用語辞典 — ツギノテ。LOCALGLOSSARY

風穴

風穴(ふうけつ)とは、溶岩洞や崩れた岩塊のすきまから冷たい空気が吹き出す場所のこと。夏でも数℃までしか上がらないものがあり、電気冷蔵庫のない時代には蚕の卵や種子を貯蔵する「天然の冷蔵庫」として使われた。

一般の鍾乳洞は、地下深くの温度がその土地の年平均気温の付近で落ち着くため、洞内はおおむね10〜20℃台になります。風穴はそれよりはるかに低い温度になることがあり、同じ「涼しい洞窟」でも成り立ちが違います。

なぜ重要か

風穴は景勝地であると同時に、産業遺産でもあります。群馬県下仁田町の荒船風穴は、明治38年(1905)から大正3年(1914)頃にかけて造られた蚕種(かいこの卵)の貯蔵施設で、3基あわせて国内最大規模の貯蔵能力を持ち、取引先は42道府県から朝鮮半島にも及びました。世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産のひとつです。冷やす技術がない時代に、地形が持つ性質を見つけて産業の側に取り込んだ例といえます。

深め方

山梨県富士河口湖町の富岳風穴は青木ヶ原樹海のなかにある溶岩洞で、公式サイトは平均気温3度と案内しています。こちらも昭和初期まで蚕の卵の貯蔵に使われ、国の天然記念物に指定されています。夏でも溶けない氷柱が残る点は、地下の「平均気温」だけでは説明できない冷え方の証拠です。なお風穴は山中の史跡・自然物であることが多く、獣の出没や天候で見学の可否が変わります。訪ねる前に自治体・施設の公式のお知らせを確認してください。

補足:荒船風穴の記述は下仁田町「世界遺産『荒船風穴』」および「荒船風穴の見学について」(2026年7月15日更新)、富岳風穴の記述は同施設公式サイトによる。関連記事:洞窟の気温は、その土地の年平均気温とほぼ同じ。全国6か所で検算すると、法則から外れる場所がある