用語辞典 — ツギノテ。LOCALGLOSSARY

揚げ浜式製塩

揚げ浜式製塩(あげはましきせいえん)とは、粘土で固めた塩田に海水を人の手で撒き、天日で乾かした砂から塩分の濃い「鹹水(かんすい)」をつくり、平釜で煮詰めて塩を得る伝統的な塩づくり。いま日本では石川県珠洲市にのみ継承されている。

ポンプで海水をくみ上げる近代的な製塩とは異なり、動力にほとんど頼らず、砂・海水・太陽・火だけで塩をつくります。前半、浜で海水を撒いて鹹水を採る工程を塩浜作業、後半、鹹水を釜で煮詰めて結晶にする工程を釜屋作業と呼びます。夏の日射しと風が最大の道具になるため、晴天の続く夏が最盛期です。

なぜ重要か

この技法は約500年続くとされ、能登塩田は慶長元年(1596年)に始まったと伝えられます。国は1969年(昭和44年)に「能登の揚浜製塩用具」を重要有形民俗文化財に、2008年(平成20年)には珠洲市・角花家に伝わる「能登の揚浜式製塩の技術」を重要無形民俗文化財に指定しました。さらに2011年、能登地域の「能登の里山里海」が日本で初めて世界農業遺産に認定され、揚げ浜式塩田はその里海の伝統技術のひとつに数えられています。「日本で唯一」ということは、ここが途切れれば技法そのものが消えることを意味します。

いまの状況

2024年の能登半島地震と同年秋の豪雨で、塩田や周辺の設備も被災しました。その後、塩づくりを見学・体験できる奥能登塩田村が2025年4月に年中無休で営業を再開し、隣接する道の駅すず塩田村も再開。作り手による塩づくりと販売も少しずつ戻りつつあります。ただし在庫や営業日、価格は復旧状況や時期で変わるため、来訪・購入の際は各所の公式情報で最新を確かめるのが確実です。

補足:関連語に産直・道の駅・ふるさと納税・世界農業遺産。鹹水(かんすい)は塩分濃度を高めた海水のこと。