ふるさと納税は1兆3,314億円で6年連続最高。ここから2つの割合を引くと、8月末という期限の意味が出てくる。
要点:総務省が7月31日、2025年度のふるさと納税の受入額を1兆3,314億円(前年度比4.6%増)、件数を5,963万件(同1.4%増)と公表しました。総額は6年連続の過去最高です。ただ、この額のうち自治体の手元に残る幅は、すでに決まっている2つの割合から逆算できます。そして総務省が仲介サイトに出した要請の回答期限は、今月末です。
先に、いま決まっている2つの割合を並べます。ひとつは返礼品の調達費で、寄付額の3割以下。もうひとつは、返礼品も送料も事務費も人件費もサイトへの支払いも全部ひっくるめた「募集に要する費用」の上限で、いまは5割以下です。
このうち上限だけが、これから下がります。返礼品の3割は据え置きです。上を下げて、中でいちばん大きい塊はそのまま。ここに手数料の実績値を置くと、残りの幅がどうなるか。昨日出た数字は、その計算の分母にあたります。
1兆3,314億円を、件数で割る
総務省が7月31日に公表したところでは、2025年度の受入額は1兆3,314億円、前年度比4.6%増。受入件数は5,963万件で、同1.4%増でした。額は6年連続、件数は2年ぶりの過去最高です。前年度(令和7年度に実施された現況調査)の実績が1兆2,728億円・5,879万件でしたから、伸び率はその場で確かめられます。
額と件数の両方が公表されているので、1件あたりの単価も出ます。2025年度は約2万2,300円、前年度は約2万1,600円。1件あたりでおよそ700円、率にして3%あまり増えている計算です。件数の伸び(1.4%)より単価の伸びのほうが大きい、という形になります。
ただし、この年度は読み方に注釈がいります。仲介サイトによるポイント付与の禁止が始まったのは2025年10月で、2025年度はその前と後をまたいでいます。施行前の駆け込みと施行後の落ち着きが同じ年度の中で打ち消し合っている可能性があり、4.6%をそのまま需要の伸びと読むことはできません。月ごとの内訳は現況調査には含まれないため、ここは断定を避けます。
返礼品を引き、手数料を引く
次に配分の側です。令和5年10月から、返礼品の調達費に加えて送料、受領証の発行事務、ワンストップ特例の申請受付事務、職員の人件費、ポータルサイト運営事業者への支払いまでを合計した額が、寄付額の5割以下でなければならないと定められています(募集適正基準)。返礼品そのものは3割以下。つまり返礼品以外の一切に使える枠は、いまは2割です。
この2割の中身について、総務省が今年5月に実績を示しています。2024年度に仲介サイト経由で集まった寄付は1兆2,025億円。掲載委託料・決済費・広告費などを含む実質的な手数料として、その11.5%にあたる1,379億円が事業者側へ支払われていました。同じ年度の受入総額(1兆2,728億円)と比べると、寄付の約94%はサイト経由だった計算になります。
| 枠の使いみち | 現行(上限5割) | 2029年(上限4割未満) |
|---|---|---|
| 返礼品の調達費(上限3割・据え置き) | 30.0% | 30.0% |
| 仲介サイトへの実質手数料(2024年度の実績値) | 11.5% | 11.5% |
| 送料・梱包・事務・人件費などに残る幅 | 8.5% | ―(枠を超える) |
※ 返礼品を上限いっぱいに使い、手数料率が2024年度と同じだった場合の単純計算。当編集部による算出で、実際の配分は団体ごとに異なる。
現行の5割枠なら、返礼品30%と手数料11.5%を足して41.5%。残りは8.5%です。狭いですが、送料と事務はここに収まってはいます。
枠が4割未満になると、この足し算は成立しません。2026年2月20日に閣議決定された地方税法改正案では、募集経費の上限を段階的に引き下げ、2029年に4割未満とすることになりました。自治体が使える分は寄付額の6割以上になる、という説明です。返礼品の3割上限に変更はありません。3割と11.5%を足した41.5%は、その時点で枠の外に出ます。
もちろんこれは、手数料率が2024年度のまま動かなかった場合の話です。逆にいえば、この計算が成り立たないようにするために、どこかが動かなければならない。
8月末に何が返ってくるか
総務省が先に手をつけたのは手数料でした。2026年5月22日、寺崎秀俊自治税務局長が同省で仲介サイト事業者の幹部と面会し、自治体が支払う手数料の速やかな引き下げを要請しています。回答は書面で、期限は8月末とされました。いまは、その一か月前です。
要請そのものに強制力はありません。書面で「検討する」と返すことは可能です。ただ、要請が出た時点でもう一つの手が動いていました。閣議決定された改正案には、経費の上限引き下げと並んで「使途を公表する」ことが入っています。金額の内訳が外から見える形になれば、要請の効き方は変わります。
公表の具体的な範囲・様式については、実務向けの解説では2026年10月からの適用として説明されていますが、本稿で確認できた一次の情報は閣議決定時点の方針までです。施行日と細目は、その後の告示・通知で確かめる必要があります。
同じ改正案では、ルール違反への構えも強められています。ふるさと納税の対象自治体としての指定取消期間は現行の2年から3年以内に、取消の対象とする違反事案は最大2年前までから最大5年前までに広がります。寄付する側にも変更があり、住民税の特例控除に2027年から上限(193万円)が入ります。
自治体の側で動かせるのはどこか
手数料は相手のある数字です。一つの自治体が単独で下げられるものではありません。では自分の側の項目はどうか。
返礼品の3割は上限であって義務ではないので、下げれば枠は空きます。ただしそれは返礼品の訴求力を落とすことでもあり、寄付そのものが減れば元も子もない。送料は産地と配送の組み方に効き、事務費は受付・発送・ワンストップ処理の作業量に効きます。この二つは自治体DXの話と地続きで、実際、多くの団体が委託と内製の線引きをどこに引くかで悩んでいる領域です。
そして、総額が伸びていること自体は各団体の安心材料にはなりません。1兆3,314億円は全国の合計です。集める側と出ていく側の両方があり、直近で確定している控除の実績は令和7年度課税で約8,710億円、控除適用者は約1,080万人でした。合計が最高を更新した年に、住民税が出ていく側で増えている団体もあります。
次に確かめる3つの日付
この件は、これから順に答え合わせができます。まず8月末、サイト事業者からの書面回答。次に、経費上限の段階的な引き下げがどの水準から始まるか(施行の刻みは告示等で示されます)。そして来年7月末ごろに出る次の現況調査です。
そのとき見る数字は、総額ではなく率のほうだと考えています。受入額が7年連続で最高を更新しても、手数料率が11.5%のままなら、自治体の手元に残る割合は変わりません。逆に総額が横ばいでも率が下がっていれば、地域に回る額は増えます。「過去最高」という見出しは、この制度の健全さを測る指標にはなっていない、というのが今回の数字を並べてみての実感です。要請の回答が出たら、率がどう動いたかで追いかけます。