モビリティ — 2026.09.03 NO.094 / TSUGINOTE LOCAL

名古屋の街なかを自動運転車が走り出します。来週から誰でも無料で乗れますが、車内でしてはいけないことがあります

山あいを走るバスの車内で、乗務員が乗客に運行の様子を説明している場面

要点:愛知県とNTTドコモビジネスなど8者は2026年9月11日から、名古屋市都心部で自動運転車によるオンデマンド運行を始めます。5カ所の乗降地点を3台の車両が巡り、乗車は無料。予約はなごやMaaSアプリ「デライド」からです。ただし今回の運行は自動運転レベル2で、運転席にはセーフティドライバーが乗車しています。愛知県は利用者に「セーフティドライバーへの声掛けはお控えください」と呼びかけていて、そこには無人運行を想定した検証という理由があります。

名古屋駅前のロータリーに、来週から見慣れない車が並ぶようになります。トヨタのミニバンをベースにした車体には、地元の専門学校や大学の学生がデザインした、流れ星やつながるラインの模様が描かれています。愛知県とNTTドコモビジネスなど8者が9月11日に始める、名古屋市都心部での自動運転車のオンデマンド運行です。

「オンデマンド方式」というお役所言葉の中身

愛知県の発表資料は、運行方式を脚注でこう説明しています。「オンデマンド方式とは乗客の事前予約(乗降地、時間)に応じて、走行ルートを選び走行する方式」。平たく言うと、時刻表どおりに決まった道を走るバスとは逆に、乗りたい人の予約に合わせて、そのつどルートを組み立てて走る方式です。タクシーの配車アプリに近い動き方、とイメージすると分かりやすいと思います。

今回は乗降地点を昨年度の3カ所(STATION Ai・名古屋駅前のスパイラルタワーズ・愛知芸術文化センター)から、IGアリーナ前(名古屋造形大学)とFUJIなごや科学館を加えた5カ所に拡大し、車両も2台から3台に増やしました。5地点を結ぶルートは20通り、延べ約33kmにのぼります。

運行の中身

項目内容
運行期間2026年9月11日(金)〜2027年3月19日(金) ※土日祝・年末年始(12月26日〜1月6日)を除く
運行時間午前10時〜午後5時(平日のみ)
車両・方式3台によるオンデマンド方式(1台貸切・定員5人まで、セーフティドライバーは含まない)
乗降地点名古屋駅前(スパイラルタワーズ)・STATION Ai・愛知芸術文化センター・IGアリーナ前(名古屋造形大学)・FUJIなごや科学館の5カ所
利用料金無料
利用条件中学生以上、または保護者同伴の小学生
予約方法なごやMaaSアプリ「デライド」から乗車日の31日前より予約可。8月25日正午に受付開始済み

「無人」ではなく、レベル2

ここが今回いちばん確かめておきたいところです。愛知県の発表には、こう注記されています。「本事業における運行は自動運転レベル2です。車両走行時は、運転席にセーフティドライバーが乗車し、安全確認を行います」。つまり、運転席は空いていません。街なかで見かけても、無人のロボットタクシーが走っているわけではなく、人が座って安全を見ている状態です。

それなのに愛知県は、利用要件の欄でこう呼びかけています。「車内無人を想定したオペレーションの検証を実施するため、セーフティドライバーへの声掛けはお控えいただくようお願いします」。運転席に人はいるのに、話しかけないでほしいという注文です。理由は、いずれ運転席が本当に無人になる段階(レベル4)を見据え、乗客がタブレットの対話AIキャラクターだけを頼りに移動できるかどうかを、いまのうちから確かめておきたいからだと読めます。この対話AIキャラクターによる案内が実際に始まるのは、運行期間の後半、12月中旬ごろの予定です。

知事の一言と、8年分の積み重ね

8月25日には一般の予約受付に先立って試乗会が開かれ、愛知県の大村秀章知事も乗り込みました。テレビ愛知の報道によると、大村知事は「名古屋の都心部をぐるっと回るので、これはぜひできるだけ早く実用化したい」と話したといいます。愛知県は2016年度から自動運転の実証を積み重ねており、今回はその延長線上にあります。乗降地点を3カ所から5カ所へ、車両を2台から3台へと、規模を一歩ずつ広げてきた歩みが、その積み重ねの中身です。

続くかどうかは、まだ分からない

年々範囲を広げていること自体は、実証が行き詰まらずに続いている証拠と見てよさそうです。ただし、今回もあくまで「実証実験」であり、乗車は無料です。これがいつ、どんな形で商用化され、運賃がいくらになるのかについて、愛知県からの公表は確認できませんでした。知事の「早く実用化したい」という言葉と、採算の取れるサービスとして名古屋の街に定着するかどうかの間には、まだ距離があります。ここは今後の発表を待つほかありません。


乗ってみたい人がすることは一つです。なごやMaaSアプリ「デライド」の専用サイトから、乗車日の31日前以降に予約を入れる。それだけで、運行日の午前10時から午後5時の間、名古屋駅前を含む5カ所のどこからでも無料で呼び出せます。ただし乗ったあとにセーフティドライバーへ話しかけたくなっても、そこはぐっとこらえるのが、この実証への協力の仕方のようです。

出典:愛知県「【知事会見】名古屋市都心部での自動運転車両の運行について」(掲載日:2026年8月17日更新)https://www.pref.aichi.jp/press-release/jidounten/toshin-2026.html(2026年9月3日確認)/NTTドコモビジネス株式会社・NTTモビリティ株式会社・株式会社NTTドコモ「名古屋市都心部で自動運転とオンデマンド配車システムを組み合わせた実証実験を開始」(2026年8月12日)https://www.ntt.com/about-us/area-info/article/20260812.html(2026年9月3日確認)/テレビ愛知(Yahoo!ニュース配信)「名古屋で進む『自動運転の実証実験』9月から一般の人もタクシーのように予約可 愛知県の大村知事も試乗」(2026年8月25日、知事コメントの引用元)https://news.yahoo.co.jp/articles/e20f9ab566517a7bf787a5ef14a99b858e12fe00(2026年9月3日確認)
EDITOR'S NOTE — メグル:愛知県の発表資料を読んでいちばん引っかかったのは、「セーフティドライバーへの声掛けはお控えください」という一文でした。運転席に人が座っているのに、いないものとして扱ってほしいという注文は、素直に読むとやや不思議です。ただ、レベル4という「本当に無人」の状態を見据えた助走だと考えると筋が通ります。知事の「早く実用化したい」という前のめりの言葉と、運賃や採算といった商用化の具体像がまだ公表されていない現状との間には、まだ埋まっていない距離があると感じました。

編集責任者Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.09.03
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