地域DXの補助金、二次公募は応募3件で採択ゼロ。一次で通った9件には、共通する2つがありました。
要点:総務省の「地域社会DX推進パッケージ事業(補助事業)」二次公募は、応募3件・採択候補なしで終わりました(2026年7月3日公表)。予算が残っていて採択がゼロという結果は、応募が集まらなかったことと表裏です。一次公募で通った9件の実施地域・代表提案団体・事業名は公表されています。並べてみると、9件のうち6件が「人が見に行く回数」を削る取組で、4件は自治体が代表提案者ではありませんでした。理由は公表されていませんが、応募書類の要件とスケジュールを読むと、2か月では用意できないものが1つあります。
7月3日、総務省が一行で済ませた発表があります。令和8年度「地域社会DX推進パッケージ事業(補助事業)」の二次公募について、「計3件の応募がありましたが、外部有識者の評価を踏まえ、採択候補はありませんでした」。自治体DXの補助金で、採択がゼロという結果です。
この補助事業は、地域課題の解決に必要な通信インフラなどの整備経費を対象にしています。補助率は2分の1。自治体が実施主体になる場合、残りの2分の1は過疎対策事業債・辺地対策事業債・公共事業等債・一般補助施設整備等事業債などの地方債を起債できる、と実施要領に書かれています。つまり自治体にとっては、一般財源から丸ごと出す話ではありません。条件としては悪くない補助金が、二次公募では3件しか呼び込めませんでした。
なぜ集まらなかったのか。総務省は理由を公表していません。ただ、一次公募で通った9件と、応募書類の要件は公表されています。通った側を並べて、そこから逆に条件を読むことはできます。
一次で通った9件
一次公募の選定結果は4月2日に公表されました。自治体コード順に9件です。
| 実施地域 | 代表提案団体 | 事業名 |
|---|---|---|
| 盛岡市(岩手県) | 盛岡市 | 積雪深モニタリングシステム導入事業 |
| 山形市(山形県) | 山形市 | 山形市デジタル地域拠点整備事業 |
| 明和町(群馬県) | ケーブルテレビ株式会社 | 地域BWA-NR(5G)を活用した防犯カメラのクラウド一元管理化事業 |
| 横浜市(神奈川県) | 横浜市水道局 | ICTを活用した配水ポンプ場の遠隔巡視点検 |
| 射水市(富山県) | 射水ケーブルネットワーク株式会社 | 国産地域BWA-NR(5G)市内全域配備を核とした分野横断的な地域課題解決エコシステムの実装 |
| 大野市(福井県) | 大野市 | 中山間地域他 農業集落排水施設 LoRa無線によるクラウド監視事業 |
| 犬山市(愛知県) | 村田機械株式会社 | 地方生産性停滞を自律搬送ソリューションで解決する官民協創マルチサイトDX工場の実装 |
| 舞鶴市(京都府) | 日本工営株式会社 | LPWAを活用した土木インフラ監視システムの構築事業 |
| 京丹波町(京都府) | 京丹波町 | LPWAを活用した農林業DXと住民の安心・安全なネットワーク構築事業 |
「地域社会DX」という言葉から受ける印象より、地味な並びだと思います。生成AIも自動運転も、この9件には入っていません。
1つめ:6件が「見に行く回数」を削っている
事業名を読み替えると、9件のうち6件が同じ形をしています。積雪深のモニタリング(盛岡市)、防犯カメラのクラウド一元管理(明和町)、配水ポンプ場の遠隔巡視点検(横浜市水道局)、農業集落排水施設のクラウド監視(大野市)、土木インフラの監視(舞鶴市)、農林業と見守りのネットワーク(京丹波町)。いずれも、これまで人が現地へ足を運んで確かめていたものを、センサーと無線で手元に届ける取組です。
使っている技術も派手ではありません。LPWAやLoRa、地域BWA。すでに実用化されていて、消費電力と通信料が小さく、扱える事業者が地方にもいる規格です。新しいことを始めるのではなく、いま人手で回している巡回・点検の回数を減らす。9件のうち3分の2がそこに寄っていました。
これは選ぶ側の好みというより、この補助事業の対象が「通信インフラなどの整備経費」に置かれていることの反映と読むのが自然です。アプリやAIモデルの開発ではなく、線とアンテナとセンサーの整備が対象なので、そこに費用がかかる取組が並びます。逆に言えば、業務のやり方を変えたいがハードは要らない、という課題はこの補助金では拾えません。
2つめ:4件は自治体が代表提案者ではない
もう1つの共通点は、提案の名義です。9件のうち5件は自治体(または水道局)が代表提案団体ですが、残る4件は民間が代表に立っています。明和町のケーブルテレビ株式会社、射水市の射水ケーブルネットワーク株式会社、犬山市の村田機械株式会社、舞鶴市の日本工営株式会社。うち2件は、地域のケーブルテレビ局です。
これは制度の側から見ると当然の姿でもあります。公募要領では、企業・団体が実施主体になる場合、補助金交付申請までに地方公共団体を1つ以上含むコンソーシアムを組むことが要件とされています。自治体だけ、企業だけでは完結しない建て方です。
企業・団体などが実施主体となる場合には、補助金交付申請までに地方公共団体を1以上含むコンソーシアムを形成することが要件となります。
— 総務省「令和8年度地域社会DX推進パッケージ事業(補助事業)」二次公募の応募要件より
4件の顔ぶれを見ると、そのコンソーシアムを組める相手が、そのまちに前からいたことがわかります。市内に伝送路を持つケーブル局、その地域に工場や事業所を構える企業、インフラ点検を業務にしている建設コンサルタント。書類を出す2か月の間に探してきた相手ではなさそうです。
応募書類が求めていた「5年間以上」
二次公募の提出期間は、4月1日14時から5月29日正午まででした。求められた書類は3種類。企画提案書、申請者概要説明書、そして様式3です。
この様式3が、ほかの2つと性質が違います。実施体制図に記載された全関係者において、事業の遂行および5年間以上継続に必要な体制が確保されていることがわかる書類、とされています。様式は任意。つまり、決まった用紙を埋めれば済むものではなく、5年続けられる態勢が実在することを自分で証明しなければなりません。
一方でスケジュールは短いです。公表されている流れでは、交付決定が令和8年8月中旬頃から順次、補助事業の完了が令和9年2月末、実績報告が令和9年3月頃。整備そのものは半年で終える設計になっています。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年4月1日〜5月29日 | 二次公募の提出期間 |
| 令和8年6月下旬頃 | 外部有識者による評価等 |
| 令和8年7月上旬頃 | 採択候補団体の公表(=7月3日「採択候補なし」) |
| 令和8年8月中旬頃〜 | 交付決定(順次) |
| 令和9年2月末 | 補助事業の完了 |
半年で建てて、そこから5年以上動かし続ける。整備費は2分の1が補助されますが、5年目までの通信料・保守・更新は補助の対象ではありません。誰が払い、誰が壊れたときに直しに行くのか。それを書けるかどうかが、この補助金の入口に立っています。二次公募の期間である2か月で、この態勢だけは新しく用意できません。
ここは推測にとどめます。応募が3件だった理由も、その3件がなぜ通らなかったのかも、総務省は公表していません。評価会の観点も公開されていません。書けるのは、要件とスケジュールがそういう形をしていた、という事実までです。
制度そのものは止まっていない
補助事業の二次公募がゼロで終わった一方、同じパッケージ事業の別のメニューは動いています。7月1日から7月31日まで、「地域共有型エッジAI実証タイプ」の実証事業が公募されていました(公募事務局は株式会社サイバー創研)。総務省はこのパッケージ事業を、デジタル人材・体制の確保支援、AIや自動運転などの先進的ソリューションの実証支援、通信インフラ整備の補助といった複数の入口の束として説明しています。今回ゼロだったのは、そのうち「通信インフラ整備の補助」という一本の、二回目の募集です。
整備費の補助だけが余り、実証の枠には募集が続いている。この対比のほうが、地域の側の事情を映しているのかもしれません。試すことには手が挙がり、5年続けると書く段では手が下がる。
8月中旬から、一次で通った9件の交付決定が順次始まります。積雪の深さを測るセンサー、集落排水のクラウド監視、配水ポンプ場の遠隔点検。どれも来年2月末には完成しているはずのものです。見るべきはそこではなく、令和14年ごろまで動いているかどうかでしょう。様式3で「5年間以上」と書かせた制度は、その5年をどこで確かめるのかを、まだ示していません。
編集責任者:Tatsuki Morohashi(発行人・運営者情報) / 最終更新:2026.08.04
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