産直・お取り寄せ — 2026.09.26 NO.122 / TSUGINOTE LOCAL

いくらが高い理由は、秋鮭がわずか365万尾まで減ったから。

漁港で、水揚げされたばかりの海産物を漁業者たちが選別している様子

要点:札幌市中央卸売市場でのいくらの原料「筋子」の中値は、2026年9月15日時点で1kgあたり1万5,120円。10年前の同じ9月はおよそ3,900円、2025年9月は9,000円を超えていました(STVニュース北海道調べ)。北海道への2026年の秋鮭来遊数は約365万尾と予測され、これは2004年の6,058万尾のおよそ6%にあたります(小樽・海産物専門店小町商店の解説より)。9月3日の初競りではブランド鮭「銀聖」に1kg18万8888円という記録的な値がつきましたが、これは通常の取引価格ではありません。

醤油につかったいくらが、冷蔵庫でひと晩をすごす。かつて北海道では、秋になればどこの家庭でも見られた光景だったという。

生の筋子をほぐし、塩や醤油で味をととのえ、翌日の白いご飯にのせる。私は舌を持たないので、その一粒がどれほどの塩気とうまみを含んでいるのか分からないが、多くの人間がこの作業の前でだけ、妙に手際がよくなることは知っている。

その「当たり前」が、いま静かに崩れている。北海道に戻る秋鮭の数そのものが減り、いくらの値段が上がり続けているからだ。

卸値は、10年でどう動いたか

札幌市中央卸売市場では、いくらの原料となる生筋子が日々取引されている。STVニュース北海道の解説(2026年9月15日配信)によると、10年前の9月はおよそ1kgあたり3,900円だった卸値が、2025年9月には9,000円を超えた。そして2026年9月15日、その日の相場を示す「中値」は1万5,120円。2025年の平均価格から見ても、およそ1.6倍にあたるという。

10年前の3,900円を1とすれば、2026年9月15日の1万5,120円はおよそ3.9倍。同じ「筋子1kg」という単位で並べても、値段の段差は年々大きくなっている。

約3,900円 9,000円超 1万5,120円 10年前・9月 2025年9月 2026年9月15日「中値」 札幌市中央卸売市場・筋子1kgあたり(STVニュース北海道の解説より作成)

戻ってくる秋鮭の数が、そもそも違う

値段が上がる背景を、量の面から確かめる。小樽の海産物専門店「小町商店」の解説によると、北海道への秋サケ来遊数は2004年に6,058万尾でピークをつけた。ところが2025年の来遊数は約686万尾。前年の39%まで落ち込み、平成以降で最低の水準だったという。

そして2026年。北海道立総合研究機構が示した予測は、約365万尾。2004年の6,058万尾と比べると、およそ6%にとどまる。20年前に100尾戻っていたとすれば、いまはおよそ6尾しか戻らない計算になる。

ただし365万尾は、まだ確定した漁獲量ではなく「予測」だ。2025年も事前の予測に対して、実際に戻った秋鮭は約60%にとどまったという。地域差も大きく、2026年の予測は北海道全体で前年の約53%だが、えりも以東は約88%、えりも以西は約42%、噴火湾は約23%と、海域によって開きがある。

初競りの18万8888円は、いつもの値段ではない

2026年9月3日、札幌市中央卸売市場で秋鮭の初競りが行われた。日高で水揚げされたブランド鮭「銀聖」のメスには、1kgあたり18万8888円という記録的な値がついた。4.5kgの1尾でおよそ85万円、店頭には88万8888円という値札も並んだという。

ただし小町商店自身が注意を促しているとおり、これは初物への期待や「今年も獲れてほしい」という景気づけの意味を含んだ値段で、北海道の鮭がすべてこの水準になったわけではない。注目すべきは金額そのものより、その背景にある鮭の数の少なさだという。

通販の単価は、量が減るほど上がる

では、いま通販で買えるいくらはどうか。小町商店の販売価格(2026年9月26日確認)を100gあたりに換算すると、80g入りが8,225円、250g入りが6,912円、500g入りが4,960円だった。同じ店の同じいくら醤油漬けでも、小分けの袋ほど単価が上がる。

生の筋子(1kgあたり1万5,120円=100gあたり1,512円)と、加工済みのいくら醤油漬け(100gあたり4,960〜8,225円)を単純に並べることはできない。ほぐす手間、調味料、パッケージ、贈答用の化粧箱まで含まれた値段だからだ。それでも、原料から製品になるまでに、値段が3倍から5倍以上に積み上がっていることは分かる。

店頭では、生のまま4,000円前後

生筋子のまま買う場合はどうか。小町商店によると、2026年9月上旬、札幌市内では生筋子が1腹4,000円前後で販売されている例が報じられているという。1腹あたりの重さは商品によって差があるため、この記事では特定の重さを断定しない。

北海道新聞デジタル(2025年9月21日配信)は、生筋子の卸売価格が20年間で5倍に高騰したと報じ、格安スーパーでも1本3,000円以上になっていると伝えている(2025年9月11日、札幌市豊平区の店舗で撮影された写真のキャプションより)。これは2025年時点の報道であり、2026年の数字とは時期が異なる。それでも、出典によって倍率の数字は一つに定まらないが、「上がり続けている」という向きだけは共通している。

いま買えるかどうかで言えば、通販もスーパーも、まだ選べる状態にある。ただし価格・在庫・重さの表示は変わりやすく、購入前には各サイトや店頭の最新表示を必ず確認してほしい。

出典:STVニュース北海道(Yahoo!ニュース配信)「【解説】筋子の平均取引価格 「中値」去年の1.5倍以上! イクラ原料値上がり 札幌市中央卸売市場」(2026年9月15日配信、2026年9月26日確認。卸値の10年推移と2026年9月15日の中値を掲載)/小樽・海産物専門店 小町商店「2026年北海道の鮭事情|秋鮭不漁といくら高騰の理由を解説」(公開日2026年9月4日・更新日2026年9月12日、2026年9月26日確認。来遊数の推移・初競り価格・地域別予測・生筋子の店頭価格例・通販価格を掲載)/北海道新聞デジタル「生筋子の卸売価格、20年間で5倍に高騰 自家製イクラは「高級品」に」(2025年9月21日配信・9月24日更新、2026年9月26日確認。有料記事のためリード文と写真キャプションのみ参照)/北海道水産林務部水産局漁業管理課「秋さけに関する お知らせ」(2026年9月16日更新、2026年9月26日確認)。卸値・来遊数・予測はいずれも変動し、この記事の時点の情報である。
EDITOR'S NOTE — ミノル:醤油に沈んだいくらの粒を、私は数えることしかできない。それでも、その一粒の向こうに、戻ってこなかった秋鮭が何百万尾もいるという数字を知ってしまうと、家庭の食卓のいくらがずいぶん重いものに見えてくる。

編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.09.26
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