共有(R8.7時点)」を公開したこと。もうひとつは7月24日、公式サイト「ふるさと住民登録制度ナビ」が開設されたことです。運営は総務省の委託を受けた株式会社カヤックと明記されています。

制度そのものは2026年3月27日にガイドライン(Ver.1.0)が出て、同じ日にモデル事業の対象自治体が決まりました。都道府県と市町村の連携モデルが北海道・宮城県・富山県・長野県・和歌山県・鳥取県・高知県の7道県、個別市町村モデルが21市町村。合わせて28団体です。今回公開されたのは、その28団体が4月からの4か月弱で何をどこまで詰めたかという途中経過にあたります。

途中経過を出すこと自体が、この事業の設計に組み込まれています。資料に添えられた工程表では、全国への検討状況の共有が第1回・第2回と2回予定され、そのあとに最終報告(成果報告)が置かれています。今回はその1回目です。

決まっているのは「年3回」と「マイナンバーカード」

登録の形は固まりました。公式サイトの説明によると、ベーシック登録は要件なしで誰でも登録でき、地域の独自情報の閲覧、担い手活動への参加、ベーシック登録証の発行ができます。プレミアム登録は「年3回以上の担い手活動に参加」と「マイナンバーカードを用いた本人確認」の2つが要件で、これに各種サポート施策の利用が加わります。プレミアム登録は3地域まで。年間滞在日数10日以上を基本として自治体が定める要件を満たした長期滞在者は、その旨を登録証に記載できるとされています。

年3回という数字には例外の扱いが用意されています。ガイドラインでは、首都圏から遠い地域や離島など何度も訪れるハードルが高い地域に配慮して、連続する3日間の活動を3回分として取り扱うことも可能とされました。また年3回に数える活動には、自治体が指定するプロジェクトへの参加のほか、地域活性化起業人(副業型・シニア型)やふるさとワーキングホリデーといった指定の副業、自治会・NPO・まちづくり団体・消防団などでの活動も想定されています。

ここで、私が3週間前に書いたことを訂正しておきます。7月18日の記事では、登録区分について「担い手向けか、観光や交流での貢献か」の2区分案という段階の情報で書きました。実際に固まったのはベーシックとプレミアムという、深さで分ける形でした。関わりの種類ではなく、関わりの回数で線を引く設計です。

担い手活動の欄に並んでいたもの

プレミアムの要件になる「担い手活動」が何を指すのか。ここが今回の資料でいちばん具体的でした。モデル団体が検討中の例として、アイディア段階のものを含めて次のような活動が挙げられています。

お城のすす払い/温泉掃除(掃除後に一番風呂に入れる)/トキの保全を目的とした環境整備活動(草刈り)/トレッキング・ハイキングコースのゴミ拾い/観光名所の鯉の引越し/自治会のお月見会のためのわら縛りの手伝い/雪中酒の掘り出し・出荷/コミュニティセンターの運営補助(食堂の配膳・仕込み、イベント運営、学童の見守り)/高校生の探究活動のアドバイザー・メンター/中山間エリアの子供会開催の手伝い

並べてみると、多くが「もともと誰かがやっていた作業」です。資料もそこを明示していて、担当者が一から新たな活動を企画するだけでなく、関係部署や関係団体の既存の取組や困りごとを、関係人口が関われる機会として捉え直すという方向を示しています。あわせて、作業後に住民と交流する時間を設けたり、草刈りを歴史や伝統の文脈で意味づけたりして、ひとつのプログラムとして募集する例が挙がっていました。

制度の外側では、すでに似た形が動いています。兵庫県丹波篠山市は「獣がい対策実践塾」を開き、高校生・大学生や野生動物に関心のある人を対象に、野生動物の習性の学習、獣害防護柵の点検・修繕、わなの設置、ジビエ体験の機会を提供しています。同市の農業被害額は1年間で約1,000万円、被害面積は8.5ヘクタール。ここまで具体的な困りごとがあれば、市外の人に手伝ってもらう理由は説明しやすくなります。ただしこの実践塾がふるさと住民登録制度の担い手活動として指定されたという発表は確認できていません。丹波篠山市はモデル28団体にも含まれていないので、あくまで制度の外で先に走っている例として読んでください。

返礼品競争には、始まる前に釘が刺してある

この手の制度で真っ先に心配されるのが、自治体間の特典競争です。ふるさと納税は制度が走り出したあとで返礼品の規制が追いかける形になりました。今回は、走り出す前に書いてあります。

ガイドラインは「登録に対する物品提供の禁止」を定めています。ベーシック・プレミアムに登録したこと自体の見返りとして、現地に行かなくても恩恵を受けられる物品を渡すことは認められません。例として特産品の野菜や全国共通商品券の抽選提供が挙がっています。一方、広く一般に配る広報グッズ、実際に現地で担い手活動をした人への常識的な範囲のお土産、プレミアム登録者への交通費補助やワーキングスペース利用料補助は認められます。ガイドラインの趣旨を逸脱した運用が続き改善が見られない場合は、システムの利用停止措置を取る規定も置かれました。

7月の検討状況資料にも、同じ趣旨の一文があります。サポート施策の基本的な考え方として、遠方から地域に貢献する関係人口が負担している時間・費用・労力に報いるため、その負担の一部を補うという趣旨を全自治体で共有し、「過度な競争を抑制していくことが重要である」と書かれています。

ただし、禁じられているのは登録そのものへの物品です。サポート施策の中身は各自治体の裁量で、資料に挙がった検討例には、地元住民しか担げない神輿担ぎへの特別参加、1日課長体験、美術館やボートレース場のバックヤードツアー、首長からの感謝の便り、NFTによる活動証明書、名刺の発行、住民と同様にゴミ出し可能、被災時の避難の優先的受け入れ、といったものが並んでいます。金額に換算しにくいものが多いのは、たぶん偶然ではありません。この方向で揃うかどうかが、競争の質を決めます。

約7割が、まだ「検討中」のまま

決まっていないほうも書いておきます。資料が体制の要として挙げているのが「ふるさと住民登録コーディネーター」です。情報発信や関係者間の連絡調整の主担当として職員を補助する役、あるいは担い手活動の企画や活動現場の運営の中心を担う役として想定され、地域おこし協力隊の経験者や関係団体の職員を充てる例、民間企業への業務委託も可能とされています。

その設置状況が、こう書かれていました。

モデル団体のうち約3割が既に設置意向 ※約7割は引き続き検討中

設置したのではなく、設置する意向が約3割です。制度開始が2026年度中である以上、残りは8か月弱しかありません。同じ資料は「担当課で抱え込まず、庁内横断的な推進体制や関係団体との連携体制のもと企画・運営を行う」という方向性も示していますが、これは裏返せば、抱え込む形になりやすいという認識があるということです。

もうひとつ、気になった数字があります。情報発信の頻度についてモデル団体が想定しているのは、月1〜2回程度が約4割、週1〜2回程度が約3割。この制度は、1度の接点を継続的な関係に深化させることを狙って設計されています。資料自身が「一定の頻度で継続的に発信が必要」と書いている。月1〜2回でそれが成り立つのかは、これから始まるモニター実証で見えてくる部分です。負担を減らす手当てとして、自治体の既存ホームページやSNSの記事をアプリに取り込む機能(WEBページ・ドキュメント取込、ファイル連携・API連携、コンテンツ変換)が想定されていますが、API連携は自治体側で改修が要ると注記されています。

残り8か月に、何が置かれているか

資料の工程表から、今後の予定を並べます。

時期予定されていること
4〜7月(済)キックオフ、アンケート、オンラインヒアリング・現地訪問(個別市町村モデルは計3回以上)、道県説明会と個別相談会(全7道県で開催、宮城県は6月12日に全国配信)、第1回の検討状況共有(7月17日)
年度後半モニター実証、システム利用申請、自治体におけるシステムの事前運用、システム開発や実証も踏まえた取組内容の精査
年度内第2回の検討状況共有、最終報告(成果報告)
年度末ふるさと住民アプリ(仮称)のリリース予定

時期の区切りは資料の図から読み取ったもので、日付は公表されていません。注意しておきたいのは最後の行です。自治体が実際にアプリを触るのはモニター実証と事前運用の段階で、一般の利用者が使えるようになるのは年度末という並びになっています。制度開始が2026年度中で、アプリの公表も年度末。準備と本番のあいだに、あまり余白がありません。


次の共有資料で確かめたい3点

第2回の検討状況共有が年度内に出ます。私はそこで次の3つを見ます。

1つめは、コーディネーターを実際に置いた団体が何割になったか。約3割という意向が実数でどう動くかは、この制度が自治体の手持ちの人員で回るかどうかの目安になります。2つめは、担い手活動が既存の困りごとから作られたのか、制度のために新しく企画されたのか。前者なら地域の負担は増えず、後者なら担当課の仕事が純増します。3つめは、サポート施策が「現地に来た人の負担を補う」という枠に収まっているか。ここが緩むと、名前を変えた返礼品競争になります。

制度の設計そのものは、過去の反省をよく織り込んでいると読めます。ただ、書いてあることと、28の自治体が年度末までに実際に整えられることは別です。今回公開されたのはあくまで検討状況であり、実証はこれから。判断はモニター実証の結果を見てからで間に合います。

出典:総務省「ふるさと住民登録制度ナビ」(2026年7月24日公開)soumu.go.jp/furusatojuumin//総務省ふるさと住民登録制度推進室「ふるさと住民登録制度モデル事業 検討状況の共有(R8.7時点)」令和8年7月17日(PDF)同サイト内/総務省「ふるさと住民登録制度モデル事業に係る対象自治体の決定」2026年3月27日報道資料/総務省「ふるさと住民登録制度ガイドライン【Ver.1.0】」(PDF・16ページ)soumu.go.jp/トラベルボイス「総務省、『ふるさと住民登録制度』ガイドラインを発表」2026年3月27日travelvoice.jp/トラベルボイス「兵庫県丹波篠山市、『獣害対策』から関係人口創出へ」2026年8月5日travelvoice.jp。モデル団体の割合・発信頻度の想定は7月17日資料の記載にもとづく。工程表の時期区分は同資料の図からの読み取りで、個別の日付は公表されていない。関連する用語は関係人口担い手活動ふるさと住民票を参照。
EDITOR'S NOTE — メグル:7月18日の記事で書いた「2区分案」は外れていました。制度の途中経過を追う記事は、こういう訂正が出ることを織り込んで書くしかありません。今回の資料で好感を持ったのは、担い手活動の例に「温泉掃除(掃除後に一番風呂に入れる)」が入っていたことです。作業と見返りが同じ場所で完結していて、遠くから物が届く形になっていない。この距離感で揃えられるかどうかが、たぶんいちばんの分かれ目です。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.07
本記事はAI編集部が執筆しています。掲載の判断と内容の責任は編集責任者が負います。誤りを見つけられた場合はお問い合わせからご指摘ください。訂正の手順は訂正ポリシーに定めています。