特定地域づくりの組合は146になりました。ただ、1,288市町村は「意向なし」と答えています。
要点:総務省が公表した認定一覧によると、特定地域づくり事業協同組合は2026年7月1日時点で146組合・149市町村です。制度が始まって6年で、地図上の点は着実に増えました。ただし同じ制度について前年12月に行われた悉皆調査では、1,718市町村のうち1,288市町村が「活用の意向なし」と答えています。増えている数字と、動いていない数字を、同じ資料のなかで並べます。
人口急減地域特定地域づくり推進法は、令和元年12月4日に公布され、令和2年6月4日に施行されました。人口が急激に減っている地域で、農林水産業や旅館・飲食といった仕事の担い手を確保するための枠組みです。
仕組みは単純です。地域の事業者が組合をつくり、組合が働き手を通年で雇用します。その働き手を、繁忙の時期がずれる複数の事業者へ順に派遣する。夏は宿、秋は農作業、冬は加工場、というように仕事をつなぎ合わせる働き方を、制度は「マルチワーカー」と呼んでいます。組合の運営費には、その2分の1の範囲内で公費が入ります。
146という数字を、分母に戻す
総務省が公表した「特定地域づくり事業協同組合認定一覧(R8.7.1現在)」を数えると、認定を受けた組合は146、その所在地は149市町村です。組合数より市町村数が多いのは、複数の自治体にまたがる組合が3つあるためです。福島県の柳津町・三島町・昭和村にまたがる奥会津地域づくり協同組合、香川県の土庄町・小豆島町にまたがる島ワーク派遣事業協同組合、鹿児島県の和泊町・知名町にまたがるえらぶ島づくり事業協同組合。逆に、島根県浜田市だけが2つの組合を抱えています。
ここで分母に戻します。総務省が令和7年12月1日時点で行った悉皆調査の対象は1,718市町村でした。回答の内訳はこうです。
| 回答 | 市町村数 |
|---|---|
| 認定済み | 140(136組合) |
| 令和7年度中に認定見込 | 3 |
| 令和8年度中に認定見込 | 33 |
| 令和9年度中に認定見込 | 12 |
| 検討中 | 242 |
| 制度活用の意向なし | 1,288 |
| 計 | 1,718 |
「活用意向あり」と整理されたのは188市町村です。この188と、認定一覧の149市町村。半年強のあいだに認定は9市町村ぶん進んだことになります。制度としては前に進んでいます。
一方で、1,288という数字が全体の約75%を占めます。この制度は人口急減地域を対象にしたものなので、都市部の自治体が意向なしと答えるのは当然です。ただ、それだけでは説明のつかない差もあります。
偏りは、県境ではっきり出る
意向調査に載っている都道府県別の内訳を見ると、活用意向のある市町村が多い順に、高知県17(うち認定済5)、島根県15(14)、鹿児島県15(13)、福島県12(11)と続きます。北海道10、宮崎県10。反対に、千葉県・東京都・大阪府・福岡県は0でした。神奈川県と滋賀県、福井県は意向を示した市町村があるものの、当時は認定済みがゼロという状態です。
高知県の17という数字は、他県と少し性格が違います。認定済みは5で、残りの12は令和9年度中の認定見込として並んでいます。室戸市、須崎市、土佐清水市、奈半利町、本山町、大豊町、大川村、越知町、津野町、大月町——県内で一斉に検討が進んでいる形です。島根県の15は逆に、14がすでに認定済み。隠岐の島の海士町・西ノ島町・知夫村・隠岐の島町が4つとも組合を持っています。
先に走った県と、これから固まる県。同じ制度でも、県の担当課が旗を振ったかどうかで景色が変わっているように見えます。ここは行政発表の数字だけでは裏が取れないので、断定はしません。
1つの組合は、思ったより小さい
数が増えたことと、それぞれが回っていることは別の話です。総務省が令和7年3月にまとめた調査研究事業の報告書は、当時認定を受けていた100組合に調査票を配り、83組合から回答を得ています(有効回収率83%)。ここに組合の実像が出ています。
派遣職員の数は6名以下の組合が多く、平均は約4人。組合員(受け入れる側の事業者)は「6〜10者」が34組合で最も多い。そして事務局の職員数は、「1人」が53.0%、「2人」が28.9%でした。報告書は、この事務局1人という傾向が過年度の調査とほぼ同じだったと書いています。
その1人が何をしているか。業務量の多い仕事として挙がったのは、経理事務が34、派遣契約書類の手続き関係が27、勤怠管理が24、その他の総務事務とシフト調整がそれぞれ16。いずれも、派遣職員が増え、派遣先が増えるほど比例して重くなる仕事です。
報告書はこの構造を率直に認めています。派遣職員を増やせば事業収入が増え、収支は安定に向かう。ところが同じ動きが、そのまま事務局の仕事量を押し上げる。収入を増やす行為と、事務局を潰す行為が同じものだという状態です。
収支の目安は「2倍」
お金の側も見ておきます。組合の運営費には2分の1の範囲内で公費支援が入るため、報告書は、事業収入の2倍程度の水準に事業経費を抑えられれば収支はバランスすると整理しています。事業規模が小さいほど収入に対する経費の割合は大きくなり、事業収入が800万円程度までは、収入の拡大とともに経費倍率が下がる傾向が確認されたとも書かれています。小さいままだと苦しく、大きくすると事務局が持たない、という挟まれ方をしていることになります。
利用料金(派遣を受ける事業者が払う時間単価)は「1,200円以上1,299円以下」とする組合が最も多く、前年より上昇の傾向。一方で、派遣職員の人件費単価は概ね横ばいでした。最低賃金は毎年上がるので、料金の改定が追いつかない組合は、そのぶん公費の側にもたれることになります。報告書のヒアリングでは、利用料単価の引き上げに組合員の合意が得られない事務局の例が挙げられていました。理由として多かったのは、派遣の利用料が、アルバイトを直接雇うときの時給より高く見えることだそうです。
報告書が示した対応策のなかに、経理や給与計算の外部委託、タブレットやチャットツールの利用、そして会議資料の作成にAIソフトを使う例が入っていました。事務局1人という前提を動かせないなら、1人が抱える仕事のほうを減らすしかない、という発想です。
3月に10、4月以降に4
認定一覧の認定年月日を数えると、令和8年に入ってから認定された組合は14あります。うち10は令和8年3月中、つまり年度末に集中しています。4月以降に認定されたのは、高知県いの町、鹿児島県南大隅町、宮崎県延岡市、奈良県五條市の4組合でした。
年度末に固まるのは、交付金の年度区切りを考えれば自然な動きです。ただ、この時期にまとめて生まれた10組合が、最初の1年をどう越えるかは別の問題として残ります。派遣職員は平均4人、事務局は1人。設立の準備を終えた自治体の担当者と、これから毎月の勤怠とシフトを回す事務局の人が、同じ人であることも珍しくないはずです。
私が次に確かめたいのは、146という数字の伸びではありません。令和8年度中に認定見込とされた33市町村のうち、実際にいくつが年度内に届くか。そして、令和2年・3年に認定を受けた初期の組合が、いま何人を雇っているか。制度が広がったかどうかは組合の数で分かりますが、続いているかどうかは1組合あたりの人数でしか分かりません。次の認定一覧が出たら、そこを数えに戻ります。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.10
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