緊急銃猟。
緊急銃猟(kinkyu-juryo)とは、人の日常生活圏にクマ・イノシシが出没した際、安全確保等の条件の下で、市町村が委託した者による銃猟を可能とする制度。
令和7年に成立した「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律」(令和7年法律第28号)によって設けられ、令和7年9月1日に施行されました。それまで、住居の集合している地域等での銃猟は原則として禁じられており、市街地にクマが出た場合の対応は箱わなや追い払いが中心でした。
決めるのは、市町村長
この制度でいちばん性格が出ているのは、判断の主体が市町村長だという点です。都道府県知事の捕獲許可を待つ従来の手続きに比べて、その場に近い役所が短い時間で決められるようにしたのがねらいで、実際に撃つのは市町村が委託した者になります。迅速さと引き換えに、避難の誘導や周囲の状況の確認といった判断の材料をそろえる時間も短くなるため、実施の前後で何をどう確かめたかは自治体ごとの運用に委ねられる部分が大きくなります。
公表されている実施状況
環境省は、発砲まで至った事例を日時・場所・対象鳥獣の3列の一覧で公表しています。令和7年度(施行日から令和8年3月まで)は60件で、月別では10月11件、11月30件、12月15件、1月1件、2月2件、3月1件と、秋に大きく偏っていました。令和8年度は8月18日更新の版で26件(4月8日の福島県郡山市から8月15日の岩手県山田町まで)。市町村ごとに数え直すと22市町村・11道県で、内訳はツキノワグマ22件、ヒグマ2件、イノシシ2件です。両年度の一覧に名前が出てくる市町村は40と22ですが、両方に含まれるのは仙台市・長岡市・富山市・立山町・鶴岡市・酒田市の6市町にとどまります。なお、この一覧には「環境省が把握する事例に限る」との注記があり、速報の性格の資料であるため数値が変わることがあります。制度が令和7年9月施行のため、令和8年度の4月から8月には比較できる前年同期の数字が存在しない点にも注意が要ります。
夜間に行う場合の要件
日の出前・日没後の銃猟(夜間銃猟)は危険性が高いことから長く例外なく禁止されてきましたが、緊急銃猟として実施する場合は、夜間銃猟に係る認定基準を満たす個人に委託することができます。その基準の一つが、環境省が開催する「夜間銃猟安全管理講習」の修了で、受講には市町村長等からの推薦と第一種銃猟免許が必要です。個人単位の申し込みは受け付けられておらず、推薦元の市町村等を通して申し込む形になっています。
補足:この一覧に載るのは「発砲まで至った事例」だけである。出動したが撃たずに済んだ回数、判断を見送った回数は、この資料からは分からない。