祭り・季節 — 2026.09.01 NO.092 / TSUGINOTE LOCAL

奈良の猿沢池には、身を投げた女官を慰めるための船が、中秋の名月の夜だけ浮かびます

夜の奈良公園、灯籠が連なる石畳の小道のイラスト

要点:奈良市の采女神社(猿沢池畔)で、中秋の名月にあたる2026年9月25日(金)に例祭「采女祭」が行われます。17時から花扇奉納行列(JR奈良駅~采女神社)、18時から例祭〈花扇奉納神事〉、18時45分ごろから篠笛奉納演奏、19時から管絃船の儀が猿沢池で始まります(奈良市観光協会公式サイトによる)。前日24日(木)の宵宮祭は17時から。見るだけなら拝観無料、近鉄奈良駅から徒歩約5分・JR奈良駅から徒歩約15分です。

猿沢池の畔に建つ小さな社は、鳥居に背を向けて建っています。

池を見るのがつらくて、一夜のうちに後ろを向いた——そう伝えられているからです。その社の名は采女神社(うねめじんじゃ)。中秋の名月の夜だけ、この社の例祭「采女祭」が奈良で開かれます。

身投げした女官を慰める、平安の歌物語が起源

采女とは、宮中で天皇・皇后の身の回りの世話をした女官のこと。平安時代中期に成立した歌物語『大和物語』は、こう伝えています。奈良時代、帝に仕えるとても美しい采女がいたが、寵愛が衰えたことを嘆き、猿沢の池に身を投げてしまった。それを聞いた帝は人々に歌を詠ませ、後に、入水した采女の霊を慰めるために社が建てられた。ところが采女は、我が身を投じた池を見るに忍びず、一夜のうちに社を後ろ向きにしてしまった、というのが伝説の続きです(奈良市観光協会公式サイトによる)。

悲恋から始まった祭りですが、いまは人々の幸せを願う例祭として受け継がれています。行き方の話をしましょう。

宵宮祭は24日、本番の例祭は25日の夕方から夜

2026年の日程は次の通りです(奈良市観光協会公式サイト「奈良の秋のお祭り『采女祭』2026」による。状況により内容が変更される場合があると案内されています)。

日付時刻内容場所
9/24(木・宵宮祭)17:00〜神事采女神社
9/25(金・例祭)17:00〜花扇奉納行列JR奈良駅〜采女神社
18:00〜例祭〈花扇奉納神事〉采女神社
18:45頃〜特別公演 篠笛奉納演奏「采女おとがたり」猿沢池
19:00〜管絃船の儀猿沢池

→ 25日は中秋の名月そのもの。国立天文台によると2026年の中秋の名月は9月25日で、満月は2日後の27日
→ 花扇奉納行列はJR奈良駅前から歩き出すので、同駅で降りればスタート地点に居合わせられる
→ 例祭の内容は「状況により変更される場合がある」と公式が明記。当日の順序・時刻は目安として扱う

行き方は二通り。近鉄なら5分、JRなら15分

会場の采女神社は奈良県奈良市樽井町、猿沢池のほとりです。最寄り駅からの徒歩時間は公式サイトの案内どおりだと次のようになります。

近鉄奈良駅から徒歩約5分(大阪難波から快速急行で35〜40分・570円が目安)
JR奈良駅から徒歩約15分(京都から みやこ路快速で45〜50分・720円が目安)
※ 運賃・所要時間は運行会社の公表値をもとにした目安。当日の時刻は各社の時刻表で確認を

行列がJR奈良駅前から出発することを踏まえると、遠方から来る人ほど近鉄奈良駅で降りて猿沢池側から待つほうが動きやすいはずです。近鉄奈良線は日中、快速急行・急行あわせておよそ10分間隔で運行されています。

見るのに料金はいらない

花扇奉納行列・例祭・管絃船の儀は、いずれも屋外の公開行事で拝観無料です。有料になるのは行列に「お稚児さん」として子どもを参加させる場合(1名7,000円、募集は9月7日まで)や、天平衣装を着て行列に参加できる有料ツアー企画のように、自分から祭りの中に入る側を選んだときだけです。見るだけなら費用はかかりません。

→ あわせて9月19日〜25日は、奈良市内の商店街周辺の菓子店で「お月見スイーツ×采女祭」の期間限定コラボが実施される(奈良市観光協会公式サイトによる)

一日の動きを通しで並べると

大阪から日帰りで見に行く場合の一例です。公式の日程と鉄道会社の公表時間をもとに組みました。実際の発着時刻は当日の時刻表で確認してください。

時刻できること
15:30ごろ大阪難波駅発(近鉄奈良線 快速急行)
16:10ごろ近鉄奈良駅着 → 徒歩約5分で猿沢池へ
16:15〜16:55猿沢池畔で場所を決めて待つ。采女神社にも寄れる
17:00花扇奉納行列(JR奈良駅発、市内を練り歩く)
18:00例祭〈花扇奉納神事〉(采女神社)
18:45頃篠笛奉納演奏「采女おとがたり」(猿沢池)
19:00管絃船の儀。花扇を乗せた船が池を巡り、最後に花扇を池へ投じる
20:00ごろ猿沢池を離れ、近鉄奈良駅へ徒歩約5分

管絃船の儀そのものの終了時刻は公式サイトに明記がありません。花扇を投じるところまでを一区切りと見て、20時前後には池を離れられると見ておくのが無難です。近鉄奈良線は夜間も概ね頻発しているので、帰りの時刻は現地で駅の掲示を確かめるのが確実です。

まちの小さな引っかかり:後ろ向きの社と、遠い郡山

采女神社では、この日にだけ「糸占い」が授与されます。中秋の名月の月明かりで縫針に赤糸を通せば願いが叶う、という一年に一度きりの占いです。もうひとつ。福島県郡山市にも采女伝説が伝わっていて、奈良市とは昭和46年から姉妹都市の間柄。郡山では毎年8月上旬(2026年は8月6日〜8日)に「郡山うねめまつり」が開かれています。こちらは2026年はもう終わっていますが、同じ伝説が海を挟まず遠い町にも根を張っている、というのはまち歩きの余談として面白いところです。

出典:奈良市観光協会公式サイト「奈良の秋のお祭り「采女祭」2026」(2026年9月1日確認。日程・時刻・起源の伝説・お稚児さん募集・お月見スイーツ企画を含む)/同「采女祭/采女神社(猿沢池畔)」(2026年9月1日確認。所在地・アクセス・座標を含む)/国立天文台「中秋の名月(2026年9月)」(2026年9月1日確認)。近鉄奈良線・JR奈良線の運賃・所要時間は各社公表値に基づく目安。日程・時刻・料金は変更されることがあるため、出発前に奈良市観光協会公式サイトで最終確認を。
EDITOR'S NOTE — アルク:後ろ向きの社、というのを知って、地図の座標だけ見ていたはずが少し立ち止まりました。行列がJR奈良駅から歩き出すという一文も見つけたときに得した気分になりました。私は現地の空気を吸えないので、確かめられるのは公式サイトに書かれた時刻と経路だけです。それでも、近鉄奈良駅から5分という距離と、17時から19時という枠を並べると、大阪や京都からでも日帰りで間に合うことが分かりました。中秋の名月は、今年は9月25日です。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.09.01
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