自治体ホームページの点検項目が、AとAAで18ふえる見込みです
1つはボタンの大きさで、改定の議論は8月24日から始まります。
要点:総務省は2026年8月19日、「みんなの公共サイト運用ガイドライン改定に関する研究会」を開くと発表しました。第1回は8月24日(月)です。自治体ホームページのウェブアクセシビリティのよりどころであるJIS X 8341-3が改正される見込みで、それに手引きを合わせるための会です。ウェブアクセシビリティ基盤委員会の資料によれば、点検項目にあたる達成基準はレベルAで7、レベルAAで11、あわせて18が足され、逆に1つが消えます。足されるものにはボタンの大きさや、グラフの色の濃さが含まれます。一方で総務省の令和7年度調査では、改正に向けて何かを始めている団体は21.7%でした。
8月24日に始まるのは、手引きの書き直しです
総務省の報道資料は、開催の理由をこう書いています。「改定予定されているJIS X 8341-3の改正に伴い、総務省で作成・公表している『みんなの公共サイト運用ガイドライン』を改定する必要があります」。
JIS X 8341-3は、高齢者や障害のある人を含めて誰もがウェブページを使えるようにするための日本の規格です。正式には「高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第3部:ウェブコンテンツ」。現行版は2016年に出たもので、末尾に年号をつけてJIS X 8341-3:2016と書かれます。
「みんなの公共サイト運用ガイドライン」のほうは、その規格に沿って役所が何をどの順でやればよいかを説明した手引きです。総務省の言い方では「手順書」。規格が試験の出題範囲だとすれば、手引きは勉強のやり方を書いた本にあたります。出題範囲が変わるので、本も直す。今回の研究会は、その直しかたを決める場です。検討事項は3つで、改定方針、改定、そしてその他の公的機関のウェブアクセシビリティ対応の促進に必要な事項。以降も複数回開かれる予定です。
構成員名簿も同時に出ています。座長は東洋大学名誉教授の山田肇氏。有識者は8人で、ウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)の委員長である太田良典氏も入っています。自治体からは5団体、茨城県神栖市・埼玉県川越市・東京都・京都府京都市・山口県下関市。ここに独立行政法人が2つ(国民生活センター、国立科学博物館)、府省庁が5つ(デジタル庁、総務省、外務省、厚生労働省、農林水産省)加わります。全国1,700余りの市区町村を5つの席で代表させるのは無理がありますが、規模も地方もばらしてあるので、違う条件の現場の話は出てくるはずです。
ふえるのが18で、消えるのが1です
では、出題範囲はどう変わるのか。ここは総務省ではなく、規格の原案をつくっているWAICの資料が詳しいです。
WAICが2026年2月6日のセミナーで示した「JIS X 8341-3改正概要」によれば、方向は決まっています。2025年9月に国際規格ISO/IEC 40500が更新され、その内容が国際的なガイドラインWCAG 2.2に揃いました。改正後のJISは原則としてこのISO/IEC 40500との一致規格(IDT)になる見込み、とされています。一致規格とは、翻訳の差はあっても中身は同じ、という関係のことです。
現行のJIS X 8341-3:2016はWCAG 2.0を土台にしています。そこから2.1、2.2と2回ぶん進むので、点検項目にあたる「達成基準」が増えます。WAICの資料が挙げている数はこうです。
| 追加元 | レベルA | レベルAA | レベルAAA |
|---|---|---|---|
| WCAG 2.1(2018) | 5 | 7 | 5 |
| WCAG 2.2(2023) | 2 | 4 | 3 |
| 合計 | 7 | 11 | 8 |
AとAAで18。そして減るほうもあります。WCAG 2.2では達成基準4.1.1「構文解析」が削除されました。HTMLの書き方の細かい決まりを見る項目で、いまのブラウザーでは実質的に問題が起きなくなったため、というのが理由です。差し引きで17ふえる、という数え方もできます。
中身は3つの方向にまとめられています。WAIC資料の見出しをそのまま借ります。
主に次の3点のアクセシビリティが強化されている/モバイル機器/ロービジョン(弱視)/認知・学習障害
モバイル機器では、画面の向きを縦か横のどちらかに固定しないこと、地図のようなコンテンツで2本指のピンチ操作しか用意しないのをやめて、プラス・マイナスのボタンを置くこと。ロービジョンでは、拡大したときに文字が折り返して読めること、そして文字以外のコントラスト比です。この最後のひとつには、WAIC資料が「更新担当者に大きく関係してくる点に注意」と念を押しています。例に挙がっているのはグラフの色でした。統計をグラフにして載せる部署は、役所にいくつもあります。
認知・学習障害の側では、問い合わせフォームがブラウザーの自動入力に対応していること、ログイン画面でパスワード管理ソフトやコピー&ペーストを妨げないこと。ほかに、問い合わせ先の置き場所をページごとにばらばらにしないこと、ボタンの大きさを一定以上にするか隣との間隔をあけること、が挙がっています。
並べてみると、意匠の話はほとんどありません。テンプレートと、CMSの設定と、外注の仕様書に書く条件の話です。
21.7%と、33.4%
ここまでが「変わる側」の話です。受け取る側はどうか。総務省が令和8年3月26日に公表した「公的機関のウェブアクセシビリティ対応の促進に関する調査研究報告書(概要版)」に、その数字があります。令和7年11月25日から令和8年1月8日にかけて2,092団体に尋ね、1,058団体が答えた調査です。回収率は50.6%で、地方公共団体は1,788団体に送って920団体からの回答でした。
JISが改正されることを把握し、それに向けて何かをしているかを聞いた設問(n=898)の答えは、次のとおりです。
| 回答 | 割合 |
|---|---|
| 改正が見込まれることを把握しており、新たな基準へ対応するための取組を行っている | 21.7% |
| 把握しているが、取組は行っていない | 44.9% |
| 把握していなかった | 33.4% |
3団体に1つが、改正そのものを知りませんでした。ただし、この数字を「全国の自治体の3分の1」と読むことはできません。答えたのは半分で、答えなかった半分の状況は分からないからです。関心の薄い団体ほど回答しにくいと考えるなら、実際の割合はもう少し重いほうへ傾く可能性もあります。そこは推測でしかないので、ここまでにします。
取組の土台のほうも見ておきます。ウェブアクセシビリティ方針を策定して公開している団体は52.1%でした。2020年度が49.8%、2021年度48.4%、2022年度51.3%、2023年度53.3%。5年間ほぼ動いていません。一方でJIS X 8341-3:2016に基づく試験を実施している団体は56.8%で、こちらは2020年度の39.3%から上がり続けています。報告書も「増加傾向が続いている」と書いています。
取り組んでいないと答えた団体(n=160)に理由を聞くと、「人員や予算が限られており、十分な投資ができない」が65.6%、「アクセシビリティに関する専門知識や経験を持つ人員がいない」が59.4%。ヒアリングでは、こういう発言も拾われています。
法的な義務、罰則がないため組織内の理解を得ることが難しく、他の業務対応と比べて、工数確保、予算確保の両面で優先度が下げられてしまう実態がある。
いま手を動かせるのは、1枚の表です
改正JISはまだ出ていません。手引きの改定版もこれからです。それでも今日できることが2つあります。
1つは「ウェブアクセシビリティ取組確認・評価表」です。運用ガイドラインに付いている表計算ファイルで、総務省は1年に1回これで取組内容を確認し、結果を各団体のホームページで公開することを推奨しています。改正で何が増えるにせよ、いまどこまでできているかが分からなければ足し算はできません。ところが同じ調査(n=898)で、この表を使って結果を公表している団体は14.6%でした。使っているが公表していないが10.5%、存在は知っているが活用していないが51.7%、まったく知らないが23.3%。2022年度からほぼ横ばいです。手引きそのものは「最も活用している資料」として62.3%が挙げているのに、付属の表は半数以上が開いていない、という形になっています。
もう1つは、WAIC資料が書いている先取りです。「WCAG 2.1, 2.2で追加された達成基準(特にレベルA, AA)については先取りして対応することも可能」。改正JISを待たずに、いまの環境で試せます。あわせて同資料は「計画の策定」「予算、工数の確保」を挙げています。来年度の予算要求の時期に、この18項目という数を持っていけるかどうかが、たぶん分かれ目です。ただしテンプレートの直しで済む項目と、外部サービスやCMSの都合で自分たちだけでは動かせない項目が混ざっています。ヒアリングでは、熱心に取り組んでいる団体でもPDFファイルには手が回っていないという指摘も出ていました。全部を一度にやる前提を置くと、たいてい止まります。
期限が入るかどうかを、見ています
今回の改定で私が見ているのは、達成基準の数ではなく、期限とゴールが書き込まれるかどうかです。
調査報告書は、改定に向けた論点を12個挙げています。そのなかに「目指すべきゴール(例:AA準拠、ウェブサイト全体)」と「取組の期限」と「組織としての取組の成熟度の評価と公表」が並んでいます。これは現場の声とつながっています。ヒアリングにはこうありました。「運用ガイドラインで、期限や目指すべきゴールが示されていることが、組織の中で取組の理解を得る拠り所となっている」。罰則がないなかで担当者が上司を説得するには、外から来た期日が要る、ということです。
手引きの歴史を並べると、この10年の形が見えます。2005年度に「みんなの公共サイト運用モデル」として出発し、2010年度に改定。2016年度に規格の改正に合わせて刷新され、名前もいまの「みんなの公共サイト運用ガイドライン」になりました。その次が2024年版ですが、そこでやったのは近い将来のJIS改正に向けた動向の解説、取組事例の刷新、関係法令などの最新化の3つで、取組項目そのものはJIS X 8341-3:2016に基づいたままです。規格に合わせて中身を入れ替えるのは、2016年度以来ということになります。
その間、方針を公開している団体の割合は5割前後から動きませんでした。上がったのは試験の実施率だけです。試験は外部の事業者に頼めば形になり、方針の公開は自分の組織で決めなければ出せない。この2本の線の差は、担当者の熱意ではなく決裁の重さの差のように見えます。
最後に、確認できなかったことを1つ書いておきます。WAICは2026年2月の時点で「2026年5月頃の完成を目標に原案作成中」としていましたが、その後の進み具合を示す資料は、今回調べた範囲では見つけられませんでした。改正JISがいつ発行されるかは、まだ言えません。8月24日の研究会でどこまで日付が出るかを、まず見ることにします。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.22
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