交通空白の解消は、誰の仕事なのでしょうか。人口5万人未満の市町村の84%には、専任がいません。
要点:国土交通省の「交通空白」解消本部が2026年6月10日に決めた取組方針2026は、令和8年度に「持続可能な体制づくり」を評価する認定制度を設けると明記しました。集中対策期間中の目標は、300市区町村をトップランナーとして創出すること。ところが同じ資料の脚注には、人口5万人未満の市町村の84%で地域交通の専任担当者が不在、と書かれています。
この夏、地域交通の資料に「体制」という言葉が増えました。バスを何本走らせるか、デマンド交通をどこに入れるか、という話ではありません。それを決めて、続けていく庁内の並びのほうを見る、という言い方です。
言葉の出どころは、国土交通省の「交通空白」解消本部が2026年6月10日にまとめた「『交通空白』解消に向けた取組方針2026」です。ここに、令和8年度から認定制度を設けると書かれています。何を認定するのか。走らせている路線ではなく、自治体の体制です。
「解消した」ではなく「解消できる形になっている」を見る
取組方針2026が示す認定制度は、市区町村版・都道府県版・共同化・協業化の輸送資源フル活用版という3つの類型でできています。資料の言葉を借りれば、自治体や関係主体が「どの程度持続可能な体制を構築できているかを、明確な評価軸に基づいて可視化するもの」です。計画を書けたかどうかではなく、書いたものを回し続ける形になっているかを見る、という設計だと読めます。
あわせて、集中対策期間(令和7年度〜9年度)の数値目標も並んでいます。
| 対象 | 集中対策期間中の目標 |
|---|---|
| 市区町村の体制づくり | 300市区町村をトップランナーとして創出 |
| 都道府県 | 47全都道府県で市区町村を牽引・補完する体制を整備 |
| 事業者・自治体の枠を超えた取組 | 「共同化・協業化」を100件創出 |
このうち市区町村版については、Sustainable Japanが2026年8月7日の記事で、国土交通省が8月4日に募集を開始し、締切は9月18日、「自治体内での位置づけ」「良い戦略」「機動的・横断的な体制」「ノウハウの蓄積」「事業者・実施団体の強靱化」の5つの観点・計29項目・140点満点で審査され、ゴールド・シルバー・プラチナの3段階があると報じています。募集の日程と配点はこの報道によるもので、実際に応募を検討する場合は国土交通省が公表する要領に当たってください。
脚注に置かれた84%
取組方針2026を読み進めると、連携促進団体制度の説明のところに小さな脚注がついています。人口5万人未満の市町村の84%では、地域交通の専任担当者が不在(令和6年度地域交通行政調査)。
専任がいないというのは、誰も担当していないという意味ではありません。企画も、財政も、福祉も持っている職員が、そのうちの一つとして地域交通を持っている、という状態です。地域公共交通計画の改定も、協議会の運営も、補助金の申請も、そして今回の認定の申請書も、その兼務の机の上に載ります。
国も、そこは織り込んでいます。取組方針2026は、交通分野の専門人材やノウハウが不足し、自治体単独では担うことが困難なケースが少なくないと認めたうえで、改正地域交通法(令和8年法律第35号。公布後6か月以内に施行)で創設された連携促進団体制度を各地域で使ってもらう、と書いています。手引きの策定・周知や、団体と自治体の橋渡しを国が進める段階です。制度としては用意されましたが、どの地域にどう入るかはこれからです。
数えられた空白の多さは、体制の鏡でもある
ここで、6月に出た数字のほうを思い出しておきます。何らかの対応が必要な交通空白地区は全国2,740地区、892市区町村。前年より683地区増えました(この増え方については8月2日に書きました)。
取組方針2026は、この数字の読み方に念を押しています。
「リストアップした地区数が多い市区町村=地域交通の取組が遅れている市区町村」と捉えるべきでないことに留意が必要である。
続けて、中小規模の市区町村ではノウハウやマンパワーが不足していて、リストアップ作業が十分でない例もみられる、とも書いています。つまり調査結果は、困りごとの量ではなく、困りごとを数え上げられる体制の量を、いくらか映しています。
そして今回の認定制度は、その「体制」を正面から測るものです。同じレンズを二度通る、と言い換えてもいいと思います。空白が少なく見えている町は、空白が少ないのではなく数えられていないのかもしれず、その町はおそらく認定にも出てきません。数字の上では、どちらの表にも名前が載らない状態になります。
「重点的な後押し」が何を指すかは、まだ読み切れない
認定を取ると何があるのか。取組方針2026は「認定を通じて、国として財政支援を含めた重点的な後押しを行う」と書いています。一方で先のSustainable Japanの記事は、認定されれば特定の補助金が自動的に交付される制度にはなっていない、としています。
この2つは矛盾しないはずです。補助事業の審査で加点する、あるいは優先的に扱う、といった形なら両方成り立ちます。ただ、どちらの形なのかは公表資料を読まないと決められません。令和8年度は「『交通空白』解消等リ・デザイン全面展開プロジェクト」の公募が交通空白解消タイプ・共同化・協業化促進タイプ・モビリティ人材・組織育成タイプなどで動いていますから、認定とそれらの関係がどう整理されるかが、実務では一番効いてきます。ここは今のところ、断定せずに置いておきます。
締切より前に、机の上で確かめられること
応募する・しないの前に、担当の手元だけで済む確認がいくつかあります。
一つ目。自分のまちの地域公共交通計画が、いつ策定され、いつまでの計画になっているか。認定の観点に「良い戦略」が入っている以上、計画が形骸化していないかは最初に見られる場所です。二つ目。地域交通の担当が専任か兼務か、そして庁内でそれを即答できる人がいるか。答えが出てこないなら、それ自体が「自治体内での位置づけ」への回答になっています。三つ目。2026年のリストアップ調査で、自分のまちが何地区を挙げたか。ゼロだった場合、本当にゼロなのか、挙げる時間がなかったのかを分けて考える必要があります。
制度が測るのは体制です。体制は、点数がついたあとに人が減れば元に戻ります。集中対策期間は令和9年度まで。認定を取った市区町村の数と、専任担当を置けた市町村の数が同じ方向に動くかどうかは、次のリストアップ調査と行政調査を並べれば照らし合わせられます。私はそこを見ようと思っています。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.12
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